角野隼斗 亀井聖矢 東京公演 ラフマニノフ 組曲第2番 ほか | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

角野隼斗×亀井聖矢 2台ピアノコンサート

※無観客公演、ライブストリーミング配信

 

【日時】

2020年6月20日(土) 開演 19:00

 

【会場】

浜離宮朝日ホール (東京)

 

【演奏】

ピアノ:角野隼斗、亀井聖矢

 

【プログラム】

チャイコフスキー:組曲「くるみ割り人形」(2台ピアノ)

J.S.バッハ:半音階的幻想曲とフーガ d-moll BWV 903(亀井ソロ)

ショパン:スケルツォ 第1番(角野ソロ)

リスト:パガニーニ大練習曲集 第3曲 「ラ・カンパネラ」(亀井ソロ)

リスト:死の舞踏(サン=サーンス) S.555(角野ソロ)

ラフマニノフ:組曲 第2番 Op.17(2台ピアノ)

 

※アンコール

チャイコフスキー:「白鳥の湖」 より 第2幕 情景(ピアノ連弾)

 

 

 

 

 

下記のリブログ元の記事に書いた、角野隼斗と亀井聖矢によるライヴ配信コンサートを聴いた。

2台ピアノ曲とソロ曲とを織り交ぜたプログラムである。

 

 

最初の曲は、チャイコフスキーのくるみ割り人形、2台ピアノ版(エコノム編?)。

プリモが角野隼斗、セコンドが亀井聖矢である。

この曲では、私はこれぞといった録音をまだ見つけていない。

もちろんアルゲリッチ&エコノム盤も悪くないが、少しおとなしい。

20年以上も前に聴いた全盛期のアルゲリッチと伊藤京子のペアによる生演奏が何やら大層すごかったような気がするし(なにぶん相当昔なので細かいところは覚えていないが)、最近では2017年の山本貴志&佐藤卓史ペアによる演奏が良かったが(その記事はこちら)、今回の角野隼斗&亀井聖矢ペアもそれらに劣らない出来だった。

特に、精度の高さは最高クラス。

なにぶん、2人とも緻密でうまく、穴がない。

途中で出てくる、とある仕掛けも楽しい(これからアーカイヴを観る人もいるだろうから伏せておくが)。

 

 

次の曲は、バッハの「半音階的幻想曲とフーガ」。

亀井聖矢のソロ演奏である。

この曲のピアノ版で私の好きな録音は

 

●シフ(Pf) 1973年セッション盤(NMLApple MusicCD

●シフ(Pf) 1982年12月セッション盤(NMLApple MusicCD

●シフ(Pf) 1989年セッション盤(DVD

●ラ・サール(Pf) 2004年12月セッション盤(NMLApple Music

●千葉遥一郎(Pf) 2018年11月11日浜コンライヴ盤(CD)

 

あたりである。

バロックの様式を身につけたシフ、ロマン的だが端正でバッハらしいラ・サール、ラプソディックな勢いのある千葉遥一郎。

今回の亀井聖矢の演奏は、これらに比べると意外にゆっくりめでおとなしく、幻想曲などもう少し勢いがあっても良いかも。

ただ、その分フーガはかっちりした感じが合っていたし、それに幻想曲もフーガもクライマックスへ向けて盛り上げるように作られていたのは効果的だった(つまりかっちりしつつも全体的には古典的というよりロマン的な解釈)。

 

 

次の曲は、ショパンのスケルツォ第1番。

角野隼斗のソロ演奏である。

この曲では、まだこれぞというほどの録音を見つけてはいないが、ヤブウォンスキ(NMLApple MusicCD)、ポゴレリチ(NMLApple MusicCD)、ガヴリリュク(Apple MusicCD)、ユンディ・リ(Apple MusicCD)、グロヴナー(Apple MusicCD)、角野隼斗(動画)あたりが比較的好きである。

今回の角野隼斗の演奏も、相変わらずうまい。

彼自身のトークにあったように、前回動画での激情的、直線的な演奏と違った、スケルツァンドで余裕のある解釈となっていた。

特に中間部の歌の表現力は前回よりも向上しているように感じた。

主部については、どちらも見事(前回の直線的な激しさも捨てがたい)。

なお、コーダの半音階上昇する両手ユニゾンが、オクターヴ左右交互連打に変わっていたが、ここはユニゾンが好み。

総合的には、前回とほぼ互角か。

 

 

次の曲は、リストのラ・カンパネラ。

亀井聖矢のソロ演奏である。

この曲で私の好きな録音は

 

●M.アムラン(Pf) 2002年2月セッション盤(CD

●プーン(Pf) 2016年私家録音(動画

●進藤実優(Pf) 2019年6月クライバーンJr.コンクールライヴ(動画

●丸山凪乃(Pf) 2019年8月25日京都ライヴ(動画

 

あたりである。

硝子のごとく無機質で研ぎ澄まされたアムランに、抒情的で表現力豊かな他3名。

今回の亀井聖矢の演奏は、最初はアムランに似た緻密で冷静なアプローチかと思ったが、全体的にはよくテンポを揺らし、クライマックスへ向け盛り上げていく熱い演奏だった。

私としては最後まで冷たい硝子のままでいてほしかったが、このあたりは好みの問題。

完成度は十分に高く、同音連打部分や和音の続く箇所も概ねきれいに決まっていた。

 

 

次の曲は、サン=サーンス/リストの「死の舞踏」。

角野隼斗のソロ演奏である。

この曲は、私はあまり録音を聴き込んでいない(ガヴリリュク盤やユジャ・ワン盤はホロヴィッツ編であり、また別か)。

今回の角野隼斗の演奏は、やはり彼らしいストレートかつ迫力あるもの。

彼は真面目と言ったらいいか、亀井聖矢のようにはテンポを揺らさないのだが、こうした派手目の曲においてもそれは変わらない。

各々のキャラクターが出て面白い。

 

 

最後の曲は、ラフマニノフの組曲第2番。

プリモが角野隼斗、セコンドが亀井聖矢である。

この曲もまだこれといった録音に出会っていないが、比較的好きなのはアルゲリッチ&フレイレ盤(NMLApple MusicCD)やルガンスキー&ルデンコ盤(NMLApple MusicCD)あたりか。

今回の角野隼斗&亀井聖矢の演奏も、これらに負けない出来。

ラフマニノフらしい重みはないが、そのぶん現代風のスマートさがあり、こういうラフマニノフも悪くない。

第2楽章のワルツはもう少し速いとノリが良くなるかもしれないが、その分かなり緻密。

終楽章のタランテラは山本貴志&佐藤卓史の実演(その記事はこちら)でのたぎるような情熱に比べると随分冷静、と思いきやクライマックスではしっかりとエキサイティングに盛り上げてくれた。

 

 

上に書いた山本貴志&佐藤卓史ペアは、音色も音楽性も正反対の2人による丁々発止が魅力だが、角野隼斗&亀井聖矢ペアは互いに似た2人組のような気がする(実演だと印象が変わるかもしれないが)。

緻密でスマートな似た者同士デュオ、大変楽しかった。

来週の務川慧悟&反田恭平ペアは、どちらかというと正反対の個性のぶつかり合いになりそうで、そちらも楽しみである。

この3組、もし今後も共演を続けてくれるなら、日本を代表するピアノ・デュオ3組になりそう。

 

 

 

 


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