今回は演奏会の感想ではなく、別の話題を。
好きなバリトン歌手のマティアス・ゲルネと、好きなピアニストのチョ・ソンジンが共演した新譜が発売された(Apple Music/CD)。
曲目は、ヴァーグナーのヴェーゼンドンク歌曲集、プフィッツナーの歌曲集、R.シュトラウスの歌曲集である。
詳細は以下の通り。
現代最高のバリトン歌手ゲルネがDGの才能あふれる若きピアニストと進める
ドイツ・リート録音 第2弾!
現代最高のバリトン歌手の一人で、シュヴァルツコップとフィッシャー=ディースカウというドイツ・リートの双璧の遺伝子を継ぐドイツ・リートの第一人者といえるマティアス・ゲルネ。円熟を迎えた彼が、キャリアの総決算としてドイツ・グラモフォンの才能あふれる若きピアニストとのコラボレーションでドイツ・リートを録音する画期的なシリーズ第2弾。前作はピアニストにヤン・リシエツキが抜擢され、生誕250年を祝うベートーヴェンの作品をリリースして大きな反響を呼びました。
今作はチョ・ソンジンとのコラボレーションで、ワーグナー、プフィッツナー、リヒャルト・シュトラウスの後期ロマン派歌曲を収録し、聴き手の心の奥深くに響く歌唱を聴かせます。(輸入元情報)
【収録情報】
ワーグナー:
● ヴェーゼンドンク歌曲集 WWV 91(天使/とまれ/温室にて/悩み/夢)
プフィッツナー:
● あこがれ Op.10-1
● 水の旅 Op.6-6
● 沈みゆく太陽の光を浴びるように Op.4-1
● だから春の空はそんなに青いの? Op.2-2
● マルクに寄す Op.15-3
● 夕映え Op.24-4
● 夜 Op.26-2
● 憧れの声 Op.19-6
R.シュトラウス:
● たそがれの夢 Op.29-1
● あした Op.27-4
● 憩え、わが魂 Op.27-1
● 親しき幻 Op.48-1
● 夕映えの中で(4つの最後の歌より)
マティアス・ゲルネ(バリトン)
チョ・ソンジン(ピアノ)
録音時期:2019年
録音場所:ベルリン、テルデック・スタジオ
録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)
以上、HMVのサイトより引用した(引用元のページはこちら)。
最初の曲、ヴァーグナー「ヴェーゼンドンク歌曲集」で私の好きな録音は、ピアノ伴奏版なら
●ロッテ・レーマン(Sop) ウラノフスキ(Pf) 1941年7月2,9日セッション盤(NML/Apple Music) ※第2曲なし
●フラグスタート(Sop) ムーア(Pf) 1948年5月25,26日セッション盤(NML/Apple Music/CD)
●フラグスタート(Sop) ワルター(Pf) 1952年3月23日ニューヨークライヴ盤(NML/Apple Music)
●プレガルディエン(Ten) ゲース(Pf) 2018年セッション盤(Apple Music/CD)
あたり、オーケストラ伴奏版なら
●ファーレル(Sop) ストコフスキー指揮 交響楽団 1947年12月30日セッション盤(CD)
●フラグスタート(Sop) C.クラウス指揮 ハバナ・フィル 1948年10月24日ハバナライヴ盤(NML/Apple Music/CD)
●ヴァルナイ(Sop) L.ルートヴィヒ指揮 バイエルン放送響 1955年6月5,9日セッション盤(NML/Apple Music/CD)
●メードル(Sop) カイルベルト指揮 ケルン放送響 1955年10月7日セッション盤(NML/Apple Music/CD)
●フラグスタート(Sop) クナッパーツブッシュ指揮 ウィーン・フィル 1956年5月13-15日セッション盤(NML/Apple Music/CD)
●ファーレル(Sop) バーンスタイン指揮 ニューヨーク・フィル 1961年9月30日セッション盤(Apple Music/CD)
●ニルソン(Sop) C.デイヴィス指揮 ロンドン響 1971年7月セッション盤(NML/Apple Music/CD)
●コロ(Ten) ティーレマン指揮 ベルリン・ドイツ・オペラ管 1992年11月セッション盤(NML/Apple Music)
あたりである。
ヴァーグナーとなるとつい往年の名歌手ばかり聴いてしまうが、今回のゲルネの歌はヴァーグナーらしいというよりもリートらしい繊細な渋い味わいが特徴で、これは往年の歌手たちにないものである。
こういうアプローチも大変良い。
ピアノのチョ・ソンジンもさらりとした味がゲルネの歌に合っていて悪くないのだが、終曲の連綿と続く和音連打など、上に挙げた巨匠ブルーノ・ワルターのあまりにも甘美な演奏を聴くと、やはりこうでなければとも思ってしまう。
本来打楽器であるピアノの和音連打からここまでのロマン性を引き出すとは、巨匠の巨匠たる所以だろうか。
「トリスタンとイゾルデ」のあの甘美な二重唱の習作であるこの終曲には、大変ふさわしい。
続くプフィッツナーやR.シュトラウスの各歌曲も同様。
R.シュトラウスの有名な「あした」op.27-4も、チョ・ソンジンはさらりとセンス良く弾いているが、歌曲ピアニストとして名高いジェフリー・パーソンズやダルトン・ボールドウィンと比べるとあっさりしており、もう少し濃厚なロマンティシズムが欲しくなる。
ただ、ゲルネの音楽性には合っているかもしれないのと、あとドイツ・グラモフォンの音質のせいもあるかもしれない(ショパンのコンチェルト第1番の録音など特にイマイチだった)。
この「あした」、ぜひ実演で聴いてみたいものである。
Wagner: Wesendonck Lieder, WWV 91 - I. Der Engel - YouTube
なお、チョ・ソンジンのこれまでのCDについての記事はこちら。
(チョ・ソンジンの新譜 モーツァルト ピアノ協奏曲第20番 ピアノ・ソナタ第3、12番)
(チョ・ソンジンの新譜 シューベルト さすらい人幻想曲 ベルク リスト ピアノ・ソナタ)
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