岸本雅美 上里はな子 前山杏 上森祥平 京都公演 シューマン ピアノ四重奏曲 ほか | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

「ピアノ四重奏 シューマン&フォーレ」

※ライブストリーミング配信

 

【日時】

2021年6月13日(日) 開演 19:00

 

【会場】

カフェ・モンタージュ (京都)

 

【演奏】

ピアノ:岸本雅美

ヴァイオリン:上里はな子

ヴィオラ:前山杏

チェロ:上森祥平

 

【プログラム】

フォーレ:ピアノ四重奏曲 第1番 ハ短調 op.15

シューマン:ピアノ四重奏曲 変ホ長調 op.47

 

 

 

 

 

下記リブログ元の記事に書いた前回公演に引き続き、カフェ・モンタージュのオンラインコンサート配信を聴いた。

上里はな子らによるピアノ四重奏曲の夕べである。

 

 

 

 

 

前半のプログラムは、フォーレのピアノ四重奏曲第1番。

この曲で私の好きな録音は

 

●ル・サージュ(Pf) 樫本大進(Vn) ベルトー(Va) サルク(Vc) 2011年3月セッション盤(NMLApple MusicCDYouTube

●マリアーニ・ピアノ四重奏団 2016年8月16-20日セッション盤(NMLApple MusicCDYouTube

※YouTube視聴不可の場合はこちら → https://www.youtube.com/watch?v=cKpPiJ-QKrs&list=OLAK5uy_l9R-1ycSxN6M5lCkTesVWHtoDOa2nzPyM

 

あたりである。

 

 

今回の上里はな子らの演奏は、あまりにも高度に洗練されたこれら2盤には及ばないにしても、かなりの名演だったように思う。

ピアノをいつもの松本和将でなく岸本雅美が担当することで、ドイツらしさが薄まり、フォーレのイメージにより近い演奏となったのではないだろうか(逆にブラームスなどでは松本和将がぴったり合う)。

とはいってもそこはやはり上里はな子主導だけあって、線の細いものではなく、ブラームスからの影響を感じさせるような、土台のしっかりした演奏となった。

 

 

 

 

 

後半のプログラムは、シューマンのピアノ四重奏曲。

この曲で私の好きな録音は

 

●フェスティヴァル四重奏団 1958年セッション盤(Apple MusicCDYouTube

●アレクサンドル・メルニコフ(Pf) エルサレム四重奏団員 2011年7月セッション盤(NMLApple MusicCDYouTube

●マリアーニ・ピアノ四重奏団 2012年10月11-14日セッション盤(Apple MusicCDYouTube

●マイボローダ(Pf) 玉井菜採(Vn) 大野かおる(Va) 河野文昭(Vc) 2018年3月21日高松コンクールライヴ(動画) ※動画の18:50~

 

あたりである。

 

 

引き締まったドイツの演奏の系譜であるフェスティヴァルとマリアーニ、ロマン的に広がるロシアの演奏の系譜であるメルニコフとマイボローダ。

今回の上里はな子らの演奏は、前者のドイツの系譜、それも現代的なマリアーニよりは往年の温かみのあるフェスティヴァルに近いものを感じさせ、その素晴らしさはもはや上の各名盤に引けを取らないと言っていいように思う。

 

 

先ほどのフォーレに続き岸本雅美のピアノが好調で、カフェ・モンタージュの1905年製ニューヨーク・スタインウェイ(上記メルニコフ盤で使用されている1875年製ベーゼンドルファーよりも鄙びた古雅な音がする)を駆使しつつ、この曲にふさわしい優美な情感を表現する。

上里はな子以下3人の弦ももちろん盤石で、軽々しさのない落ち着いた音楽を聴かせる(特に上里はな子は音楽性のみならず音程やフレージングまで実によく安定していて揺るぎがない)。

このピアノにこの弦、この「古き佳きドイツ」のシューマンは、今やドイツに行っても聴けないだろう(上記マリアーニ四重奏団のような現代ドイツの洗練ももちろん好きではあるのだが)。

うかうかしていてチケットが完売になり入手できなかったことが悔やまれる(こうしてネット配信で聴けるだけでもありがたいのだが)。

 

 

余談だが、フェスティヴァル四重奏団のヴァイオリン奏者シモン・ゴールドベルクは、上里はな子のヴァイオリンの師である。

60年以上の時を経て、師弟によって同曲で名演が繰り広げられる、それも師の音楽性が弟子へと確実に受け継がれているのを聴くのは、大変に感慨深いものがある。

 

 

 

(画像はこちらのページよりお借りしました)

 

 

 

 


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