日興がいなくなり、ふとした瞬間に思い出す寂しさが何ともたまらない。
食事をするとき、いつも日興が好きそうなものを少しだけ残していた。
今でもやってしまう。
美味しいものをもっと沢山あげておけばよかった。
たまにおかずを箸から床に落としてしまったときに、
「あ、落ちた」
と言うと、何処からともなく日興が走って現れ食いついていた。
それがキノコやタマネギだと、フンと鼻で息を吐いて何処かへ去って行く。
ある程度の言葉を理解しているんだな。
粗相をして叱るとシュンとして小さくなっていたし、イタズラをしてコラッと手で頭を叩こうとすると、首をすくめて両目をビリビリと振るわせていた。
散歩で他の犬と出会うと、若い頃はリードを引っ張りながら相手かまわず突進して吠えていたけれど、歳を取ると相手を見つけた瞬間に背を向け、決して振り返らない。
何も見てませんよと、知らんぷりをする。
注射が大嫌いで、クルマで動物病院に連れて行くと、一つ手前の信号辺りからソワソワし出し、病院に着くまで吠える。
小学校で集団接種をしたことも覚えている。
お尻に注射され、上半身を180°ねじって注射する人の手を噛んだw
たまに散歩コースを少し変え小学校方面に向かうと、途中で気付くのか、前足をスキーのボーゲンのように踏ん張って動かなくなる。
ビビリだけど感情豊かで正直で賢いんだよなぁ。
ワタシは子供の頃、鳥しか飼ったことがなかった。
やっぱり犬とか猫の方が知能が高そうだから、子供の頃に触れあっておくのは情操教育上、とてもいいことのように思う。
ウチの子らは欲しがったくせにちっとも面倒は見てくれなかったけどねw
ワンコはいつまでも子供のままな感じで、手間はかかるけどホントに可愛い。
会の活動を30年ほどやって得られたものと、ワンコを20年近く育てて得られたものとでは、明らかにワンコでの経験の方が大きくて有意義で貴重だった。
ウチの近所では3軒おきにワンコがいるぐらい、わん口密度が高い。
世の中の愛犬家は変な教義や活動もなしに、ワンコを通じて幾つかの悟りを自然に得ている気がしてきた。
偉そうに悟りを得たようなフリをして忙しくしている会員たちは、そんなことすら知らないんぢゃないのかな。
ありがとう日興。
毎日遺骨をだっこして声をかけている。
寒くないかい。
冬が嫌いなネコ犬だったからね。
