(132歳の誕生日) | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

今回は演奏会の感想ではなく、別の話題を。

本日1月25日は、名指揮者ヴィルヘルム・フルトヴェングラーの誕生日である。

といっても、往年の指揮者であり、存命ではない。

半世紀以上も前、1954年に亡くなっている。

彼は1886年の生まれなので、もし生きていたとしたら、今日で132歳である。

こう聞くと、かなり昔の人だと思われるだろうか。

私などは、むしろ意外と最近の人だなぁと、身近に感じる。

132歳、長生きの人なら存命ということもありうる、とまではさすがに言えないけれど、むかしむかしという気はあまりしない。

日本でいうと、江戸時代の生まれではなく、明治生まれである。

 

 

私の好きな映画に「タイタニック」があるが、これは1997年の映画である。

1997年というと20年以上前だが、私にとっては「ついこの間」、という気がする。

この映画には、ローズ・カルバートという架空の人物が登場するのだが、彼女は1996年の時点で101歳のおばあさんという設定。

その彼女が、17歳のときに体験した、1912年のタイタニック号沈没事故を回想するというシナリオである(このときは未婚のため、ローズ・ブケイターと旧姓になっている)。

ということは、彼女は1895年の生まれということになる。

これは、往年のピアニスト、ヴィルヘルム・ケンプと同じ生年である。

 

 

フルトヴェングラーはケンプの才能を高く評価し、しばしば共演もしていた。

ケンプは、フルトヴェングラーの9歳年下なので、その年齢差は大きくなく、いわば兄弟くらいのものである。

そんな弟分のようなケンプは、さすがに101歳まではいかなかったけれど、1991年、つまり95歳とけっこう長生きしたらしい。

そう考えると、兄貴分フルトヴェングラーだって、もし長生きしていたら、「ついこの間」まで生きていた、ということもあり得たことになる。

指揮者ヘルベルト・ブロムシュテットは、現在90歳だが現役指揮者であり、フルトヴェングラーだってもしもっと長命だったら、「ついこの間」までその演奏が聴けていたかもしれないのである。

これは、もちろん「たられば」だけれど、私にとってはワクワクするような話である。

 

 

ところで、「タイタニック」のローズは、ブケイター家というイギリスの名家に生まれ、華やかだが夢のない堅苦しい生活をしていた。

しかし、17歳でタイタニック号の事故で劇的な体験をした後、人生の自由を謳歌するため、アメリカで映画女優になった。

そのことについて詳細には語られないけれど、1910年代のことであり、おそらくサイレント映画で活躍したのだろう(当時はD・W・グリフィス監督の「散り行く花」など、サイレント映画が全盛期を迎えていた)。

19歳のときに第一次大戦、34歳のときに世界恐慌、そして44歳のときに第二次大戦、と激動の時代を経験。

戦後もおよそ半世紀も生きて、アメリカの盛衰やソ連の崩壊など世界情勢の変化を見届けつつ、101歳に至ったことになる。

何という人生だろう!

これは、もちろん架空の物語だけれど、同じような時代を生きてきた人は、アメリカにだってヨーロッパにだって、もちろん日本にだって、たくさんいただろう。

フルトヴェングラーは、戦後は幾年も生きられなかったけれど、それまでの間、苦難の人生を歩んだ。

「ついこの間」の人たちが、このような時代を生きてきたことを思うと、なんとも感慨深いものがある。

 

 


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