読売日本交響楽団 滋賀公演 カンブルラン メシアン 「アッシジの聖フランチェスコ」 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

メシアン作曲 歌劇『アッシジの聖フランチェスコ』(全3幕・演奏会形式/フランス語上演・日本語字幕付)

 

【日時】
2017年11月23日(木) 開演 13:00 (開場 12:15)

 

【会場】
滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 大ホール

 

【演奏・キャスト】

指揮:シルヴァン・カンブルラン

管弦楽:読売日本交響楽団

(コンサートマスター:長原幸太)

天使:エメーケ・バラート

聖フランチェスコ:ヴァンサン・ル・テクシエ

重い皮膚病を患う人:ペーター・ブロンダー

兄弟レオーネ:フィリップ・アディス

兄弟マッセオ:エド・ライオン

兄弟エリア:ジャン=ノエル・ブリアン

兄弟ベルナルド:妻屋秀和

兄弟シルヴェストロ:ジョン ハオ

兄弟ルフィーノ:畠山 茂

合唱:びわ湖ホール声楽アンサンブル、新国立劇場合唱団

 

【プログラム】

メシアン:「アッシジの聖フランチェスコ」(演奏会形式)

 

 

 

 

 

メシアン唯一のオペラ、「アッシジの聖フランチェスコ」。

休憩なしで4時間半、休憩込みだと5時間半もかかる、メシアン晩年の超大作で、人によってはメシアンの最高傑作というかもしれない。

その演奏が、びわ湖ホールで行われた。

演奏会形式の全曲上演としては、今回が日本初演とのこと(正確には、日本初演が東京で行われたのち、2回目の演奏がびわ湖ホールで行われた)。

しかも、私の好きな指揮者、シルヴァン・カンブルランによる演奏である。

歴史的な上演に立ち会うことができた、と言ってもいいのかもしれない。

 

 

メシアンは、鳥の声が大好きでよく採譜しており、また彼の曲には鳥の声が頻繁に登場する。

また、彼は宗教的な内容の音楽を好んで作曲した。

鳥に説教する聖人として有名な「アッシジの聖フランチェスコ」は、まさに彼にうってつけの題材といえるだろう。

この曲の録音を私は一種類しか聴いていないが、その

 

●ケント・ナガノ指揮ハレ管 1998年8月ザルツブルクライヴ盤(Apple Music

 

は大変な名盤だと思う。

今回のカンブルラン&読響による演奏は、そんなナガノ盤に匹敵する名演であった。

ナガノ盤もそうだけれど、今回のカンブルランの演奏でも、弦・管・打・電子楽器が複雑に絡み合いながらもきれいに整理された、透明感あふれる美しい響きを堪能できた。

一部、何かの鳥の声を模した、「タタタッタタタタタッ」と全音音階的に下降する音型がピッコロとグロッケンシュピール(鉄琴)との間で何度も繰り返される部分など、ナガノ盤のほうがキレがあるかなと思われる箇所もないではなかった。

しかし、スマートすぎずじっくりと響きを聴かせるスタイルも、またカンブルランの良さの一つだろう。

 

 

第1幕第3景での、重い皮膚病患者の病が癒える奇跡が起こる際の音楽。

第2幕第5景最後の、合唱による繊細な最弱音の上にたゆたうように奏される、電子楽器オンド・マルトノによる幻想的なメロディ(「天使のヴィオールの主題」)。

第2幕第6景での、「南の美しい島」についてフランチェスコが語る際に、不協和音の波の中から突如として現れる、まるで理想郷を表すかのような鮮烈な長三和音の響き。

同じく第6景での、メシアン得意の入り乱れる鳥たちの声。

第3幕第7景での、合唱によるキリストの声の荒々しい不協和音の迫力と、それに続く「Francois…!」の協和音の静謐さ。

そして、第3幕第8景最後の、全合唱・全管弦楽による圧倒的な音の洪水、輝かしい終結。

いずれも、「かくあるべき」と思われる美しい表現だった。

 

 

ソリストや合唱も文句ない出来だった。

特にソリストは、天使役のエメーケ・バラート、聖フランチェスコ役のヴァンサン・ル・テクシエを筆頭に、粒ぞろいだったように思う。

オーケストラも素晴らしかった。

編成の大きさも最大級だし、音楽も難解で、楽譜のままに音を鳴らすだけでも大変だろうに、いっぱいいっぱいな感じがしなかったのはさすがである。

そして、何といってもカンブルラン。

おそらくきわめて難解な拍子が指定されているのだろう、彼の右手は縦横無尽にさまざまな動きをしていた。

そして左手では、ときどき「1」「2」「3」「4」「5」などと指で数字を作って合図しており、これまで見たこともないような複雑な指揮ぶりだった。

ずっと集中力が途切れなかったのだろう、終演後はさすがにお疲れの様子だった。

カンブルランをはじめ、演奏者全員に感謝したい。

 

 


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