METライブビューイング トーマス・アデス 「皆殺しの天使」 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

METライブビューイング

トーマス・アデス《皆殺しの天使》

The Exterminating Angel - Thomas Adès

 

【上映期間】
2018年1月27日(土)~2月2日(金)

 

【演奏・キャスト】
指揮:トーマス・アデス
管弦楽:メトロポリタン歌劇場管弦楽団

演出:トム・ケアンズ
出演

レティシア:オードリー・ルーナ(ソプラノ)

ルシア:アマンダ・エシャラズ(ソプラノ)

シルヴィア:サリー・マシューズ(ソプラノ)

レオノーラ:アリス・クート(ソプラノ)

ブランカ:クリスティン・ライス(メゾソプラノ)

フランシスコ:イェスティン・デイヴィーズ(カウンターテナー)

ベアトリズ:ソフィー・ベヴァン(ソプラノ)

エドムンド:ジョゼフ・カイザー(テノール)

 

上映時間:2時間42分(休憩1回)
MET上演日:2017年11月18日
言語:英語(日本語字幕付き)

 

 

 

 

 

METライブビューイングを観に行った。

メトロポリタン歌劇場のオペラ上演を撮影し、世界中の映画館で上映するというシリーズである。

私は基本的には生演奏が好きなので、METライブビューイングはあまり観に行かないのだが、今回のようになかなか上演されない演目の場合は貴重な機会である。

それに、オペラを3000円程度で観られるというのもおトク。

 

 

トーマス・アデスの新作オペラ、「皆殺しの天使」。

今回の上演は、メトロポリタン歌劇場初演となる(世界初演ではなく、ヨーロッパで先に上演されている)。

原作は、1962年製作・公開の、ルイス・ブニュエル監督のメキシコ映画とのこと。

私は原作の映画を観たことがないので、筋を知らない状態で今回のオペラを観ることとなった。

その詳しい内容については、ネタバレになるので今回は触れない。

「不条理劇」に分類される作品のようだが、まさにその通りの奇妙な物語だったということだけ、書いておきたい。

 

 

音楽について。

私はアデスの曲をたくさん聴いてきたわけでは全くないけれど、今回の「皆殺しの天使」も、アデスらしい音楽だと感じた。

アデスは、1971年ロンドン生まれの若い作曲家で、いわゆる「現代音楽」を書くのだけれど、スペクトル楽派やら複雑系やらの作曲家たちに比べると、割と分かりやすい音楽のように思われる。

「ブリテンの再来」と言われているようだが、確かにそんな感じ。

比較的すんなりと聴くことができた。

 

 

オペラの場合、ピットに収まるようにするため、そこまで大編成のオーケストラにはしないことが多いけれど、この曲では遠隔的な指示も行えるように工夫され、大きな編成になっていた。

オンド・マルトノというメシアンが愛した不思議な音の出る電子楽器を効果的に使用しており、また打楽器の大きなバンドもあって迫力を出していた。

劇中でパーティーのピアノ演奏が出てくるのだが(ベルクの「ヴォツェック」を思い出させる)、ここでのピアノの音楽は、現代音楽なのだけれどサロン音楽らしいセンチメンタルな雰囲気も出ていて、センスの良さが感じられた。

全体に、この奇妙な物語に合った、そこそこ不気味だけれど聴きやすい音楽、といった印象。

現代音楽に慣れていない方にも、お勧めできるかもしれない。

 

 

ただ、現代音楽にしてはややマイルドな分、音楽に強烈なインパクトがあるかというと、そうではなかった。

例えば、昨年のシーズンにMETライブビューイングで上映されたという、サーリアホの「遥かなる愛」。

私は、この上映は観ていないけれど、この曲自体はけっこう好きである。

2000年に作曲されたオペラだが、不思議なまばゆい光が乱反射するような、独特の響きが魅力的である。

「皆殺しの天使」からは、この「遥かなる愛」ほどの音楽面でのインパクトは感じられなかった。

まぁ、そうは言っても、色々な作曲家がいて、様々な曲があるのは、良いことである。

物語には合う音楽だったし、センスも感じられたし、それなりに楽しむことができた。

 

 


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