(行ってみたい演奏会 その22 フルトヴェングラーのブルックナー交響曲第7番) | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

今回は演奏会の感想ではなく、別の話題を。

前回に引き続き、「もしもタイムマシンがあったなら行ってみたい演奏会」シリーズの続きである。

今回は、フルトヴェングラーの指揮によるブルックナーの交響曲第7番を取り上げたい。

今回もこれまでと同様、フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィルの演奏による、ベルリンでの演奏会で、かつ1929~1934年頃に行われたもの(できれば1929年のもの)から探してみたいと思う(その理由はこちら)。

 

 

探してみると、下記の演奏会があった。

 

1932年4月14、15日、ベルリン

指揮:フルトヴェングラー

管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

プログラム

Bach: Suite No. 2 (Albert Harzer, flute)

Hindemith: Philharmonisches Konzert (UA)

Bruckner: Symphony No. 7

 

ベルリン・フィルの創立50周年記念コンサートである。

ヒンデミット作曲の委嘱作品「フィルハーモニー協奏曲」の世界初演あり、ベルリン・フィルの前任指揮者アルトゥール・ニキシュがかつて世界初演したブルックナーの交響曲第7番あり、とベルリン・フィル記念コンサートにふさわしいプログラムになっている。

この後、フルトヴェングラーとベルリン・フィルは同じく記念コンサートとしてベートーヴェンの第九を4月17、18日にベルリンで演奏したのち、記念ツアーとしてドイツ、フランス、イタリアの各都市を巡る。

そして6月7、9日には、フルトヴェングラーは単身パリへ出かけ、パリ・オペラ座でのデビュー公演を、彼の得意曲「トリスタンとイゾルデ」で飾ることになる。

まさに八面六臂の活躍である。

 

 

ただしタイムマシンはまだないし、またこの演奏会のライヴ録音も残されていないので、代わりに下記の録音を聴いた。

 

●ブルックナー:交響曲第7番(第1~3楽章の断片) フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル 1941年2月2~4日ベルリンライヴ盤(CD

 

(なお、バッハの管弦楽組曲第2番と、ヒンデミットのフィルハーモニー協奏曲は、おそらくフルトヴェングラーによる録音が残されていないため割愛)

 

 

フルトヴェングラーのブルックナー交響曲第7番には、戦後のベルリンやカイロ、ローマでのライヴ録音も残されていて、それらはきちんと全曲入っている。

それなのに、なぜこのような戦時中の、録音状態の決して良くない、かつ断片的にしか残っていないものを選ぶのか、と訝られるかもしれない。

あえてこの録音を選んだのは、コンサートホールのためである。

最高の音響を誇ったとされる伝説的なコンサートホール、ベルリンの旧フィルハーモニーは、前回の記事にも書いたように(こちら)、1944年に空襲で破壊されてしまった。

旧フィルハーモニーがいったいどれほど美しい響きだったのかが、(その片鱗だけだけれど)一番よく伝わってくるのが、この録音だと私は思う。

このホールの豊かな残響は、ベートーヴェンやブラームス以上に、ブルックナーにこそふさわしい。

ごく短い断片的な録音しか残されていないこの演奏は、聴いてみると想像を絶する美しさで、まるで「神の啓示」ででもあるかのようである。

これほどの美しさは、上記のような戦後の録音からは、聴くことができない。

 

 

なお、上で選んだ1932年4月の演奏会は、戦前なので会場はもちろん旧フィルハーモニーである。

もしも実演で聴いたならば、どんなにか神々しいことだろう。

 

 


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