今回は演奏会の感想ではなく、別の話題を。
また少し間が空いてしまったが、「もしもタイムマシンがあったなら行ってみたい演奏会」シリーズの続きを書きたい。
これまで、フルトヴェングラーの指揮によるコンサートがもし聴けたならということで、彼の振るベートーヴェン、ヴァーグナー、ブラームス、ブルックナー、マーラー、R.シュトラウスについて延々と書いてきた。
ここで少し趣向を変えて、独墺系からロシア系に移りたい。
フルトヴェングラーの振る、チャイコフスキー。
彼のチャイコフスキーはロシアの指揮者とはまた違った、何とも重厚な解釈だけれど、これはこれでチャイコフスキーの魅力をしっかり汲み取っていると私は思う。
というわけで今回は、フルトヴェングラーの指揮によるチャイコフスキーの交響曲第4番を取り上げたい。
今回もこれまでと同様、フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィルの演奏による、ベルリンでの演奏会で、かつ1929~1934年頃に行われたもの(できれば1929年のもの)から探してみたいと思う(その理由はこちら)。
探してみると、下記の演奏会があった。
1931年1月25、26日、ベルリン
指揮:フルトヴェングラー
管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
プログラム
Kodaly: Sommernacht/Summer night (UA)
Schubert: Sonata for Arpeggione (Gaspar Cassado)
Tchaikovsky: Symphony No. 4
ちょっと変わったプログラムである。
コダーイは、「夏の夕べ」だろうか。
シューベルトは、おそらくカサド編曲の「アルペジョーネ協奏曲」だと思われる。
これらと、チャイコフスキー交響曲第4番との組み合わせ。
とりとめがないといえばそうだけれど、でもぜひ聴いてみたいコンサートである。
ただしタイムマシンはまだないし、またこの演奏会のライヴ録音も残されていないので、代わりに下記の録音を聴いた。
●チャイコフスキー:交響曲第4番 フルトヴェングラー指揮ウィーン・フィル 1951年1月4、8~10日セッション盤(Apple Music/CD)
(なお、コダーイとシューベルトは、おそらくフルトヴェングラーによる録音が残されていないため割愛)
ずっしりと重厚でスケールの大きい演奏。
ムラヴィンスキーや他のロシア人指揮者たちの一気呵成の演奏とは違って、重々しいところから少しずつ少しずつ盛り上がっていき、最後には爆発的な熱狂を迎える。
まるでベートーヴェンの第九か、あるいはヴァーグナーの「ヴァルキューレ」第1幕のようなフルトヴェングラーのこのやり方は、チャイコフスキーらしい演奏とはいえないかもしれないけれど、あまりに感動的で一度聴くと病みつきになってしまう。
そして、ウィーン・フィルの美しい音色。
もし上記演奏会のようにベルリン・フィルだったならば、さらにすさまじい演奏だっただろうけれど、ウィーン・フィルならではの味わいも捨てがたい。
それに、フルトヴェングラーによるこの曲の演奏が、状態の良いセッション録音で残されているというだけでも、感謝するより他にない。
私にとっては、この曲の最高の名演である。
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