「ヴァイオリンソナタ」
【日時】
2018年4月23日(月) 開演 20:00 (開場 19:30)
【会場】
カフェ・モンタージュ (京都)
【演奏】
ヴァイオリン:瀬﨑明日香
ピアノ:エマニュエル・シュトロッセ
【プログラム】
R.シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 Op.18
フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調
※アンコール
クライスラー:美しきロスマリン
カフェ・モンタージュのコンサートを聴きに行った。
ヴァイオリニスト、瀬﨑明日香のリサイタルである。
彼女の実演を聴くのは初めて。
カフェ・モンタージュのマスターの前口上にあったように、今回演奏された2曲は、1886~1888年に書かれた、同時期の作品である。
ドイツとフランスで同時期に書かれた2つのヴァイオリン・ソナタを並べる、というのは何とも興味深い趣向だと思う。
なお、この3年ほどの間に、ブラームスの第2、3番、サン=サーンスの第1番、グリーグの第3番といったロマン派のヴァイオリン・ソナタの傑作が次々と書かれたようで、どのような影響関係があったのかあれこれ想像するのもまた面白い。
R.シュトラウスのヴァイオリン・ソナタで私の好きな録音は
●五嶋みどり(Vn) ロバート・マクドナルド(Pf) 1990年10月21日ニューヨークライヴ盤(Apple Music/CD)
●ユリア・フィッシャー(Vn) ミラーナ・チェルニャフスカヤ(Pf) 2003年1月3日ミュンヘン音大制作盤(CD)
あたりである。
ただ、以前も書いたけれど(そのときの記事はこちら)、この曲は2000年頃に岡山で聴いた五嶋みどりの実演が驚くほど素晴らしくて、私にはどうにも忘れがたい。
今回の瀬﨑明日香による演奏は、大変に情熱的なものであった。
私としては、五嶋みどりやユリア・フィッシャーのように、細身ですっきりとした繊細きわまりない音による、春風のように清々しく伸びやかな、それでいて時折ふっと切なさを覚えるような、そんな演奏が本来好みである。
しかし、今回の演奏も悪くなかった。
瀬﨑明日香は、上記2人に比べると、骨太な音を持っている。
その意味では、これまでカフェ・モンタージュで何度か聴いている上里はな子と共通している(その記事はこちらやこちらなど)。
ただ、違う点もある。
上里はな子は分厚く重厚なドイツ風の音だが、瀬﨑明日香は少し枯れたような味わいをもつ音色である。
また、上里はな子は情熱的ながらその音楽性は比較的端正で、古典的な「枠」を重視するのに対し、瀬﨑明日香にはよりラプソディックな情熱のほとばしり、「枠」からのはみ出しがある。
音程の安定感や、音の出し方の丁寧さなどは、上里はな子のほうがやや長けているように思うが、瀬﨑明日香はむしろそういったことをあまり気にせず、多少の雑音や音の不安定さは厭わぬ勢いで情熱を表出していく。
どちらのやり方も面白いと思う。
フランクのヴァイオリン・ソナタで私の好きな録音は
●五嶋みどり(Vn) ロバート・マクドナルド(Pf) 1997年6月セッション盤(Apple Music/CD)
●アリーナ・イブラギモヴァ(Vn) セドリック・ティベルギアン(Pf) 2005年12月セッション盤(CD)
あたりである。
ヴァイオリン曲となるといつも変わり映えしない面々で申し訳ないのだが、どうしても五嶋みどり、フィッシャー、イブラギモヴァの3人を選んでしまう。
もちろん、ティボーやカントロフやデュメイといった巨匠たちだってそれぞれ良いし、最近ではセルゲイ・ハチャトゥリアンやイザベル・ファウストの弾くフランクもとても好きではあるのだけれど。
今回の瀬﨑明日香の演奏は、先ほどのR.シュトラウス同様の熱演だった。
例えば第2楽章のコーダで、弱音でゆっくりと繰り返される4連音から、少しずつクレッシェンド&アッチェレランドしていく際の、独特な熱気、緊張感。
フランス-ベルギー風のエスプリを強調して前曲と対比させるというよりも、むしろ両曲の共通点―盛時ロマン派のヴァイオリン・ソナタ特有の熱いロマンティシズム―に焦点を当てる、そんな演奏だったと言っていいのではないだろうか。
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