今回は演奏会の感想ではなく、別の話題を。
前回までと同様、「もしもタイムマシンがあったなら行ってみたい演奏会」シリーズの続きを書きたい。
これまで、フルトヴェングラーの指揮によるコンサートがもし聴けたならということで、彼の振るベートーヴェン、ヴァーグナー、ブラームス、ブルックナー、マーラー、R.シュトラウス、チャイコフスキーについて書いてきた。
最近は、フルトヴェングラーの振るストラヴィンスキーについて書いている。
今回は、フルトヴェングラーの指揮によるストラヴィンスキーの「春の祭典」を取り上げたい。
今回もこれまでと同様、フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィルの演奏による、ベルリンでの演奏会で、かつ1929~1934年頃に行われたもの(できれば1929年のもの)から探してみたいと思う(その理由はこちら)。
探してみると、下記の演奏会があった。
1930年2月23、24日、ベルリン
指揮:フルトヴェングラー
管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
プログラム
Bach: Suite No. 3
Beethoven: Violin concerto (Joseph Szigeti)
Stravinsky: the Rite of Spring
バッハの管弦楽組曲第3番、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲、そしてストラヴィンスキーの「春の祭典」。
ベートーヴェンの協奏曲のソリストは、ヨーゼフ・シゲティ。
ぜひ聴いてみたいコンサートである。
フルトヴェングラーを聴くのに、何も「春の祭典」でなくとも…と思われるかもしれない。
確かにその通りだが、フルトヴェングラーとしてはおそらくこの曲にそれなりに興味はあったと思われ、1925年のアメリカツアーでも振っている(これが「春の祭典」のニューヨーク・フィル初演だったとのこと)。
ただしタイムマシンはまだないし、またこの演奏会のライヴ録音も残されていないので、代わりに下記の録音を聴いた。
●J.S.バッハ:管弦楽組曲第3番 フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル 1948年10月22日放送用録音盤(NML/Apple Music/CD)
●ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 シゲティ(Vn) ワルター指揮ブリティッシュ響 1932年セッション盤(NML/Apple Music/CD)
●ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 メニューイン(Vn) フルトヴェングラー指揮フィルハーモニア管 1953年4月7~9日セッション盤(NML/Apple Music/CD)
シゲティとフルトヴェングラーの取り合わせによるベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲の録音は残されていないため、それぞれ別々にシゲティによる録音、フルトヴェングラーによる録音を聴いた。
シゲティのベートーヴェン、これはSP期の有名な録音で、虚飾のないまっすぐな演奏が大変素晴らしい。
また、以前にも書いたことがあるけれど(その記事はこちら)、カデンツァがヨアヒム作なのも私には嬉しい。
ワルターの自由で伸びやかな指揮ぶりも良い。
ただ、フルトヴェングラーの雄大な指揮でもぜひ聴いてみたかった。
バッハの管弦楽組曲第3番は、フルトヴェングラーの指揮だと大変に重い。
これを初めて聴く人は、バッハの曲とは気づかないかもしれない。
それでも、先入観なしに聴くと何とも感動的である。
特に「G線上のアリア」の美しさは格別で、これに匹敵するものはクレンペラー指揮ロサンジェルス・フィル盤くらいしか思い浮かばない(方向性は全く違うけれど)。
なお、この2日後の録音も残されていて(そちらは放送用録音ではなくライヴ録音)、そちらも素晴らしい。
そして、ストラヴィンスキーの「春の祭典」。
この曲も例によって、フルトヴェングラーによる録音が存在しない。
残念である。
「春のきざし」のドッドッドッドッというところなど、フルトヴェングラーが振るといったいどれほど重く響いたことだろうか。
以上、フルトヴェングラーによるストラヴィンスキー三大バレーの演奏は、いずれも録音が残っていない。
フルトヴェングラーのストラヴィンスキー演奏で、録音が残されているものは、おそらく「3楽章の交響曲」と「ディヴェルティメント」(「妖精の接吻」組曲)の2曲のみである。
それぞれ、独特の味わいをもつ演奏となっている。
他に、録音はないけれど、「幻想的スケルツォ」や「花火」などを数回振ったり、作曲者と「ピアノと管楽器のための協奏曲」を共演したりしている。
これらが概ねフルトヴェングラーの、ストラヴィンスキーの曲のレパートリーの全て、ということになるようである。
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