特級グランド・コンチェルト
【日時】
2023年5月3日(水祝) 開演 14:00
【会場】
ザ・シンフォニーホール (大阪)
【演奏】
指揮:藤岡幸夫
ピアノ:谷昂登(◇)
ピアノ:桑原志織(☆)
ピアノ:阪田知樹(◆)
管弦楽:関西フィルハーモニー管弦楽団
(コンサートマスター:ギオルギ・バブアゼ)
【プログラム】
グリーグ:ピアノ協奏曲 イ短調 Op.16(◇)
シューマン:ピアノ協奏曲 イ短調 Op.54(☆)
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第1番 嬰ヘ短調 Op.1(◆)
ピティナ主催のピアノ協奏曲のコンサートを聴きに行った。
指揮は、1962年東京生まれで2007年より関西フィルの首席指揮者を務める指揮者、藤岡幸夫。
ソリストは、2003年北九州市生まれのピアニスト谷昂登、1995年東京生まれのピアニスト桑原志織、1993年名古屋市生まれのピアニスト阪田知樹の3人がそれぞれ一曲ずつピアノ協奏曲を担当した。
谷昂登、桑原志織の実演を聴くのは今回が初めて、また阪田知樹もソリストとして実演を聴くのは今回が初めて。
最初の曲は、グリーグのピアノ協奏曲。
この曲で私の好きな録音は
●リパッティ(Pf) ガリエラ指揮 フィルハーモニア管 1947年9月18,19日セッション盤(NML/Apple Music/CD/YouTube1/2/3)
●R.ファレル(Pf) ウェルドン指揮 ハレ管 1956年8月23,24日セッション盤(CD/YouTube)
あたりである。
みずみずしい情感を湛えた、端正な演奏が好み。
今回の谷昂登は、これらの盤よりは濃いめの解釈だが、彼としては比較的おとなしい演奏だった。
“谷昂登節”を期待していたので少しはぐらかされたが、今回はラフマニノフではなくグリーグということで、控えめにしたのかもしれない。
それでも、端正というよりは個性的な印象となるのは、彼の彼たる所以だろう。
次の曲は、シューマンのピアノ協奏曲。
この曲で私の好きな録音は
●リヒテル(Pf) ロヴィツキ指揮 ワルシャワ・フィル 1958年10月セッション盤(NML/Apple Music/CD/YouTube1/2/3)
●ポリーニ(Pf) カラヤン指揮 ウィーン・フィル 1974年ザルツブルクライヴ盤(NML/Apple Music/CD/YouTube1/2/3)
●小林愛実(Pf) 田中祐子指揮 読響 2017年2月28日川崎ライヴ(動画、その記事はこちら)
●藤田真央(Pf) 熊倉優指揮 N響 2020年11月14日東京ライヴ(動画、その記事はこちら)
●小林愛実(Pf) 下野竜也指揮 N響 2022年2月5日東京ライヴ(動画)
あたりである。
また、2019年のクレア・フアンチの実演(その記事はこちら)、および2022年の小林愛実の実演(その記事はこちら)も忘れがたい。
今回の桑原志織は、辛口ワインのようにさらりとした味わいの、力強い演奏だった。
小林愛実のような、ワンフレーズ聴いただけで涙してしまう演奏とは違って、もっと冷静に聴けるのだが、そこには確かな充実感があり、嚙みしめるうちに知らず知らず酔いしれている、そんな演奏である。
別の言い方をすると、シューマンの中のショパン的な要素を抽出した小林愛実に対し、シューマンの中のベートーヴェン的な要素を抽出した桑原志織、といったところか。
こういうシューマンも、とても良い。
最後の曲は、ラフマニノフのピアノ協奏曲第1番。
この曲で私の好きな録音は
●ラフマニノフ(Pf) オーマンディ指揮 フィラデルフィア管 1939年12月4日、1940年2月24日セッション盤(NML/Apple Music/CD/YouTube1/2/3)
●リヒテル(Pf) K.ザンデルリング指揮 ソビエトRTV大交響楽団 1955年2月18日セッション盤(NML/Apple Music/CD/YouTube1/2/3)
●ルガンスキー(Pf) オラモ指揮 バーミンガム市響 2002年7月10,11日セッション盤(NML/Apple Music/CD/YouTube1/2/3)
●マツーエフ(Pf) ゲルギエフ指揮 マリインスキー歌劇場管 2014年11月16日サンクトペテルブルクライヴ盤(NML/Apple Music/CD/YouTube1/2/3)
●古海行子(Pf) 前田陽一朗指揮 サン=オートム室内管 2017年5月5日東京ライヴ(動画) ※第1楽章のみ
あたりである。
今回の阪田知樹は、すでに名も知れ日本を代表するピアニストの一人となった彼だけあって、アンサンブル面でもテクニック面でも全く危なげのない、余裕綽々の演奏だった。
これだけの完成度は、なかなか聴かれるものではない。
欲を言えば、上記名盤たちのように、第1楽章再現部直前の強音部ゼクエンツや同楽章コーダをもっと盛り上げてほしかったし、終楽章をもっと速いテンポで攻めてくれたらさらにエキサイティングだっただろう。
とはいえ、ロシアロシアさせないところが彼らしくもある。
決してひ弱な演奏ではなかったし、聴きごたえは十分にあった。
(画像はこちらのページよりお借りしました)
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