日本センチュリー交響楽団 第220回定期演奏会 秋山和慶 シベリウス 交響曲第1番 ほか | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

日本センチュリー交響楽団

第220回定期演奏会

 

【日時】

2017年10月20日(金) 開演 19:00 (開場 18:00)

 
【会場】
ザ・シンフォニーホール (大阪)   

 

【演奏】
指揮:秋山和慶

ヴァイオリン:アリーナ・イブラギモヴァ

管弦楽:日本センチュリー交響楽団

(コンサートマスター:松浦奈々)

 

【プログラム】
ブラームス:大学祝典序曲 作品80

ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77

シベリウス:交響曲 第1番 ホ短調 作品39

 

※アンコール(ソリスト)

イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第5番 ト長調 より 第1楽章

 

 

 

 

 

センチュリー響の定期演奏会を聴きに行った。

というよりも、私にとってはアリーナ・イブラギモヴァを聴きに行ったというほうが正しい。

彼女の壮絶なリサイタルについては、先日の記事に書いた(その記事はこちら)。

あの演奏は、しっかり焼き付いてしまって未だに脳裏から離れない。

彼女は、今度はセンチュリー響の定期でブラームスのヴァイオリン協奏曲を弾くということで、聴き逃すわけにはいかない。

 

 

ブラームスの、ヴァイオリン協奏曲。

この曲の録音で私が好きなのは

 

●メニューイン(Vn) フルトヴェングラー指揮ルツェルン祝祭管 1949年8月29~31日セッション盤(NMLApple Music

●ハイフェッツ(Vn) ライナー指揮シカゴ交響楽団 1955年2月21、22日セッション盤(Apple Music

●オイストラフ(Vn) クレンペラー指揮フランス国立放送管 1960年11月セッション盤(NMLApple Music

●ユリア・フィッシャー(Vn) クライツベルク指揮オランダ・フィル 2006年12月セッション盤(NMLApple Music

●五嶋みどり(Vn) メータ指揮ミュンヘン・フィル 2013年2月13日ミュンヘンライヴ盤(動画)

 

あたりである。

多すぎる、と言われてしまうかもしれないが、この曲には名録音が多い。

後者2つは、私がいつも挙げているおなじみのヴァイオリニスト。

前者3つは、もっと古い録音である。

この曲には、ヴァイオリン協奏曲という以上に「ソロ・ヴァイオリン付きの交響曲」ともいうべき、悠然としたスケールの大きい趣があるので、前者3つの録音のような、往年の巨匠たちによる脂ののった分厚い演奏がしっくりくる。

これら3つは、指揮&オーケストラもパワフルでとても良い。

それに比べると、後者2つはよりすっきりとして現代的である。

ただ、その中でもユリア・フィッシャーは、比較的ヴィブラートをたっぷりと使った少し厚めの音で、表現もあまり凝りすぎず素直であり、この曲の悠々たる雰囲気がよく出ている。

その意味では、五嶋みどりの演奏が、今回のイブラギモヴァの演奏に近いといえば近かった。

細身のシャープな音で、かつ情熱と繊細さとを兼ね備えたラプソディックな表現。

しかし、五嶋みどりのほうは、指揮のメータの影響もあってか、シャープでありながらも悠然たるところがよく出ている。

それに比べると、今回のイブラギモヴァは、もともと五嶋みどりよりもさらにすっきりとした演奏スタイルということもあってか、この曲らしい大きなスケール感とは、やや噛み合わない印象だった。

彼女には、繊細きわまりない最弱音だとか、情熱的でスリリングな最強音だとか、凝りに凝った突き詰めた表現がよく似あう。

おおらかな味わいが売りのこの曲とは、相性があまり良くないように思った。

とはいえ、ところどころ出てくる和音奏法など完璧な音程で美しかったし、第1楽章のコデッタ(小結尾)主題など大変情熱的、ラプソディックで、かつ速い走句でも完璧で、すごかった。

カデンツァ(ヨアヒム版)の最後のほうからコーダにかけて、高音域で再現される第1主題の繊細な美しさも、特筆すべきものだった。

第3楽章では、彼女の完璧な超絶技巧がとりわけ遺憾なく発揮され、特にコーダは今までに聴いたこともないような最速のテンポで、かつ全く破綻がなく、素晴らしかった。

この曲本来の味わいとは違うにしても、高レベルの演奏であったことは間違いないと思う。

 

 

そして、アンコールのイザイ。

これこそは、上記のようなイブラギモヴァの特徴がぴったり合う曲の一つで、もう大変に素晴らしかった。

録音もされていて愛聴しているが、やっぱり生で聴くと音の繊細さがさらによく分かる。

たった数分の曲だが、これが聴けただけでも今回の演奏会に来た甲斐があったというものである。

 

 

秋山和慶の指揮は、テンポはあっさりめながら音楽の質としては比較的重厚なもので、ブラームスによく合っていたように思う。

「大学祝典序曲」、ヴァイオリン協奏曲、ともにそう思った。

後半のシベリウスも重厚で立派だったが、私としてはもう少し北欧の清冽な空気の感じられる演奏が好みである。

例えば藤岡幸夫などは、そういった「空気」の出せる一人だと思う。

 

 


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