昨年、世界最高峰のトレイルランニングレース、ウルトラトレイルデュモンブラン(UTMB)の姉妹レースCCCにエントリーしたら幸運にも抽選が当たって、シャモニーを走らせてもらう栄誉を得た。CCCについては過去ブログをどうぞ
もう、ここまで来てしまったら、これは最後までいくしかあるまい…
つまりは、UTMBファイナルに行くしかない…そう思って、さまざまな作戦をたてている今日この頃。
なぜ、作戦をたてているのか…という表現になるのかは少し説明が必要だ。
2022年UTMBは大きな制度変更を行った。
これまでもUTMBに出場するには、出場資格というものが必要だった。
世界トレイルランニング協会(ITRA、International trail running association)という団体があって、そこが認定する大会に出場し、完走をすると得られるポイントがあって、その基準を満たすと出場資格が得られた。
国内のいくつかの長距離レースでもこのITRAのポイント制度を使って、出場資格を規定しているものがいくつかある。
トレイルランニングレースと一口に言っても、20キロぐらいのレースから、100マイル(160キロ)を超えるものまで、国内外問わずでさまざまなレースが行われている。
当然だが、距離の長いレースは、過酷さが増す。
トレイルランニングは、気象状況、標高の高い場所など、日常とは全く異なる中で行われる競技でもあるので、ある程度の実績を求めるのも当然と言えば当然だ。
例えば、日本でも最高峰レースに位置付けられているウルトラトレイルマウントフジ(UTMF)では、2レースの合計で10ポイント以上獲得した者という規定となっている。
ITRAの認定する各大会では、距離と、標高差に応じて、1~6のポイントがつけられていて、例えば、私の地元で行われるOSJ KAMI100というレースは、距離は111キロ、累積標高差は6500メートルで、完走すると6ポイントを得られるようになっている。
UTMFの出場資格は、OSJKAMI100に相当するレースを過去に2レース完走すれば、6ポイント×2レース=12ポイントということで10ポイントを上回り、出場資格が得られることになる。
UTMBも2022年までは、ITRAの仕組みでエントリー資格が得られるようになっていた。
昨年、私がCCCに出れたのは、私が過去に出場して獲得したITRAのポイントでエントリー資格を満たし、それで申し込んだら当選したということだ。
昨年、私がUTMBに出ていないのは、UTMBに出るための資格は得られなかった(つまりはもっと出場基準が厳しいということ)ということでもある。
その仕組みが2023年から変わったのだ。
UTMBは、世界で30ほどの予選レース(UTMB qualifing race)というものを設け、ITRAのポイントとは別に、その予選レースにランニングストーンという独自のポイントを設けた。
このランニングストーンというのは、いわゆる抽選権のためのポイントである。
UTMBは世界中のトレイルランナーのあこがれの大会で、エントリーしてもなかなか抽選であたらない。
なので、ランニングストーンという制度を設け、そのポイントに応じて、UTMBの当選倍率を与えるというふうに変更した。しかも、UTMBの予選レースに出て、少なくともランニングストーンを1ポイントでも獲得しないと、エントリーすらできないように変更したのである。
残念ながら、日本では、その予選レースが存在しない。
なので、UTMBに出るためには、必ず海外のどこかの予選レースに出場しておかなければならないようになったのである。
先に、作戦を立てている…と言ったが
この仕組みでUTMBが動いているので、①海外のUTMB予選レースに出ること、②予選レースを完走し、ランニングストーンをたくさん獲得すること(例えば、ランニングストーンが1つの人と、8つの人とは、8倍の当選確率が代わるという仕組みになっている)
この2つを満たすことが、UTMBへの道につながるということなのである。
さて、UTMBへの道に進むにどうするか…
いろいろ考えた結果、スペイン、ピレネー山脈で行われる val d'aran by UTMB(以下val d'aran)を選ぶことにした。
UTMBファイナルへ出場するために、世界30の予選会に出る必要があるとは先に述べたのだが、ランニングストーンの獲得は、少し複雑な制度にしている。
UTMBは、世界で3つの大会をUTMBメジャーという、通常の予選レースの2倍のランニングストーンを獲得できるようにした。
ヨーロッパ、アメリカ大陸、アジアオセアニアにそれぞれメジャーレースをつくって、そこのレースのポイントは通常の倍のポイントにして、より格をあげることにしたのだ。
近くで言うとアジアオセアニア地域で、12月のDoi Inthanon by UTMBというメジャーレースがあるのだが、年末かつ、私の仕事の都合などもあり、この期間長期に開けることは難しい。
UTMBの予選シリーズを複数出るということも選択肢としてはあるのだが、金銭や、時間の問題で、それも厳しい。
自分の置かれている状況を考え、一回のエントリーで最大限ランニングストーンの獲得できるヨーロッパのUMBメジャーに位置づけられているval d'aran を選んだのである。
ちなみに、一つ言い忘れたけれど、大会で上位を狙えるような人は、先ほど私が述べたような複雑なことはなくて、純粋に、UTMBメジャー上位10名に入った人は、自動的にファイナルへの出場権が得られるようになっているので、私の作戦というのは、あくまで、実力が乏しいヘッポコランナーに限られていることは補足しておく…。
さて、日本からの出国、使える時間、出せるお金の総合的な判断で選んだのが、
行き 関空⇒シンガポール⇒バルセロナ
帰り バルセロナ⇒ソウル⇒関空
というルートだった。
移動はシンガポール航空。
今回行くのは、ヨーロッパでも西方の国スペインである。
地球儀を見たらよくわかるが、シンガポールは、ただ、緯度を南下するだけで、ほとんど西には移動しない。
頭では理解しているつもりだったが、実際に移動してみて、このルート選択が正しかったのかは、自分でも疑わしい…。
関空から、5時間のフライトでチャンギ空港に到着。
チャンギ空港のターミナル間移動で眺めた外の様子。
もちろん、単に移動するための通過点に過ぎないので、外に出られることはない。
まさにかごの中の鳥状態。
ただ、アジアでも有数のハブ空港。スケールのでかさを実感する。
(あとで調べたら、旅客数でいえば、羽田よりもすくなかった…)
6時間の待ち時間のあと、バルセロナ行きへ。
これもあとで知ったのだが、バルセロナ行きはチャンギからの直便ではなく、ミラノ経由であった。
13時間のフライトで、ミラノマルペンサ着。
ここでは、機内からも出れず…。
ミラノへの降客、ミラノからの乗客で、1時間ほど経過する。
さらに1時間30分ほどのフライトを経て、バルセロナ着。
バルセロナ空港からは、直接現地へのバスが出ていたので、予め日本で予約しておいたのだが、空港到着から、5時間後の出発で、ここでもかなりの時間待つことになった。
ようやくバスに乗る。
空港からはさらに6時間。
結局、待ち時間やそれぞれの乗車時間をあわせると、家を出てからまる2日間ほど、移動に費やした。まあ、時間の節約と引き換えに安いキャリアを選択しただから、自業自得なのだが相当疲れた…。
滞在先のVielhaに21時30分頃到着。
向こうの夏時間設定の関係もあってか、21時をまわっているのに、まだ薄明るかった。
バス停からホテルまでは5分とかからない場所にあり、チェックイン。
ほとほと移動で疲れていたこともあり、シャワーをあびて、速攻でベッドに入って寝ることにした。
つづく