ちなみに、この本は社内研修の課題図書として3年ほど前に読んだことがあったのですが、最近改めて読み直し、以前とはまた違った観点の気づきがあるとともに、実によく考え抜いて宅急便事業を開始し育ててきたのだと感銘を新たにしました。
さて、この本において、宅急便事業を行うにあたり「サービスが先、利益は後」という言葉が挙げられています。
これは、宅配便事業がネットワーク型事業であり、当初のインフラの整備にはコストがかかるものの、利用者が増加してある一定以上の取扱量(本文の言葉では「荷物の密度」)を超えると、必ず利益が出るようになるという仮説に基づくものです。
取扱量を増やすには、当時の競合相手であった郵便小包とのサービスの差別化(翌日配送等)が必須であり、そのためにはコスト(利益)は厭わないという強いメッセージが込められています。
これはきわめて戦略的なメッセージであり、明確な方針です。サービスのためには、コストは気にしなくていいというわけです。逆に、手間ひまかけてサービスのコストを計算する人間の給料のほうがもったいないとも書かれています。
戦略というのは「しないこと」を明確にすることとも言えます。なんでもやりましょうでは戦略にはなりません。「○○第一」だけでなくて、「△△は二の次でいい」と明言できなければなりません。
ただし、何を第一とするかはしっかり考え抜いて決めなければならず、上記のように事業の特性をとらえ、いくつかのバリュードライバーやKPIの因果関係や相関関係を整理し、そのうえで「これが最優先」ということをロジカルに説明する必要があります。
また、この優先順位というのは経営トップしか言えません。この本においても、「『サービスが先、利益は後』というのは社長だからこそ言える言葉である」という部分があります。「何かをしなさい」というのは中間管理職でも言えることなのですが、「これはしなくてもいい」というのは最終的な事業責任を持つ経営トップしか言えないことです。
最近の例では、トヨタが米国でのリコール問題に対して社長自らが「今は販売台数よりも品質を優先する」というメッセージを発しましたが、一致団結して対応にあたるためには、トップ自身のこのような決断とメッセージが非常に大事です。
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