……
からん
櫻子の剣が弾き飛ばされた
「危ない危ない」
十兵衛の姿が人間のような形に
変わっていた。
スーツを着てメガネをかけた青年
身長は京子くらいだ。
「じゃ、邪魔するなっ!」
「少し頭ひやそうか」
十兵衛の鞭が櫻子を亀甲縛りにする。
魔力も封じられ、飛び道具も出せない櫻子。
「うぐぐぐぐぐ」
「ウサギ強いじゃん…」
「あまり天使が手を出すのは
良くないんだぉ。
あとはみんながやるんだ」
説得を試みる京子と向日葵
耳を貸さない魔法痛女
あかりが結界に入ってくる。
「みんな、大丈夫?」
「あかり」
「赤座さん」
「大変、こんな所に小さい子が!」
魔法痛女を胸に抱くあかり
結界から連れ出そうとする。
「待て、そいつが魔法痛…」
「ウウウウウウ」
敵の範囲攻撃魔法!下がる向日葵と京子
「あちちちち、あかりっ!さが…え?」
「赤座さん…」
「あか…り?無事なのか…」
「怖いんだね、もう大丈夫^^」
「ウグググググ」
「そうだ、お絵かきしようか?
そのスケッチブックでね」
「…ウン」
「バカ、そいつに絵を描かせたら」
「あかりにまかせてみよう」
「結衣…」
「それが良さそうですわね」
「ほどけーっ!」
魔法痛女が描いた絵は…花
結界内にお花畑が広がる…
「うわぁ上手、小さいのに絵が上手いんだね^^
あれ、お花が咲いている、きれいだね!」
「オ兄チャントオ出カケシタ…」
「お兄ちゃんがいるんだ…。
あかりにも仲良しのお姉ちゃんがいるんだよ」
「あかり…まるであかねさん…」
「姉以上の資質だぉ」
暖かい光の中
あかりの膝に座り絵を描く魔法痛女
お菓子、服、風景
魔法痛女と兄の思い出が形になる。
「うわあ、上手だね^^」
「コレ…オ兄チャンガクレタ」
「魔法のスケッチブックをくれるなんて
素敵なお兄ちゃんだね^^」
「ウン!デモ…私ノセイデ…」
「そう…じゃあお兄ちゃんが
元気になるような絵を描こう!」
「ドンナ?」
「うーん、お兄ちゃんとの思い出とか」
魔法空間に絵が広がっていく…
野球のユニフォームを着た少年が
小さな女の子からサンドイッチを「あーん」
「オ兄チャン、ウアアアアアアアッ!
「あかりが応援する、お兄ちゃんと仲直りしよう」
ぴしっ
魔法空間にひびが入る。
「うわ、どうなってんだ!?」
「船見先輩、これは?」
「浄化…魔法痛女が自ら結界を解いた」
「ありがとう、優しいおねえちゃん。」
「あは」
「これ…あげる」
魔法痛女は赤く輝くものを
あかりに手渡した。
「ま、魔石だ!!」
「あれが魔石か…」
「きれい…」
「うぐぐぐぐ…………」
笑顔で消えていく魔法痛女
………………………………
………………
魔法空間は消えた。
残ったのは、月明かりに照らされた魔石。
卵のような赤い宝石。
ウサギの姿に戻り
あかりに駆けよる十兵衛
「すごい、すごいよ赤座あかり!
君は天才だ!」
全員があかりの周りに集まっていた。
珍しく興奮した結衣
「あかり、まさか初戦で成功するなんて…
よくやった!」
「あかりーっ!」
「恐れ入りましたわ」
勝利に湧く一同
櫻子は一人無言だった。
「え…小さい子が泣いていたから
助けなきゃって…あ、魔法痛女さんは?」
「さっきのだよ。」
「ええええ、あの子が!?」
「くす、赤座さんらしいですわ」
「これ、なんだろ?」
「魔石だね。これを取り込めばレベルが上がる」
京子 レベル10
向日葵 レベル9
櫻子 レベル9
あかり レベル7
「さっきの戦闘でレベル上がったな。
やっほい!」
「これは、赤座さんのものですわ」
「そうだな、あかりパワーアップだ」
「さあ、魔石と心を…」
「うん、え?櫻子ちゃん?」
櫻子はあかりから魔石を奪った。
ぱきぃぃぃん
魔石は砕け散り、魔力は櫻子に取り込まれた。
「櫻子!」
櫻子のレベルが2アップ、11になった。
「なーんだ、魔石って大したことないじゃん。
浄化なんて面倒な…」
ぱぁん、向日葵に頬を張られ
呆然とする櫻子
「何をしているんですの?
それはあの方が赤座さんにあげたのですよ」
「だって…」
「だって、何ですの?」
「もっと強くなりたかったんだもん!」
悲痛な叫びが響く。
「あんたが魔石を使っても…」
「僕が説明するぉ。
魔石の効果は、レベル差と絆の強さが
関係するんだぉ」
「レベル…そっか、倒すだけなら簡単だったから
あいつ弱いんだね」
「櫻子ちゃん…そんなの酷いよ」
「考えてものを言いなさい!」
声を上げる向日葵
京子と結衣は黙っていた。
「もう一つ、君は彼女に憎しみを抱いていた。
だから、効果も薄まったぉ」
「なら、あかりが使ったらどうなったんだ?
あかりが恩人なんだろ」
気になった京子が口をはさむ。
「レベル…14くらいまで上がっただろうにぃ」
「あなたが勝手なことをするから!
赤座さんが使えば戦力も上がったのですよ」
「悪かったよ」
「私じゃなくて赤座さんに謝るべきじゃなくて?」
「ごめんなさいあかりちゃん」
「あかり、別におこ…」
「何だよその言い方」
京子も不快感をあらわにする。
「櫻子、本当に反省しているように見えませんわ」
「ゴメンナサイっ!これでいい?」
「いい加減になさい、
あなたがどれだけチームの和を乱していると…」
「だ、大丈夫だよ。あかり気にしてないから。
たくさん魔法痛女さんを浄化して
助けてあげればいいんだよね。
あかり、また頑張るよ^^」
「ごめんなさい、櫻子にはよく言っておきますわ」
………………………………
………………
この日はこれで解散することになった。
駆けだす櫻子
「お待ちなさい、話が…もう」
………………
「ううっ、みんな上手くやれているのに
私だけ………………」