NHK交響楽団
第1951回定期公演 Aプログラム
※ライブストリーミング配信
【日時】
2020年11月14日(土) 開演 18:00 (開場 17:00)
【会場】
NHKホール (東京)
【演奏】
指揮:熊倉優
ピアノ:藤田真央 *
管弦楽:NHK交響楽団
(コンサートマスター:白井圭)
【プログラム】
メンデルスゾーン:序曲「フィンガルの洞窟」作品26
シューマン:ピアノ協奏曲 イ短調 作品54 *
バッハ(レーガー編):コラール前奏曲「おお人よ、おまえの罪に泣け」BWV622
メンデルスゾーン:交響曲 第4番 イ長調 作品90「イタリア」
※アンコール(ソリスト) *
シマノフスキ:練習曲 変ロ短調 Op.4-3
N響の定期演奏会がNHK-FMでラジオ放送されたため、視聴した。
ソリストとして好きなピアニスト、藤田真央が出演するからである(下記リブログ元の記事参照)。
指揮は、1992年東京生まれの若き俊英、熊倉優。
最初の曲は、メンデルスゾーンの序曲「フィンガルの洞窟」。
この曲で私の好きな録音は
●フルトヴェングラー指揮 ベルリン・フィル 1930年セッション盤(CD)
●フルトヴェングラー指揮 ウィーン・フィル 1949年2月15日セッション盤(NML/Apple Music/CD)
●ティーレマン指揮 ウィーン・フィル 2002年11月セッション盤(NML/Apple Music/CD)
●ガードナー指揮 バーミンガム市響 2013年10月20,21日セッション盤(NML/Apple Music/CD)
あたりである。
いずれもずっしりとした重みとコクのある名盤。
今回の熊倉優&N響の演奏は、これらよりもずっとすっきりした音色なのだが、ずっしりした味を出そうとしてか上記のどの盤よりも遅いテンポを採っており、それが音色とあまりマッチしていない印象。
また、単に遅いだけでなく、第2主題に入る直前で大きなタメを入れたり、コデッタ(小結尾)では逆にテンポを上げたりと変化が多く、それがどうも刹那的で、上記の手練れの名匠たち(特に「推移の達人」と謳われたフルトヴェングラー)と比べてしまうとうまくいっていない。
とはいえ、この曲のドラマ性を表現しようとする意欲は感じられた。
次の曲は、シューマンのピアノ協奏曲。
この曲で私の好きな録音は
●リヒテル(Pf) ロヴィツキ指揮 ワルシャワ・フィル 1958年10月セッション盤(NML/Apple Music/CD)
●ポリーニ(Pf) カラヤン指揮 ウィーン・フィル 1974年ザルツブルクライヴ盤(Apple Music/CD)
●小林愛実(Pf) 田中祐子 指揮 読響 2017年2月28日川崎ライヴ動画(その記事はこちら)
あたりである。
また、昨年(2019年)に聴いたクレア・フアンチの実演も忘れられない(その記事はこちら)。
今回の藤田真央の演奏は、これらに完全に匹敵する最高の名演だった(むしろ技巧的洗練の点では上の名盤たちを上回るほど)。
端正で力強いリヒテルやポリーニ、甘美でメランコリックな小林愛実よりは、どれかというと、明朗で爽やかなフアンチに近いアプローチ。
ただ、からりとしたフアンチに対し、藤田真央は同じくらい軽やかでありながらもよりしっとりとロマン的。
クララとの新婚の幸福な時期に書かれたこの曲には、最もふさわしい演奏かもしれない。
第1楽章の第2主題部など、主要主題に寄り添うように奏されるアルペッジョ音型や内声のメロディが、一つ一つごまかしなく明快に鳴らされ、なおかつ余すところなく丁寧に情感を込められ、何とも美しい。
一点、カデンツァでの和音のゼクエンツ(反復進行)に少しタメを入れつつ軽めに弾いていたが、ここはもっとバッハ風のストレートな感じ、およびクライマックス風のアジタートな(激した)感じを出してほしかった。
とはいえ、彼のやり方も悪くはないし、またそれ以外の箇所では全くと言っていいほど不満を感じなかった。
第2、3楽章も軽快、洒脱、細やか、ロマンティックで言うことなし。
叶うことなら生で聴きたかったが、配信で聴けただけでも嬉しい(録音が販売されないものだろうか)。
休憩をはさんで、後半の最初の曲はバッハ/レーガーのコラール前奏曲「おお人よ、おまえの罪に泣け」。
この曲は放送を聴き逃してしまった。
最後の曲は、メンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」。
この曲で私の好きな録音は
●アバド指揮 ベルリン・フィル 1995年12月31日ベルリンライヴ盤(Apple Music/CD)
●ガーディナー指揮 ウィーン・フィル 1997年11月セッション盤(NML/Apple Music/CD)
●ネゼ=セガン指揮 ヨーロッパ室内管 2016年2月20-22日パリライヴ盤(NML/Apple Music/CD)
あたりである。
今回の熊倉優&N響の演奏は、これら3盤ほどの洗練はないにしても、若いメンデルスゾーンらしい素直な感じが出ていて悪くない。
最初の「フィンガルの洞窟」と異なり、そのすっきりした音色にふさわしい快速テンポを採っており、無闇なテンポ変化もみられなかった。
(画像はこちらのページよりお借りしました)
↑ ブログランキングに参加しています。もしよろしければ、クリックお願いいたします。