土建屋のおっさん、ジェンダーバランスについて考える | ニシムラマサキのブログ 【株式会社 西村工務店 代表取締役】【 SASAYA・うづかの森 オーナー】

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どうすれば地域を『素敵』に変えられるのか、誇るべき田舎になるのか、そんなことばかり考えています。

ジェンダーバランスと言われて久しい。

 

実のところ、私は、昔その言葉にはずっとひっかかるものを感じていた。

 

妻と結婚したのは、20年前。

 

彼女自身は、当時専業主婦になることを望んでおり、稼ぐのは私の仕事だと思ってやってきた。

朝早く、夜遅いのは当たり前だったし、それはほとんど苦にならなかった。

 

家に帰ったら、食事があり、洗濯、掃除も彼女の役割で、家のことはほとんどしてこなかった。子育ても正直ほとんどやっていない。

学校などの活動もほとんど任せきり。

 

しかし、母親が民宿を営んでいたため、同居家族である妻は、主婦をやりながら、民宿を手伝っていたので、厳密に言えば、専業主婦ではなかった。

 

10年ほど前からは、会社が経営する宿泊事業も手伝うようになり、それこそ、いっぱいいっぱいの状況だったと思うが、それでもなお、彼女は家事をこなし、私自身の生活パターンはまったく変わることがなかった。

 

何度か、彼女は爆発したこともあったけれど、それでも私自身の考えはほとんど変わらなかった。

 

コロナが世界を覆うようになった3年前、宿泊事業はまったく止まってしまった。

宿泊の仕事はまったく動かなくなってしまったが、従業員を雇っていたこともありどう働いてもらうかと考えていたところ、彼女がそれならばパンを焼いて販売しようと言い始めた。

 

彼女はもともとパン屋の娘で、パン製造の知識や技術をもちあわせていたので、彼女自身が主導してパン事業をてがけることになった。

 

本人も厨房に立ち、朝は5時、夜は23時を越えるようなときも出てきて、さすがに家のことまで手が回らなくなってしまった。

食事の準備、片付け、洗濯、掃除…少しずつだが、私も手伝うようなったというより、自分もそれに加わらなければ、食事が目の前に出てくることもないし、洗濯もできあがってくることもなかったので、半ばしかたなくやったというのが本音だ。

 

自分は家事はやらないと決めていたけれど、意外ややってみると、そんなに苦にもならなかった。

続けてみると、自分の心に変化が出てきた。

 

シンクに放置してある食器があれば、その状況はいやだなと自然と手が動いて皿を洗ってしまう自分がいたし、干してある洗濯物は取込たたまないと気がすまなくなった。

 

何より、変化したのは妻の方だ。

妻は主婦を望んでいたと最初に言ったが、もともとリーダーシップが旺盛なタイプで、パン事業を始めるや、どんどん次から次へとアイデアを出し、人を動かし、状況を変化させてきた。イベントを企画したり、出張販売に行ったりして旺盛にビジネスをするようになった。

 

事業を成長させたい、何より地域に雇用を創出していこうという地域のリーダーとしてバリバリと頭角を現すようになった。

 

私が外で働き、彼女が家にいるときの何倍も周囲にポジティブなインパクトを与えていることはあきらかだ。

 

私はこう思った。

男女の垣根を越えて、一人一人の持っている力を発揮することは、これまで以上に世の中をよりよくする力があるのだ…ということを。

 

自分の20年前の考えが誤っていたことは明らかだった。

 

私が主に活動をしている建設業界、特に土木の世界は、おそらく90%以上が男の世界だ。

もちろん力仕事が必要なところもあるので、その点では、女性は及ばないかもしれない。

 

しかし、冷静に見渡せば、IT化、機械化が進む今の土木の世界では、いわゆる力仕事を必要としなくてもできる仕事は山ほどある。

重機のオペレーターや、ダンプの操作も、大きな機械を操作するのに腕力が必要に思えそうだが、まったく力は必要としない。

むしろ繊細さ、丁寧さが求められる部分においては、男は女性にはとうに及ばない。

 

男女比率を五分五分などというのは、簡単にできることではないが、しかし、少なくとも、建設業界は男社会だと思うマインドは捨てねばならないと思うし、常にジェンダーのバランスを意識した経営や業界の変革は必要だ。

 

古い考えを捨て、新しい世界を築くことができなければ、この業界は崩壊の一途をたどるだろう。