びわ湖の春音楽祭2023 ~ウィーンの風~ 30-2-S
【日時】
2023年4月30日(日) 開演 11:45
【会場】
びわ湖ホール 小ホール (滋賀県)
【演奏】
山内利一(締太鼓、津軽三味線、小鼓)
菊武粧子(箏)
井本蝶山(尺八)
【プログラム】
獅子(締太鼓)
六段の調(箏、尺八)
鶴の巣籠(尺八)
津軽じょんがら節(津軽三味線)
春の海(箏、尺八、小鼓)
びわ湖ホールで開催された、びわ湖の春音楽祭を聴きに行った。
二公演聴いたのだが、その一つ目がこちら。
専ら西洋音楽からなる当音楽祭としては異色な、邦楽のコンサートである。
奏者の山内利一、菊武粧子、井本蝶山は、私は今回初めて聴いた。
最初のプログラムは「獅子」という曲で、歌舞伎で獅子が舞うときに囃子で演奏するものを、今回は締太鼓のみで演奏したとのこと。
太鼓の音と掛け声とが次々畳みかけられ、たった一人の演奏なのに(しかも音程変化のない楽器)、確かに獅子らしい迫力が感じられた。
次のプログラムは、八橋検校の「六段の調」。
この曲で私の好きな録音は
●宮城道雄(箏) 1930年5月以前セッション盤(Apple Music/CD/YouTube)
●宮城道雄(箏) 1938年4月21日セッション盤(音源1/2)
●宮城道雄(箏) 1947年1月以前セッション盤(音源1/2)
●柳井美加奈(箏) 2001年4月以前セッション盤(Apple Music/YouTube)
あたりである。
何とも流麗で滑らか、ロマン的な宮城道雄と、もっとずっと遅いテンポによる、まったりとバロック風な柳井美加奈。
この曲は八橋検校以降、後代の色々な人の手が加わって現在の形になったというが、そうして完成されたこの曲の19世紀的華やかさを堪能したいときには宮城道雄盤を、逆に原曲の17世紀的素朴さの面影を偲びたいときには柳井美加奈盤を、私は聴くことが多い。
そして、今回の菊武粧子&井本蝶山の演奏は、後者に近いアプローチだった。
上記名盤と比べるとやや生硬には感じたが、やっぱり生で聴く箏の弦の響きは美しいし、尺八との共演なのも華やか。
次のプログラムは、「鶴の巣籠」(都山流)。
この曲で私の好きな録音は
●初代星田一山、原都雨山(尺八) 1967年以前セッション盤(Apple Music/YouTube)
あたりである。
今回の井本蝶山の演奏は、この名盤ほどの朗々たる音は聴かれないものの、派手でない淡々とした良さがあったし、“首振り三年ころ八年”でいうところの“首振り”や“ころ”が実際に見られて、視覚的にも興味深かった。
次のプログラムは、津軽じょんがら節。
津軽三味線の中でもおそらく有名曲で、何かと耳にする機会はあるように思うが、これまであまりしっかり聴いてはこなかった。
今回の山内利一の演奏を聴いてみると、なかなかにかっこいい。
他のプログラムが皆かっちりしたいわゆる“三曲”であるのに対して、津軽三味線は民謡をベースにした即興演奏であり、音階も異なっていて(三曲は陰音階だが津軽三味線は陽音階)、いわばクラシック音楽とポピュラー音楽くらいの大きな違いがある。
日本版のロックギター、とでも言いたいかっこよさ(実際にロックからの影響も少なからずあるのではないか)。
しばしばバチを叩き鳴らすのも、ドラムのような効果がある(一人二役といったところか)。
この日聴いた各演奏の中で、最も印象に残った。
最後のプログラムは、宮城道雄の「春の海」。
この曲で私の好きな録音は
●宮城道雄(箏) 吉田清風(尺八) 1930年セッション盤(Apple Music/CD/YouTube)
あたりである。
この曲は作曲者本人による自作自演、それも初演メンバーによる録音が残され、これがまたたおやかで情景描写的、印象派風とも言いたい名演となっていて、これに比肩する演奏にはなかなか出会えない。
今回の菊武粧子&井本蝶山&山内利一の演奏も、これに比べるとどうしても流麗さに不足を感じてしまうが、今回は小鼓が加わった珍しいバージョンということで、どことなく目出度い雰囲気になったのは面白かった。
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