棚田から見る未来 | ニシムラマサキのブログ 【株式会社 西村工務店 代表取締役】【 SASAYA・うづかの森 オーナー】

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どうすれば地域を『素敵』に変えられるのか、誇るべき田舎になるのか、そんなことばかり考えています。

先日、今度来られるお客様にぜひ、村岡の美しい棚田をみてもらおうと思い、その下見のために、西ヶ岡棚田を訪れようとしていたときのことです。
 
棚田に行こうと歩いていたところ、知り合いのSさんとすれ違いました。
Sさんが、「何しに行くんだ?」いぶかしそうに私に話かけてきました。
 
私「今度、東京からお見えになるお客様に、ぜひ西ヶ岡棚田をみてもらおうと思って…」
 
Sさん「今は何もみるものがないよ…最後に見に行ったのはいつだい?」
 
私「3~4年ほど前ですかねぇ」
 
Sさん「なるほどな…、行ってみればわかるから」
 
そんな言葉を交わしました。
 
私は、何を言っているのかまったく理解ができず、そして、西ケ岡棚田の絶景ポイントと呼ばれる場に立って絶句してしまいました。
 
そう…
 
あの頃に見た美しい棚田がその姿をとどめていなかったからです。
 
つまり、耕作者が減り、荒地となり、そこら中がすすき野原になっていたのです。

 

すすき野原が陽光に照らされ、それはそれで美しい姿を見せていましたが、Sさんが言うとおり、私が見たかったあの美しい棚田の姿はそこにありません。

 

実は香美町には、日本棚田100選に選ばれた棚田が二つ存在します。

ひとつは、小代区貫田のうへ山の棚田

 

そしてもう一つは、村岡区和佐父の西ヶ岡棚田です。

 

うへ山の棚田は、私の友人でもある小林さんを中心に、さまざまな活動を行っていて、その美しさを今でもとどめています。

 

しかし、残念ながら、西ヶ岡棚田はさきほど話したとおりです。

 

なぜ、棚田を維持することができないのか…

 

それはつまるところ、過疎化の進行に他なりません。

昔、日本棚田100選は、グリーンツーリズムの一つの旗頭として農林水産省が認定したものです。

 

その100選の棚田でさえも維持が難しくなってきているという現状をまざまざと見せつけられ、くやしい気持ちでいっぱいになりました。

 

いわゆる他の観光資源と異なり、棚田はそこ人が介在しなければ、存在しえません。

 

小代の西ケ岡の例は、稀有だと思います。

地域に対する誇りと、そこにさまざまなアイデアと行動力があってこそ、維持されていくものです。

 

外野でいくら嘆いてみても、そこに暮らす人の気持ちになれば、そうも言っていられないという事情も理解できます。

 

担い手の確保はつまるところ、それが経済的にも成り立つ仕組みになりえているかということだと思います。

 

残念ながら、いくら棚田を開発しようとも、平野部で取り組む農業に比べれば、コストがかかってしまいます。

 

そこに異なる価値を見出し、それが経済的な価値につなげていかなければいけないのです。

 

このままあと10年もすると、もしかすると、西ケ岡の棚田は消滅するかもしれませんが、復活できる道筋がつけられるとすれば、それは観光です。

 

和佐父地区の人がこれからも続けられるように、ここに交流する人を呼び寄せ、地元にお金を落とし、それを原資として、続けらるようにする…

 

私はそこにいちるの望みをかけています。

耕作地の減少とともに、地域の誇り、生きがいそういうものまでを決して失ってはなりません。