(田中玲奈のデビュー盤 Serenade Aux Etoiles) | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

今回は演奏会の感想でなく、別の話題を。

今朝は地震でけっこう揺れたが、幸いなことに無事だった。

皆様のご無事を祈りつつ、気を取り直して、今日も音楽のことを書きたい。

 

 

先日の大フィルの演奏会についての記事で特記したフルート奏者、田中玲奈(その記事はこちら)。

これを機に、彼女の録音を聴いてみた。

彼女のCDは2枚出ているようだが、今回はデビュー盤のほうを聴いた(NMLApple MusicCD)。

詳細は下記の通り。

 

 

 

 

 

 

(画像はこちらのページからお借りしました)

 

 

渡邊玲奈 Serenade Aux Etoiles (星のセレナード)

 

レーベル:マイスター・ミュージック

発売日:2011年5月25日

 

フルート:渡邊玲奈

ピアノ:石橋衣里

 

収録曲

01. C.シャミナード:星のセレナード 作品14

02. G.フォーレ:ファンタジー 作品79

03. B.ゴダール:3つの小品からなる組曲 作品116

04. G.フォーレ:コンクールの小品

05. L.ガンヌ:アンダンテとスケルツォ

06. E.ノブロ:メロディ

07. G.エネスコ:カンタービレとプレスト

08. C.サン=サーンス:ロマンス 作品37

09. C.シャミナード:コンチェルティーノ 作品107

 

 

 

 

 

以上、HMVのサイトより引用した(引用元のページはこちら)。

 

 

聴いてみると、何とも素晴らしい!

彼女がオーケストラ曲のフルート・パートのみならず、フルートのソロ曲においても、比類ない名手であることが分かった。

特に、私の好きな曲、フォーレの「コンクール用小品」。

この曲の録音でいうと、私は

 

●バイノン(Fl) 上野真(Pf) 2004年11月18-21日セッション盤(NMLApple MusicCD

●ユレル(Fl) クヴェール(Pf) 2010年10月18-22日セッション盤(NMLApple MusicCD

●パユ(Fl) ル・サージュ(Pf) 2012年10月25-28日セッション盤(NMLApple MusicCD

●スパークス(Fl) ヘンダーソン(Pf) 2014年頃?セッション盤(Apple MusicCD

 

あたりが好きなのだが、今回の田中玲奈盤はこれらを凌駕するほどの美しさである。

パユのような、あたり一面を一瞬にして花畑に変えてしまうかのようなあの華やかさは、さすがにない。

しかし、音の繊細さや滑らかさでは、むしろ優っているのではないかと思われるほど。

ゆっくりめのテンポでじっくりと細やかに、かつ味付けしすぎず端正に奏された彼女の飾り気のない「心の歌」は、この曲のもつ優しさを表現しつくしてやまない。

パユ盤以上に好きになってしまった(もし全盛期の頃のパユの録音があったならば、また違ったかもしれないが)。

 

 

同じフォーレでも「幻想曲」のほうになると、ヴァンサン・リュカやマチュー・デュフォーなど競合盤が増えてくるし、パユにも全盛期の録音が存在するため、少し分が悪くなってくる。

とはいえ、田中玲奈盤もかなりのレベルであり、これらの競合盤に十分に比肩しうると思う。

その他、サン=サーンスの名曲「ロマンス」も大変美しいし、それ以外、シャミナードやゴダールなども、私はあまり聴き慣れていない曲だけれど、どれも大変良い。

音の丁寧さ、細部の整い方が尋常でなく、演奏の完成度がきわめて高い。

田中玲奈は、竹山愛と並んで、日本のフルート奏者の最高峰である、といったら言いすぎだろうか?

私は、フルート奏者のことはあまり詳しくないので、ここで断言するのはやめておくけれど、このように言っても過言でない可能性は十分にあると思う。

竹山愛の音がどちらかというとパユに近い華やかさを持つのに対して、田中玲奈の音はより涼やかで清澄な響きがする。

そして、この繊細さ、完成度の高さ。

私の大好きなタイプの演奏である。

世界でも、これほどの名手がどれだけいるだろうか?

 

 

このCDを聴いて、あまりのうまさに、すっかりファン度が増してしまった私。

ここまでうまいと、ややもすれば大フィルから関東や海外の楽団へと引き抜かれてしまうのでは、あるいはソロ活動に専念するため大フィルをやめてしまうのでは、と急に心配になってくる(笑)。

彼女には、京響におけるクラリネット奏者の小谷口直子のように、ソロ活動もしながらオーケストラをも引っ張っていく、大フィル管楽セクションの「顔」的な存在になってほしいものである。

 

 


音楽(クラシック) ブログランキングへ

↑ ブログランキングに参加しています。もしよろしければ、クリックお願いいたします。