うすいろひょうもんもどきという蝶の名前を聞いたことがありますか?
この蝶は、いま環境省レッドデータブックのⅠ類に登録されている、絶滅危惧種に指定されています。
この近隣では、ハチ高原と東ハチにしかおらず、残念ながら、ハチ北からは1990年ごろ(だったかな?)を最後に姿を消してしまいました。
あと岡山、広島、島根など中国山地の草原環境にしか生息しない蝶です。
関係者の努力のかいあって、いま少しずつですが、増えているそうです。
私が、この蝶の名前を聞いたのは、確か5年ほどまえのことだっと思います。
K先生にある会合で知り合い、この蝶のお話を聞きました。
先生もこの蝶の保護活動に積極的に取り組まれている方です。
自然保護とかの話になると、どうしても、シーシェパードなどの過激な自然保護団体のことが頭に浮かんでしまいます。
しかし、私がこの先生の興味に話が引かれたのは、自然保護が単なる自然保護ではなく、あくまで人の営みがあって大前提を否定することのない視点で語ってくれたからです。
一般的なイメージとして、絶滅危惧種の存在というのは、人類の自然に対する暴挙というふうにとらえられがちです。
つまり人が文明を発展させ、どんどんと自然を破壊し、そして動植物を危機においやったそんなふうなイメージです。
ある意味では、そのことは否定できない部分もあると思います。しかし、私たちが、いまこのようなすばらしい文明の中で生きていられるのは、私たちの先輩たちが、それぞれの中で一生懸命生きてきて、取り組んでくれた結果です。そのことを全て否定することになります。
絶滅危惧種の中には、人の営みと共にあり続けた動植物もたくさんあるそうです。
こうのとりなどが代表的な生き物です。こうのとりは、いわゆる里山環境に生息する鳥です。
人が、田畑を耕し、山から薪をとったりして、山を整備した環境であるからこそ住める生き物だそうです。
こうのとりの保護のために、人がまったく手をつけない大自然の環境をつくればそれであの鳥は生きられるのかということではないんだそうです。
人がいて、里山を保全しながら営む生活があって、そこに共存できる鳥がこうのとり鳥がいるという図式です。
冒頭のうすいろひょうもんもどきもまさにその蝶だそうです。
日本は温暖な気候ですから、荒地を放置すると、数十年後には、土地は森に返ってしまいます。
草原環境に住む蝶ですから、草原を維持するということは実は人の手が施されているということなのです。
以前、草原環境は、農耕のために必要とされる環境でした。牛の餌場としての牧場だったのです。それが耕運機に変わってしまい、牛を維持するのに必要な環境が不要になってきました。
そして、日本中からどんどん草原環境が減ってきてしまったのです。
しかし、幸いなことに、草原環境が喪失するころ、スキー場が登場してきました。
特に関西のスキー場は、昔牧場だったところをスキー場開発しているところが多く、スキー場を維持するためにも草刈が必要でした。そこで、草原環境が維持されることとなり、この蝶がこの場所に生き残ったというわけです。
言い方を変えるとスキー場の発展がこの蝶を救ったと言ってもいえるでしょう。
残念ながらハチ北では、いまうすいろひょうもんもどきをみることができませんが、いつか蝶を飛ぶ姿をイメージしながら、理想の草原環境が維持されるようにしていきたいと思います。