今回は演奏会の感想ではなく、別の話題を。
昨日に引き続き、「もしもタイムマシンがあったなら行ってみたい演奏会」シリーズの続きである。
今回は、フルトヴェングラーの指揮によるブラームスの交響曲第2番を取り上げたい。
今回もこれまでと同様、フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィルの演奏による、ベルリンでの演奏会で、かつ1929~1934年頃に行われたもの(できれば1929年のもの)から探してみたいと思う(その理由はこちら)。
探してみると、この条件にあてはまる演奏会がいくつかあって、いずれも魅力的なプログラムだが、その中でも下記の演奏会を選びたい。
1930年1月19、20日、ベルリン
指揮:フルトヴェングラー
管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
プログラム
Kletzki: Variations for orchestra
Schumann: Piano concerto (Alfred Cortot)
Brahms: Symphony No. 2
ここでは、ブラームスの交響曲第2番とともに、アルフレッド・コルトーをソリストに迎えてのシューマンのピアノ協奏曲が聴ける。
以前、ベートーヴェンの交響曲第7番の演奏会のときに、同じ日のプログラムでヴィルヘルム・ケンプの弾くシューマンのピアノ協奏曲があった(そのときの記事はこちら)。
同じフルトヴェングラーの指揮で、コルトーとケンプのシューマンを聴き比べできるのは、とても嬉しい。
ただしこれは、タイムマシンがあれば、の話。
実際にはまだないし、またこの演奏会のライヴ録音も残されていないので、代わりに下記の録音を聴いた。
●シューマン ピアノ協奏曲 コルトー (Pf)、ロナルド指揮ロンドン・フィル 1934年10月12、13日セッション盤(NML/Apple Music/CD)
●ブラームス 交響曲第2番 フルトヴェングラー指揮ロンドン・フィル 1948年3月22、23、25日セッション盤(NML/Apple Music/CD)
(なお、クレツキの「管弦楽のための変奏曲」は、おそらくフルトヴェングラーによる録音が残されていないため割愛)
シューマンのほうは、フルトヴェングラーではなくランドン・ロナルド指揮だが、コルトーらしい濃厚なスタイルのピアノが聴ける。
ブラームスのほうは、ベルリン・フィルとの1952年ライヴ盤や、ウィーン・フィルとの1945年ライヴ盤もあり、いずれも名演だが、音質はこのロンドン・フィルとのセッション盤が最も優れている。
EMIへの録音が多いフルトヴェングラーとしては珍しくDECCAへの録音であり、ホールトーンを重視したEMIに比し、明瞭度を優先したDECCAらしい音質となっている。
EMIの音も好きだが、DECCAの鮮明な音も捨てがたい。
この録音では、演奏中にマイクが何本も立っているのをフルトヴェングラーが嫌がったため、マイクを普段通りに配置できず、「失敗作」になってしまった、とDECCAの名プロデューサー、ジョン・カルショウは言っているようである。
しかし聴いてみると、さすがはDECCA、この時代としてはかなり明晰な音質であり、また他のライヴ盤2種のようにフォルテ(強音)で音が割れるようなこともない。
また、この録音は、フルトヴェングラーがベルリン・フィルやウィーン・フィルだけでなく、普段それほど振り慣れているわけではない他国のオーケストラからも、いかに重厚で温かみのある音を引き出していたかが、よく分かる好例となっている(フィルハーモニア管との「トリスタンとイゾルデ」や、ローマRAI響との「ニーベルングの指環」にも同じことが言える)。
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