前記事でアップした『稀代の本屋蔦屋重三郎』

理不尽な奢侈禁止令を出した松平定信について触れましたが

今回、読了したこの本で まさかその松平定信が登場とは!

 

この本、永井紗耶子さんというだけで

敢えて、内容を知ることなく

もう随分前に予約を入れていたので この偶然に驚きました。

 

 


「きらん屋」という煙草屋を鄙びた日坂宿で営む栗杖亭鬼卵。

 

既に隠居の身となっていた松平定信が

徳川家の始祖、家康の御霊に触れる旅の途中

身分を隠し この煙草屋に立ち寄り

定信自身が行ってきた政を民がどう思っていたのかを

この煙草屋の主、鬼卵から聞くことになります。

 

鬼卵は かつて文人墨客として 見聞を広める為

東海道筋の三河吉田(現、豊橋)や三嶋に身を置き

貧困に喘ぐ人々の苦しみを怒りを持って身に染みて知っていました。

 

定信としては 自分は学問に秀でているというプライドもあるのに

異学の禁を出したり

卑俗な芸文として人々の楽しみを奪った彼に対しての怒りもあって

理不尽な政を行ってきた”定信”に対しての皮肉を

この鬼卵から聞くことに。

 

鬼卵は この旅人が定信だと知って言っているのだろうと思われるのですが

定信自身 身分を隠している身としては 怒る訳にもいかないという感じで

ちょっと痛快な気分にもなったりして爆  笑

 

ウィキペディアで調べたら主人公の栗杖亭鬼卵は 実在の人物らしく

俳諧師、浮世絵師でもあったそうで

本書にもあったけど「東海道人物志」「東海道名所図会」にも携わったとかで

「きらん屋」という煙草屋を営んでいたことも事実。

まぁ、定信との間にこんな出会いがあったというのは

永井さんによる創作だろうけど

よくぞ、こういう人物を扱ってくれたな~という思いです。

 

忠義に生きることが当たり前だったあの時代において

それは時に”忖度”が優先されていた訳で

まるで現代にも通じる気もします。

 

誰に忖度することなく己の志を信じて生きることは 

大きな壁を乗り越える労力が必要になるだろうけど

それにチャレンジする勇気がある人のことは

とても尊敬します。


現代でも庶民の不満が

政治家にこんな風に通じればと思わずにはいられません。