「R.シューマン」 室内楽全集 VOL.2
- 2つのピアノ四重奏曲 -
※ライブストリーミング配信
【日時】
2022年1月31日(月) 開演 20:00
2022年2月1日(火) 開演 20:00
【会場】
カフェ・モンタージュ (京都)
【演奏】
ピアノ:島田彩乃
ヴァイオリン:上里はな子
ヴィオラ:坂口弦太郎
チェロ:江口心一
【プログラム】
シューマン:ピアノ四重奏曲 ハ短調 (1829)
シューマン:ピアノ四重奏曲 変ホ長調 op.47
下記リブログ元の記事に書いた前回公演に引き続き、カフェ・モンタージュ主催のシューマン室内楽全曲演奏会シリーズをオンライン配信で聴いた。
今回は同シリーズの第2回である。
前半のプログラムは、シューマンのピアノ四重奏曲 ハ短調。
18歳の若きシューマンによって書かれたが、未完のまま残された。
補筆版としては短いベッティヒャー版と長いドラハイム版があり、今回演奏されたのはおそらく後者。
少し後に書かれた「ツヴィッカウ交響曲」にも似た、若い情熱がほとばしるダイナミックな作品となっている。
ベートーヴェンのピアノ三重奏曲 ハ短調、ショパンのピアノ三重奏曲 ト短調、ブラームスのピアノ四重奏曲 ト短調、これらはいずれも若い頃に書かれた情熱的な曲でありながらまとまりが良いのに対して、シューマンのこの曲は、情熱が枠からはみ出すようなところがある。
欠点といえば欠点かもしれないが(それでシューマンもこの曲を世に問うことを避けたのかもしれない)、逆に魅力でもある。
特に、上里はな子らによるスケールの大きな演奏で聴くと、実はこの半世紀後に若きヴォルフかマーラーかR.シュトラウスによって書かれた後期ロマン派の曲なのでは、と錯覚しそうな瞬間さえあった。
後半のプログラムは、シューマンのピアノ四重奏曲 変ホ長調。
先ほどの曲から年月が経ち、32歳の脂ののったシューマンが書いた、言わずと知れた傑作である。
この曲にはもはや“はみ出し”はなく、楽想と形式とがうまくバランスをとった、円熟の筆致となっている。
この曲は、同じく上里はな子による名演を昨年にも聴いた(その記事はこちら)。
そのときのメンバーは、上里はな子、前山杏、上森祥平、岸本雅美。
モーツァルト風の軽やかな岸本雅美のピアノ、分厚くて豪快な上森祥平のチェロ、といったように、各々異なる個性を持つ4人による“競演”といった印象だった。
それに対し今回は、ベートーヴェン風の肉厚な島田彩乃のピアノといい、重々しくも端正な江口心一のチェロといい、各人の音楽性が上里はな子に近しい。
似た者4人が一丸となって作り上げた“協演”となっている。
どちらの演奏も素晴らしく、甲乙つけがたいが、あえてどちらか選ぶならば、息の合った4人による今回の演奏か。
この曲には、前回の記事にも書いたように(その記事はこちら)、フェスティヴァル四重奏団による名盤がある。
1930年頃の黄金時代のベルリン・フィル(その記事はこちら)のメンバーで、名指揮者フルトヴェングラーの信頼も厚かったコンサートマスターのシモン・ゴールドベルクと首席チェロ奏者のニコライ・グラウダン、この2人にヴィオラのウィリアム・プリムローズとピアノのヴィクター・バビンが加わり戦後にアメリカで結成された、伝説のピアノ四重奏団である。
フェスティヴァル四重奏団によるこの曲の第1楽章展開部から再現部にかけての盛り上がり、また終楽章コーダのフガートの充実ぶり、これらはそれこそフルトヴェングラーを思わせるものがある。
上里はな子はそのゴールドベルクにかつて師事したそうだが、今回師匠に匹敵するといっても過言でない、4人が渾然一体となった“燃える演奏”を実現していた。
こういうタイプの名演が聴けるのが、今やドイツでもアメリカでもなく日本であるということが、何とも感慨深い。
カフェ・モンタージュによるシューマンの室内楽全曲演奏会シリーズ、第1回はピアノ三重奏、第2回はピアノ四重奏ときたが、第3回はピアノ五重奏のよう。
引き続き楽しみである。
(画像はこちらのページよりお借りしました)
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