牛田智大 オール・ショパン ピアノ・リサイタル
【日時】
2022年3月12日(土) 開演 14:00
【会場】
ザ・シンフォニーホール (大阪)
【演奏】
ピアノ:牛田智大
【プログラム】
ショパン:ノクターン 第8番 変ニ長調 op.27-2
ショパン:バラード 第4番 ヘ短調 op.52
ショパン:舟歌 嬰ヘ長調 op.60
ショパン:ポロネーズ 第6番 変イ長調 op.53 「英雄」
ショパン:3つのマズルカ op.56
ショパン:マズルカ ヘ短調 op.68-4 「遺作」
ショパン:幻想曲 ヘ短調 op.49
ショパン:ポロネーズ 第7番 変イ長調 op.61 「幻想」
※アンコール
リスト:コンソレーション S.172 より 第3番 変ニ長調
リスト:愛の夢 S.541 より 第3番 変イ長調
シューマン/リスト:献呈 S.566
先日のショパンコンクール(その記事はこちらなど)で見事な演奏を聴かせてくれたピアニスト、牛田智大のコンサートを聴きに行った。
オール・ショパン・プログラムである。
ショパンのこれらの曲で私の好きな録音は
【ノクターン第8番】
●ポリーニ(Pf) 1968年4月17-21日、7月1-3日セッション盤(NML/Apple Music/CD/YouTube)
●バレンボイム(Pf) 2010年2月28日ワルシャワライヴ盤(NML/Apple Music/DVD/YouTube)
●プーン(Pf) 2015年4月19日ショパンコンクールライヴ(動画) ※2:11~
●牛田智大(Pf) 2021年10月4日ショパンコンクールライヴ(動画)
●今井理子(Pf) 2021年10月6日ショパンコンクールライヴ(動画) ※7:09~
【バラード第4番】
●中川真耶加(Pf) 2015年10月11日ショパンコンクールライヴ(動画)
●牛田智大(Pf) 2021年10月10日ショパンコンクールライヴ(動画) ※4:42~
【舟歌】
●藤田真央(Pf) 2020年6月29日東京収録(動画) ※30:40~
●牛田智大(Pf) 2021年10月10日ショパンコンクールライヴ(動画) ※16:23~
【英雄ポロネーズ】
●A.シュミット(Pf) 1974年11月セッション盤(CD)
●山本貴志(Pf) 2005年10月ショパンコンクールライヴ盤(CD)
●チョ・ソンジン(Pf) 2015年10月9日ショパンコンクールライヴ盤(NML/Apple Music/CD/YouTube)
●角野隼斗(Pf) 2021年10月10日ショパンコンクールライヴ(動画) ※22:30~
●反田恭平(Pf) 2021年10月14日ショパンコンクールライヴ(動画)
【3つのマズルカ op.56】
●ケイト・リウ(Pf) 2015年10月15日ショパンコンクールライヴ盤(Apple Music/CD/YouTube1/2/3)
●古海行子(Pf) 2020年1月13日ショパンコンクール in Asiaライヴ盤(その記事はこちら)
●ネーリング(Pf) 2021年10月14日ショパンコンクールライヴ(動画) ※32:07~
●反田恭平(Pf) 2021年10月14日ショパンコンクールライヴ(動画1/2/3)
【幻想曲】
●バレンボイム(Pf) 2010年2月28日ワルシャワライヴ盤(NML/Apple Music/DVD/YouTube)
●Liya WANG (Pf) 2021年7月21日ショパンコンクールライヴ(動画) ※57:54~
●Zitong WANG (Pf) 2021年7月21日ショパンコンクールライヴ(動画) ※2:00:18~
●牛田智大(Pf) 2021年10月4日ショパンコンクールライヴ(動画) ※12:09~
●J J Jun Li BUI (Pf) 2021年10月10日ショパンコンクールライヴ(動画)
【幻想ポロネーズ】
●江尻南美(Pf) 2009年頃セッション盤(Apple Music/CD/YouTube)
●フアンチ(Pf) 2010年10月14日ショパンコンクールライヴ(動画)
●コン・チー(Pf) 2017年4月29日ルービンシュタインコンクールライヴ(動画)
●深見まどか(Pf) 2017年5月25日クライバーンコンクールライヴ(動画) ※37:35~
●キム・ユンジ(Pf) 2018年9月6日リーズコンクールライヴ(動画) ※16:13~
●古海行子(Pf) 2021年10月11日ショパンコンクールライヴ(動画) ※11:30~
あたりである(なおマズルカop.68-4はまだ好きな録音を見つけていない)。
このように、牛田智大の先日のショパンコンクールでの演奏が大変素晴らしく、各曲のお気に入りの演奏に組み込まれたのだった。
そして今回の彼の演奏は、ショパンコンクールのときと大きくは変わらない解釈だが、よりのびのびとくつろいだ感じのするものだった。
これはこれで素晴らしかったが、強音の出し方や旋律の歌わせ方がおとなしく、全体にやや薄味のようにも感じた。
ショパンコンクールの、あの特別な緊張感の中での彼の鬼気迫る演奏が、私は好きである。
あるいは、ショパンコンクールのときに彼がツイッターで、音量を出しすぎたとか、左右の手のずらしを多用しすぎたとかいった自己分析をしていたが、その濃いめの味付けが私の好みには合うのかもしれない(バラード第4番の序奏や主要主題など情感が溢れんばかりで、これを聴くと他が物足りなくなる)。
もしくは、私の座ったサイド席への音の通りが悪かったのもあるか。
それでも、ストイックな彼らしく過度の華やかさを避けた、上質の慎ましい歌が全篇にわたって聴かれた。
今回の演奏曲の中では、ショパンコンクールで演奏されなかったマズルカop.56が特に印象的で、彼がプログラムノートに書いたようなショパンの“パーソナルな心の情景”が細やかに表現され、上記の名盤たちにも並ぶ出来だった。
このプログラムノートにはそのほか、ショパンの幻想曲op.49がベルリオーズの「葬送と勝利の大交響曲」から影響を受けたことや、幻想ポロネーズが“ポロネーズ”というよりもむしろop.49と対をなすような“幻想曲”であることなど、牛田智大ならではの視点が多く盛り込まれていて興味深い。
後期作品を中心とした今回の選曲や、曲間をアタッカでつなぐやり方にも、彼のこだわりを感じた。
アンコールでいずれも有名曲を選んでいることや、終演後のトークの内容がシリアスであること(昨今のウクライナ情勢や、10年前の彼のデビューの少し前に起きた震災に鑑みての、音楽にできることやなすべきことについての省察)、こうした点が同世代のピアニスト藤田真央と好対照をなしていて、彼のキャラクターがよくわかるコンサートだった。
(画像はこちらのページよりお借りしました)
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