(イザベル・ファウストの新譜 モーツァルト ヴァイオリン・ソナタ第30、28、42番) | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

今回は演奏会の感想ではなく、別の話題を。

好きなヴァイオリニスト、イザベル・ファウストの新譜がまもなく発売される(Apple Musicではもう聴ける)。

今回の新譜の曲目は、モーツァルトのヴァイオリン・ソナタ集である(Apple MusicCD)。

詳細は以下の通り。

 

 

 

 

 

ヴァイオリン・ソナタ集 第1集 イザベル・ファウスト、アレクサンドル・メルニコフ

 

 


ファウスト&メルニコフによるモーツァルト!

ファウストとメルニコフによる、注目のモーツァルト・シリーズ第1弾の登場。どの作品も、キャラクターの描き分けが実に鮮やか。モーツァルトのソナタ・シリーズは、東京・王子ホールでも2017年10月に公演があり、その細やかなアンサンブルで絶賛されました。
今回は、1778年11月にパリで出版されたK.306と304、そして『ドン・ジョヴァンニ』作曲中に書かれたモーツァルトの最後のヴァイオリン・ソナタ K.526(1787年完成)という組み合わせです。ニ長調 K.306は、このソナタが「ピアノとヴァイオリンのための」と正式には記されていることに納得の、ピアノが主となる部分が多い作品ですが、ファウストもメルニコフも絶妙なバランスを保ちながら対等に演奏しており、作品のもつエネルギーが存分に引き出されています。ホ短調 K.304の有名な冒頭の、ファウストのすすり泣くような音色、第2楽章のメルニコフのソロなどは思わず涙のせつない美しさです。イ長調のK.526は、モーツァルトの最後のヴァイオリン・ソナタ。輝かしい推進力に富む両端楽章にはさまれた、短調のかげりの濃い緩徐楽章は、少年時代に親しかった友人アーベルの訃報に心を動かされて作曲されたと考えられています。バッハを思わせるような厳格な書法も用いられている充実作です。
ファウストのヴァイオリンの音色の変幻自在な美しさと精確なテクニックはもちろんのこと、メルニコフの奏でるフォルテピアノのおそろしいまでの表情豊かさ、そして二人の演奏のすべてを見事にとらえた優秀録音にも圧倒されるモーツァルトです!(輸入元情報)(写真c Marvo Borggreve)

【収録情報】
モーツァルト:ピアノとヴァイオリンのためのソナタ集 vol.1


● ソナタ ニ長調 K.306
● ソナタ ホ短調 K.304
● ソナタ イ長調 K.526

イザベル・ファウスト(ヴァイオリン)
アレクサンドル・メルニコフ(フォルテピアノ)

【使用楽器】
ヴァイオリン:1704年製ストラディヴァリウス「スリーピング・ビューティ」
ピアノ:クリストフ・ケルン、2014年製/1795年製アントン・ヴァルター(ウィーン)・モデル、メルニコフ・コレクション

録音時期:2017年8月
録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)

 

 

 

 

 

以上、HMVのサイトより引用した(引用元のページはこちら)。

 

 

イザベル・ファウストとアレクサンドル・メルニコフ、彼ら2人の活躍ぶりは目覚ましい。

つい先日、彼らのドビュッシーのヴァイオリン・ソナタの新譜が発売されたばかりだが(その記事はこちら)、今回また別の新譜が発売されることとなった。

それも、ついにモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ・シリーズの開始である。

ヴァイオリン・ソナタというと、モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームス、この3人の作曲家の存在感が最も大きいように思うが、ベートーヴェンとブラームスについては、ファウストとメルニコフはもうすでに全曲録音を済ませている。

今回、満を持してモーツァルトに取り掛かった、ということだろう。

 

 

聴いてみると、期待通り素晴らしい。

モーツァルトのヴァイオリン・ソナタの中で私の最も好きな第42番 K.526が入っているのもうれしい(なお、上記HMVの解説文には「モーツァルトの最後のヴァイオリン・ソナタ」と書いてあるけれど、正しくはおそらく「最後から2番目のソナタ」)。

この曲には多くの名盤があり、今回のファウスト/メルニコフ盤と同じくピリオド楽器(古楽器)を用いた録音に限っても、クロサキ/ニコルソン盤、クイケン/デヴォス盤、ザイラー/インマゼール盤、ポッジャー/クーパー盤など、お気に入り盤がいくつかある。

これらの盤に比べ、今回のファウスト/メルニコフ盤は、洗練度において一歩どころか二歩も三歩も先んじている印象。

 

 

ただ、第3楽章については、メルニコフほどの人にしてはタッチにややムラがあるような気がする(あるいはわざと?)

また、個人的には、ピリオド楽器の演奏を聴く際にはその鄙びた音色やまったりした雰囲気を楽しむことが多く、モダン楽器のときほどには高い洗練度を求めない。

そういった意味では、今回のファウスト/メルニコフ盤が他盤よりもずば抜けて好きかというと、そこまでではないかもしれない。

 

 

とはいえ、やはり名演である。

安定感抜群で完成度が高く、また細部までよく練られている。

例えば第1楽章冒頭など、他の演奏ではピアノによる第1主題をヴァイオリンによる三度下の副旋律がかき消してしまうことが多いのだが、今回のファウスト/メルニコフ盤ではヴァイオリンとピアノのバランスがよく、ピアノによる第1主題が明瞭に聴こえる。

その後、第1主題はピアノからヴァイオリンへと受け渡されるのだが、そこで初めてヴァイオリンがしっかりとメロディを出している。

ただうまく弾いたというだけでなく、このように細やかな配慮の行き届いた、曲を大事にした演奏が私は好きである。

そんなわけで結局のところ、私の大好きなこの曲において、当盤は(ずば抜けてとは言わないにしても)総合的には他盤を抜き、ピリオド楽器による最も好きな録音となった。

 

 

長くなったので詳しくはもう書かないが、第30番や第28番の演奏も良い。

今後のシリーズの続きも楽しみである。

 

 


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