高校野球では甲子園でも予選でも「一番おもしろい」と言われた日程があった。
準々決勝を同じ会場で四試合を行うという豪華な一日の事を指している。
未来の優勝校も準優勝校も、そこに存在して濃密な試合が行われるのが、その所以である。
私事ではあるが、98年の夏の甲子園準々決勝・横浜とPL学園は甲子園球場の三塁側内野席で観戦していた。
たしか、あの日も準々決勝は四試合組まれていたような記憶が有る。
そんな贅沢な日程が先週の荒天の影響もあって、埼玉県大会で実現された。
秋の大会特有の緩さも予想されたが期待に胸を躍らせて大宮に向かった。
第一試合:本庄第一 対 花咲徳栄
第二試合:川越東 対 桶川
第三試合:聖望学園 対 坂戸西
第四試合:浦和学院 対 立教新座
昨夏、記念大会の代表二校(本庄第一・浦和学院)が顔を揃えて登場。
昨年のセンバツ準優勝校で、今夏の埼玉県代表校・聖望学園という豪華布陣。
昨秋の優勝・花咲徳栄、昨夏の南埼玉で決勝まで勝ち上がった立教新座が脇を固める好カード。
第一試合からハイライトで試合内容を紹介してみたい。
花咲徳栄・五明大輔、本庄第一・田村和麻という下級生時から逸材と目されていた二人のエース対決を
第一試合の見所に設定して観戦。
五明大輔は昨秋の大会でもエースナンバーを背負い、この学年では埼玉ナンバー左腕の呼び声もある。
残念ながら、五明は今日はマウンドに上がる事は最後まで無かった。
ライトで先発、その後ファーストに守備位置を移動したまま試合終了。
スタンドでは「不調」という説が飛び交っていたが真相は解らない。
ただ、関東大会を懸けた山場の試合で「エース温存」というのは考え難い。
「いよいよ登板か?」と思わせるシーンがあったからやはり故障を抱えているのだろうか。
田村和麻は斎藤佑樹(早稲田大学)を彷彿とさせるノーワインドアップモーション。
身長が180cm、体重は75kg程はあるだろうか、体格には恵まれている。
昨年の夏には一年生ながら四番バッター(一塁手)として鮮烈に高校野球デビュー。
北埼玉の決勝では甲子園出場を手繰り寄せる先制適時打を放っている。
現状では身体能力や持ち前の野球センスに頼った投球という印象を受ける。
それだけに投手としての経験値は不明だが、これから洗練されていく素地は十分にある。
試合は3-3と追い付いた花咲徳栄が9回裏二死ながら二塁・一塁のチャンスを作る。
二番・大塚健太朗が左中間への適時打を放って、サヨナラ勝ちで勝負を決めた。
両チームともに雑な守備が目に付いた。秋の大会の気配が充満する試合だった。
サヨナラ負けの直後に田村和麻がスタンドからでも分かるくらいの笑顔が見えた。
センバツ出場が懸かっているのに、なぜだろう?しかし、それが秋の大会特有の”緩さ”なのだ。