大阪フィルハーモニー交響楽団 第519回定期 ビニャミーニ R=コルサコフ シェエラザード ほか | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

大阪フィルハーモニー交響楽団

第519回定期演奏会

 

【日時】

2018年6月16日(土) 開演 15:00 (開場 14:00)

 

【会場】

フェスティバルホール (大阪)

 

【演奏】
指揮:ヤデル・ビニャミーニ
ピアノ:アンヌ・ケフェレック *

管弦楽:大阪フィルハーモニー交響楽団

(コンサートマスター:田野倉雅秋)

 

【プログラム】
ペルト:フェスティナ・レンテ
モーツァルト:ピアノ協奏曲 第22番 変ホ長調 K.482 *
リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」 作品35

 

※アンコール(ソリスト) *

ヘンデル/ケンプ:組曲 第2集 第1番 変ロ長調 HWV434 より 第4曲 メヌエット ト短調

 

 

 

 

 

大フィルの定期演奏会を聴きに行った。

指揮は、ヤデル・ビニャミーニ。

北イタリア出身の指揮者である。

彼の演奏を聴くのは、録音も含め今回が初めて。

 

 

最初のプログラムは、ペルト作曲の「フェスティナ・レンテ」。

この曲で私の好きな録音は、

 

●ベネデク指揮ハンガリー国立歌劇場管 1995年12月10-16日セッション盤(NMLApple MusicCD

 

あたりである。

今回のビニャミーニ&大フィルの演奏は、この盤ほどには耽美的でなく、もう少しさらっとした演奏だった。

生演奏だと、パートごとの主題のテンポの違い(ペルトはあえてそのような書き方をしている)が、視覚的にも分かりやすかった。

 

 

次のプログラムは、モーツァルト作曲のピアノ協奏曲第22番。

これは大好きな曲なのだが、残念ながらまだこれぞといった決定的な録音を見つけることができていない。

現時点では、E.フィッシャー盤(ウィーン・フィル)、アシュケナージ盤(フィルハーモニア管)、ペライア盤(イギリス室内管)、シフ盤(ヴェーグ指揮カメラータ・ザルツブルク)、ベズイデンホウト盤(フライブルク・バロック・オーケストラ)あたりが比較的好きなのだが、どれもあともう一歩、と思ってしまう。

もしもピリスの録音があったならば、決定的な演奏となっていたかもしれない。

今回のケフェレックの演奏は、これらよりもずば抜けているとは言わないまでも、少なくともこれらに匹敵する、かなりの名演だった。

彼女の演奏は、昨年聴いたときと同様(そのときの記事はこちら)、シンプルなメロディであろうと何気ない音階であろうと、隅から隅まで歌にあふれている。

これぞモーツァルト、と言いたくなる。

 

 

ただ、彼女はペダルをしっかりめに使用し、ややロマン派寄りな様式で弾くため、しっとりとして美しい反面、第1楽章などはもう少しからっとした推進力が欲しい気もした(ピリスならば、そのように弾いたかもしれない)。

第1楽章展開部で、オーケストラをバックにピアノが縦横無尽に走り回ったのち、たった数小節の間だけれど、オーケストラがぴたっと止んで、ピアノがソロで弾くパッセージが出てくる。

ここは、何気ないパッセージなのだけれど、まるでモーツァルトが優しく微笑んでいるかのように、美しく切ない部分だと思う。

このごく短いソロ・パッセージの後には、オーケストラがまた再びピアノを支え、少しずつ勢いを増して再現部へと流れ込むのだが、この一連の流れが私は好きでたまらない。

ここは、じめっとしすぎず、またからっともしすぎず、できるだけそこはかとなく、哀しみを微笑で包み込むように弾いてほしい。

だが、ケフェレックはここで大きくタメを作り、思いのたけを存分に表してしまう。

もう少し、そこはかとなくやってほしかった。

しかし、それでもやっぱり美しかったし、完全にロマン派になってしまうことなく、きちんとモーツァルトを保っていたようには思う。

第2楽章では、ケフェレックのしっとりと憂いを帯びた歌わせ方が音楽にぴったり合って、大変感動的だった。

終楽章も、速い走句やアルペッジョが滑らかに奏され、技巧的な不足をほとんど感じなかったし、かつそれらが全て「歌」になっているのがさすがだった。

本当に「歌」を紡ぐには、高度な集中力とコントロール力が必要であることを改めて思い知らされた。

アンコールのヘンデルも、美しい限り。

 

 

休憩を挟んで、後半のプログラムは、リムスキー=コルサコフ作曲の「シェエラザード」。

これは、実はちょっと苦手な曲で、これぞといった好きな録音もまだない。

西本智実&ブダペスト・フィル盤は、比較的好きだけれど。

そのため、今回のビニャミーニ&大フィルの演奏の良し悪しは、私には判断しづらい。

ただ、壮大に広がるロシア的な演奏というよりは、すっきりとしたカラフルな演奏だったような気はする。

思ったよりも楽しめた。

 

 

ところで、この曲ではコンマスの田野倉雅秋をはじめ、各楽器の奏者がソリスティックに活躍していたが、特にフルートの田中玲奈が良かった。

彼女のフルートは毎回良いけれど、今回も素晴らしい。

先ほどのモーツァルトでフルートを担当した野津臣貴博も、しっかりした肉厚の音で味わい深いが(少しミスもあったけれど)、R=コルサコフでのフルート担当の田中玲奈はより細めの繊細な音であり、完成度が高くて品も良く、それほど大きな音でなくともよく映える。

大フィルのメンバーの中でも、出色の奏者だと思う。

できるだけ長く在籍してほしいものである。

そういえば、クラリネット奏者のブルックス・トーンを最近見かけないと思ったら、いつの間にか大フィルの名簿から名前がなくなっていた(気づくのが遅い?)。

彼の音も好きだったので、残念である。

 

 

 

(画像はこちらのページからお借りしました)

 

 


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