関西フィルハーモニー管弦楽団
第13回城陽定期演奏会
【日時】
2023年8月20日(日) 開演 14:00
【会場】
文化パルク城陽 プラムホール (京都府)
【演奏】
指揮:藤岡幸夫
ピアノ:亀井聖矢 *
管弦楽:関西フィルハーモニー管弦楽団
(コンサートマスター:木村悦子)
【プログラム】
J.S.バッハ:管弦楽組曲 第3番 ニ長調 BWV1068 より アリア
プロコフィエフ:ピアノ協奏曲 第2番 ト短調 作品16 *
ベートーヴェン:交響曲 第7番 イ長調 作品92
※アンコール(ソリスト) *
リスト:パガニーニによる大練習曲 より 第3曲 嬰ト短調 「ラ・カンパネラ」
※アンコール(オーケストラ)
ロンドンデリーの歌(管弦楽版)
関西フィルの城陽定期演奏会を聴きに行った。
指揮は、1962年東京生まれで2007年より関西フィルの首席指揮者を務める、藤岡幸夫。
好きな指揮者の一人であり、城陽定期もこれまで何度か聴いた。
ソリストは、2001年愛知県一宮市生まれ、2022年ロン=ティボー国際コンクール優勝のピアニスト、亀井聖矢。
好きなピアニストの一人だが、彼の実演を聴くのは今回が初めて。
まず最初に、バッハの「G線上のアリア」が奏された。
拍手なしの、追悼の演奏。
その後が、プログラムの本編である。
前半の曲は、プロコフィエフのピアノ協奏曲第2番。
この曲で私の好きな録音は
●ヴィニツカヤ(Pf) G.ヴァルガ指揮 ベルリン・ドイツ響 2010年4月セッション盤(NML/Apple Music/CD)
●A.カントロフ(Pf) ラザレフ指揮 ロシア国立青年響 2021年3月15日モスクワライヴ(動画)
●務川慧悟(Pf) H.ウルフ指揮 ベルギー国立管 2021年5月26日エリザベートコンクールライヴ(動画)
●ダヴィチェンコ(Pf) A.ルービン指揮 スヴェトラーノフ記念ロシア国立響 2023年6月27日チャイコフスキーコンクールライヴ(動画) ※5:02:45-
あたりである。
ヴィニツカヤとダヴィチェンコは、パワー・キレ・完成度と三拍子揃った、この曲の規範ともいうべき演奏。
カントロフと務川慧悟は、独自の表現力で勝負する演奏で、カントロフは動的な、務川慧悟は静的な情熱をそれぞれ孕んでいる。
そして、今回の亀井聖矢の演奏も、これらに匹敵するものだった。
とにかく情熱的で、タイプとしては上記のカントロフに近いが、表現の激しさはそれ以上。
特に第1、3楽章がものすごく、たぎるような若きパッションの全てを曲にぶつけていて、これまでの彼のスマートなイメージを塗りかえるほど。
それでいて、どれだけ激烈な表現をしても、いわゆる爆演のように音が荒れたり硬くなったりすることはなく、細部までしっかり配慮の行き届いた丁寧な演奏となっていた。
丁寧な分、第2、4楽章は落ち着いたテンポを採っていた。
もしも彼の情熱や丁寧さに加え、ヴィニツカヤやダヴィチェンコのようなトップスピードでの最高度のキレがあったなら、唯一無二の絶対的名演となっていただろう(彼ならばいつか実現してくれる気もする)。
また第4楽章の主要主題では、フォルテ(強音)とピアノ(弱音)の対比をほとんど付けず、全てフォルテにして、ペダルの深さによってアーティキュレーションの対比のみ付けるという、独自の解釈をしていた。
全体的にも、弱音で一休みするような箇所はあまりなく、常に全力投球した熱演だった。
上記カントロフの演奏ではラザレフの強力な指揮がかなり寄与しているのと同様に、今回の亀井聖矢の熱演には、藤岡幸夫の力強くも引き締まった指揮が果たした役割も大きかった。
これほどエキサイティングなプロコフィエフ協奏曲第2番が聴けることは、めったにないだろう。
終演後、亀井聖矢と藤岡幸夫は抱き合って健闘を称え合っていたし、聴衆の熱狂ぶりもすごかった。
後半の曲は、ベートーヴェンの交響曲第7番。
この曲で私の好きな録音は
●トスカニーニ指揮 ニューヨーク・フィル 1936年4月9,10日セッション盤(CD)
●フルトヴェングラー指揮 ウィーン・フィル 1950年1月18,19日セッション盤(NML/Apple Music/CD/YouTube1/2/3/4)
●C.クライバー指揮 バイエルン国立管 1982年5月3日ミュンヘンライヴ盤(NML/CD/YouTube1/2/3/4)
●カラヤン指揮 ベルリン・フィル 1983年12月1-3、5日セッション盤(NML/Apple Music/CD/YouTube1/2/3/4)
●西本智実指揮 ロイヤル・フィル 2009年9月22日東京ライヴ盤(CD)
あたりである。
重量感のある中から、じわじわと熱狂を生み出していくような演奏が好み。
今回の藤岡幸夫&関西フィルは、これらほどの重量感はなかったけれど(シベリウスやヴォーン・ウィリアムズを得意とする彼は低弦など少し優しめ)、それでも軽い演奏では決してなく、想像した以上にこの曲らしい熱狂があった。
演奏前の「前半の亀井くんに負けない演奏でベートーヴェンのすごさを伝えたい」との言葉通り、20世紀のプロコフィエフとはまた違った19世紀なりのベートーヴェンの破天荒な音楽を、しっかり堪能させてくれた。
(画像はこちらのページよりお借りしました)
↑ ブログランキングに参加しています。もしよろしければ、クリックお願いいたします。