(行ってみたい演奏会 その14 フルトヴェングラーのブラームス交響曲第1番) | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

今回は演奏会の感想ではなく、別の話題を。

少し間が空いたが、「もしもタイムマシンがあったなら行ってみたい演奏会」シリーズの続きである。

最近、フルトヴェングラーの振るヴァーグナーを連続して取り上げていたが、それもひと段落着いた。

次は、ベートーヴェンやヴァーグナー同様にフルトヴェングラーが大の得意とした、ブラームスへ。

今回は、フルトヴェングラーの指揮によるブラームスの交響曲第1番を取り上げたい。

ベートーヴェンのときと同様、フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィルの演奏による、ベルリンでの演奏会で、かつ1929~1934年頃に行われたもの(できれば1929年のもの)から探してみたいと思う(その理由はこちら)。

 

 

探してみると、このあたりの時期に演奏されたフルトヴェングラーのブラームス交響曲第1番の演奏会で、とりわけ聴いてみたいものが3つあった。

下記のものである。

 

①1928年11月11、12日、ベルリン

指揮:フルトヴェングラー

管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

プログラム

Rachmaninov: Piano concerto No. 3 (Sergei Rachmaninov)

Brahms: Symphony No. 1

 

②1933年5月21日、ウィーン

指揮:フルトヴェングラー

管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

プログラム

Brahms: Variationen über ein Thema von Haydn

Brahms: Piano concerto No. 2 (Arthur Schnabel)

Brahms: Symphony No. 1

 

③1933年5月24日、ベルリン

指揮:フルトヴェングラー

管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

プログラム

Brahms: Piano concerto No. 2 (E. Fischer)

Brahms: Symphony No. 1

 

当初の条件からいきなり違ってウィーン・フィルが入っているではないか、とお叱りを受けそうである。

おっしゃる通りである。

しかし、ベルリン・フィルでもウィーン・フィルでも、この時期のフルトヴェングラー指揮のブラームス交響曲第1番なら名演に決まっている。

なので、この際もうそこはあまり問わないことにする。

ここで大事なのは、他のプログラムである。

①では、なんとラフマニノフ本人をソリストに迎えてのラフマニノフのピアノ協奏曲第3番が聴ける。

②と③はブラームス生誕100年祭の演奏会であり、ともにブラームスのピアノ協奏曲第2番が演奏されているが、②ではアルトゥール・シュナーベルが、③ではエトヴィン・フィッシャーがソリストという豪華さである。

どれにしようか。

かなり悩ましいところだが、私は①を選ぶことにする。

ある団員の話によると、この演奏会では、フルトヴェングラーの重厚なテンポにラフマニノフが耐えかねたのか、リハーサルの途中でラフマニノフがいきなりピアノだけでなく指揮も始めてしまい(つまり指揮者が2人)、気まずい空気になったという。

しかし、本番ではこの2人の巨匠の音楽性はやはり合わないながらも、個性のぶつかり合いによってある種の緊張感が生まれ、何とも名状しがたい名演になったとのことである。

2人の個性を考えると、凄まじい演奏状況が目に浮かぶようだが、そんな「珍演」、ぜひ実演で聴いてみたいものではないか?

 

 

ただ、残念ながらまだタイムマシンはないし、この演奏会のライヴ録音も残されていないので、代わりに下記の録音を聴いた。

 

●ラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番 ラフマニノフ (Pf)、オーマンディ指揮フィラデルフィア管 1939年12月4日、1940年2月24日セッション盤(NMLApple Music

●ブラームス 交響曲第1番 フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル 1952年2月10日ベルリンライヴ盤(NMLApple Music

 

なお、ラフマニノフのほうは、フルトヴェングラーではなくオーマンディ指揮であり、おそらくラフマニノフも納得のテンポになっているはずである。

ブラームスのほうは、上記の演奏会と同じベルリン・フィルであり、重厚かつ劇的な名演が聴ける。

ただ、少し晩年の演奏様式に入っている感もなくはない。

上記の演奏会は、ルツェルン祝祭管との1947年ライヴ盤(CD)や、ウィーン・フィルとの1947年セッション盤(CD)のほうが、スタイルとしてはより近かったかもしれない(特に前者は大変に壮絶)。

ともかく、この3種のブラームス第1番の録音は、いずれ劣らぬ名演だと思う。

 

 

余談だが、ラフマニノフには下記のような演奏会もあった。

 

1910年1月16日、ニューヨーク

指揮:マーラー

管弦楽:ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団

プログラム

Bach/Mahler: Suite for Orchestra

Rachmaninov: Piano concerto No. 3 (Sergei Rachmaninov)

Wagner: Tristan und Isolde, Prelude and Liebestod

Smetana: The Bartered Bride, Overture

 

ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番の、初演の次(つまり2回目)の演奏会であり、指揮はなんとマーラーである。

この演奏会は、ウィキペディアによると、

 

“リハーサルの際、当時スラヴ系の音楽の演奏・解釈に不慣れだった楽団員がざわついたために、マーラーが「静かにしなさい。この曲は傑作だ。」と言ってオーケストラをなだめ、この演奏の為に時間になっても団員を帰さず、完璧を目指して長時間の練習を続けた。そのマーラーの根気にラフマニノフも感銘を受け、後にオスカー・フォン・リーゼマンに「ニキシュと同列に扱うに値する指揮者はマーラーだけだ。」と語った。”

 

とのことである。

フルトヴェングラーのときとは、態度がひどく異なる。

マーラーとフルトヴェングラーと、演奏自体はどのように違ったのだろうか。

両方とも、聴いてみたくて仕方がない。

 

 


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