別に秘密にする必要もなかったが、あまり多くの人には打ち明けることなく、8月の終わりにヨーロッパに行ってきた。
UTMB(ultra trail du mont blanc)の姉妹レース、CCCに出場したからだ。
現在、トレイルランニングの世界で最高峰の大会といえばUTMBであることに間違いはないだろう。
トレイルの世界に片足を突っ込んでしまって10年…。
どんどんとはまり込んでしまって、いつかこの大会に出てみたい…そんな欲望がふつふつと湧いてきてしまった。
UTMBは、ヨーロッパの最高峰、モンブラン山系をぐるっと一周するレースで、走破距離は171キロ。
この大会に出るためには、ある程度の実績を積んでおかなくてはならない。
ITRA(international trailrunning assosiation)という組織があって、現在国内海外問わず、多くのレースがこのITRAの組織の認定を受けている大会になっていることが多い。
日本でも多くのトレイルの大会が開かれているが、距離、累積標高などによって、それぞれのレースに1点から、6点のポイントがつけられている。
UTMBに出るには、このITRA認定の大会2レースで完走した実績の合計点数が10ポイント以上を獲得していなくてはならない。
これまでの実績では、2レース10ポイント満たせなかった私は、その姉妹レースであるCCCならば、参加資格を満たしていたため、それにエントリーをした。
CCCというのは、三つの地名の頭文字をとっていて、スタート地点であるイタリアのクールマイユール(courmayeur)、エイドの一つにもなっているスイスのシャンペラック(champex-lac)、そしてゴール地点のフランスのシャモニー(chamonix)と、レース中に二つも国境をまたぐ。UTMBの後半部分にあたるコースとなっている。クールマイユールとシャモニーはまさにモンブランの表と裏に位置する。
エントリー期間は半年前の1月だった。
UTMBのサイトを開き、あまり理解できていない英語と格闘しながら、なんとかエントリーを済ませた。
ただ、これらUTMBシリーズの大会は、トレイルランニングの最高峰であるが故に、世界中からのエントリーが殺到するので、抽選となっており、それに当選しないといけないのだ。
2月初旬…
UTMBからメールで連絡が当選の結果が届く。
参加しようと思って、エントリーしたものの、実際に当選のメールが来て、うれしさもあったが、ほんまに行けるんだろうか…
そんな思いもよぎったりした。世界中がコロナの渦中にあって、海外への往来もままならない状況だったからだ。
しかし、せっかく手に入れたチャンス…とりあえずは前に進めることにした。
今回CCCに出るにあたり、自分ではもう一つたわいもない目標を掲げていた。
それは、現地ツアーなどに委ねるのではなく、すべて個人手配でするということだった。
私は、大学を卒業後、3カ月カナダで過ごした経験がある。
バックパッカーという旅のスタイルにあこがれて実際にそのようにしてみた。
たいした英語力はなかったけれど、とにかく、そうやって一つ一つの行動を自分で決めて旅をすることが楽しかった。
あれから20年以上がたち、日常ではほとんど使わない英語力はどんどんと落ちていったが、ヨーロッパに行くにあたり、それを貫徹してみようと思ったのだ。
実際にチケットなどの準備をはじめたのは、6月に入ってからだった。
先にも述べたように、コロナの状況がどうなるか見通しもつかなかったが、6月頃になってくると、ヨーロッパの方では、日常の生活を取り戻している感があり、いよいよUTMBも本当に実施する気配を感じてきたからだった。
現地までの飛行機、宿、また空港から現地への移動なども含め、夜な夜なインターネットに向いながら、チケットの手配や旅行計画を立てていった。
続く…