藤田真央 ピアノリサイタル
※ライブストリーミング配信
【日時】
2020年9月19日(土) 開演 14:00
【会場】
東京オペラシティコンサートホール
【演奏】
ピアノ:藤田真央
【プログラム】
モーツァルト:ピアノソナタ第7番 ハ長調 K.309
チャイコフスキー:ロマンス ヘ短調 op.5
チャイコフスキー:ドゥムカ -ロシアの農村風景- ハ短調 op.59
アルカン:「短調による12の練習曲」 から “イソップの饗宴” ホ短調 op.39-12
ショパン:幻想曲 ヘ短調 op.49
ショパン:ポロネーズ 第7番 「幻想」 変イ長調 op.61
ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ ト長調
ラヴェル:ラ・ヴァルス ニ長調
※アンコール
クライスラー/ラフマニノフ:愛の悲しみ
ショパン:ノクターン 第10番 変イ長調 op.32-2
下記リブログ元の記事に書いた藤田真央のピアノリサイタルとは一部プログラムの異なる、彼の別公演のオンライン配信(有料)を聴いた。
最初の曲は、モーツァルトのピアノ・ソナタ第7番。
この曲で私の好きな録音は
●ヘブラー(Pf) 1964年12月セッション盤(Apple Music/CD)
●ピリス(Pf) 1974年1-2月セッション盤(Apple Music/CD)
●シフ(Pf) 1980年セッション盤(Apple Music/CD)
●ブラックショウ(Pf) 2013年1月5日ロンドンライヴ盤(Apple Music/CD)
あたりである。
今回の藤田真央は、これらの「モーツァルトのハ長調」らしいカラリとした演奏とはまた違った、横に流れるような優雅なロマン的解釈。
例えばソナタ第12番では彼のロマン性が曲にぴったり合う(その記事はこちら)のに対し、今回のソナタ第7番では曲のイメージと少し異なる面もあるものの、これはこれで面白い。
それに、彼ほどにタッチの粒がよく揃い、またあらゆるパッセージが歌に満ちた演奏は、上記の名盤にもないほどである。
チャイコフスキー、アルカン、ショパンについては、下記リブログ元の記事に書いたためここでは省略する。
次の曲は、ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」。
この有名な曲はあちこちで耳にすることもあってか、かえって録音をあまり聴き比べてこなかったが、今回の藤田真央の演奏はこれまで聴いたことがないほどにデリケートでロマンティック。
見慣れた人が装いを変えてぱっと見違えるような感覚を覚えた。
最後の曲は、ラヴェルの「ラ・ヴァルス」(ピアノ・ソロ版)。
この曲で私の好きな録音は
●チョ・ソンジン(Pf) 2012年8月8日ドゥシニキ=ズドゥルイライヴ(音源)
●EunSeong Kim(Pf) 2015年7月JoongAngコンクールライヴ(動画)
●マイボローダ(Pf) 2015年11月25日浜コンライヴ盤(CD)
●プーン(Pf) 2017年4月27日ルービンシュタインコンクールライヴ(動画)
あたりである。
洒脱なセンスのチョ・ソンジン、華麗なオクターヴグリッサンドや小指グリッサンドが圧巻のEunSeong Kim、驚くべき広大なスケールを持つマイボローダ、ロマン的でたおやかなプーン。
今回の藤田真央は、この中ではチョ・ソンジンに近い演奏だった。
チョ・ソンジンよりもタメが多く、またフォルテの力感が強いという違いはあるが、完成度やセンスなど多くの共通点がある。
藤田真央は以前に山田和樹との2台ピアノ版でこの曲を演奏したが(その記事はこちら)、オーケストラを思わせるあの迫力を今回のソロ版ではたった一人で実現し、さらにはピアニスティックな洗練度を増している(2台版は2台版で、個性と個性の共鳴が魅力だが)。
ソロによって2台ピアノ以上にやりたいことをやりつくした、藤田真央ならではのこだわりの名演。
アンコールのクライスラー/ラフマニノフの「愛の悲しみ」とショパンのノクターン第10番も、これ以上望むべくもない名演だった。
明るくも繊細なサロン的洗練が要求されるこれらの曲は、もはや藤田真央の独壇場と言えるだろう。
(画像はこちらのページよりお借りしました)
↑ ブログランキングに参加しています。もしよろしければ、クリックお願いいたします。