今回は演奏会の感想ではなく、別の話題を。
2017年のリスト国際ピアノコンクール（ユトレヒト）で優勝したピアニスト、アレクサンダー・ウルマンの新譜が先日発売された。
今回の新譜の曲目は、チャイコフスキー／プレトニョフの組曲「くるみ割り人形」、ストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」からの3楽章、プロコフィエフの「シンデレラ」からの6つの小品、そしてストラヴィンスキー／アゴスティの「火の鳥」組曲である（Apple Music）。
つまり、ロシア・バレー音楽のピアノ編曲集となっている。
詳細は以下の通り。
The Nutcracker, Petrushka, Cinderella & The Firebird
1 The Nutcracker Suite, Op. 71a: I. March. Tempo di marcia viva (Arr. for Piano)
2 The Nutcracker Suite, Op. 71a: II. Dance of the Sugar Plum Fairy (Arr. for Piano)
3 The Nutcracker Suite, Op. 71a: III. Tarantella (Arr. for Piano)
4 The Nutcracker Suite, Op. 71a: IV. Intermezzo (Arr. for Piano)
5 The Nutcracker Suite, Op. 71a: V. Trepak (Russian Dance) (Arr. for Piano)
6 The Nutcracker Suite, Op. 71a: VI. Chinese Dance (Chinese Dance) (Arr. for Piano)
7 The Nutcracker Suite, Op. 71a: VII. Andante Maestoso (Arr. for Piano)
8 Three Movements from Petrushka: I. Danse Russe
9 Three Movements from Petrushka: II. Petrushka's Room
10 Three Movements from Petrushka: III. The Shrovetide Fair
11 Six Pieces from Cinderella, Op. 102: I. Waltz. Cinderella and the Prince (Arr. for Piano)
12 Six Pieces from Cinderella, Op. 102: II. Cinderella's Variation (Arr. for Piano)
13 Six Pieces from Cinderella, Op. 102: III. Quarrel (Arr. for Piano)
14 Six Pieces from Cinderella, Op. 102: IV. Waltz. Cinderella goes to the Ball (Arr. for Piano)
15 Six Pieces from Cinderella, Op. 102: V. Pas de Chale (Arr. for Piano)
16 Six Pieces from Cinderella, Op. 102: VI. Amoroso (Arr. for Piano)
17 The Firebird Suite: I. Dance infernale (Arr. for Piano)
18 The Firebird Suite: II. Berceuse (Arr. for Piano)
19 The Firebird Suite: III. Finale (Arr. for Piano)
以上、Amazonのサイトより引用した（引用元のページはこちら）。
チャイコフスキー／プレトニョフの「くるみ割り人形」では、私はウラシン盤（セッション盤とライヴ盤の2種）、トカレフ盤、そしてフアンチのライヴ動画あたりが好きなのだが、今回のウルマン盤もこれらに劣らない出来となっている。
かなり明晰なピアニズムであり、細かい音型の丁寧な扱いにかけては、上記の各種名盤にも勝るほど。
ただ、その分ロマン性は控えめである。
上記フアンチの演奏では、第4曲「間奏曲」での何とも切なくロマンティックな歌わせ方や、第5曲「トレパーク」や終曲「アンダンテ・マエストーソ」でのダイナミックな勢いが素晴らしく、ウルマン盤はそのあたりがやや物足りない。
とはいえ、決してそっけないわけではなく、必要な歌心は備えているし、完成度や音質の面ではウルマン盤が上である。
総合的には、いま最もおすすめの演奏かもしれない。
なお、ストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」と「火の鳥」については、難曲であることを考えるとかなり弾けていると思うのだが、前者ではポリーニ盤、ロルティ盤、Xingyu Luの2017年ブゾーニコンクール動画、後者ではイ・ヒョクの2018年浜コンライヴ盤といったお気に入りの演奏と比べると、少しおとなしい印象である。
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