京都の秋 音楽祭 開会記念コンサート 京都市交響楽団 広上淳一 ラフマニノフ 交響曲第2番 ほか | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

第21回 京都の秋 音楽祭 開会記念コンサート

 

【日時】

2017年9月17日(日) 開演 14:00

 

【会場】

京都コンサートホール 大ホール 

 

【演奏】
指揮:広上淳一(京都市交響楽団常任指揮者兼ミュージック・アドヴァイザー)

ピアノ:ルーカス・ゲニューシャス

管弦楽:京都市交響楽団

 

【プログラム】

すぎやまこういち:序奏MIYAKO
ショパン:ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調 op.21
ラフマニノフ:交響曲第2番 ホ短調 op.27

 

※アンコール(ソリスト)

デジャトニコフ:Echos from the Theatre より V. Chase Rondo

 

 

 

 

 

京都の秋 音楽祭の開会記念コンサートを聴きに行った。

去年も聴いたが(そのときの記事はこちら)、もうそれから一年経ってしまった。

時が経つのは本当に速いものである。

 

 

オーケストラは、いつもどおり京都市交響楽団。

今回の指揮は、広上淳一。

最初のプログラムのすぎやまこういちは、昨年と全く同じ曲である(昨年は初演だった)。

まぁ穏当な曲といったところ。

 

 

次は、ルーカス・ゲニューシャスのピアノで、ショパンのピアノ協奏曲第2番。

この曲の録音では、以前の記事にも書いたけれども、私は

 

●ポリーニ/井上道義/シュトゥットガルト放送響 1973年頃のライヴ盤(CD

●小林愛実/プリマ・ヴィスタ弦楽四重奏団 2011年1月13日 第12回ショパンコンクール in Asiaライヴ盤(CD

 

あたりが好きである。

滴るような若々しいロマンティシズムに溢れたこれらの演奏に比べると、今回のゲニューシャスは冷静な演奏スタイルだった。

彼はどうやら、基本的に弱音を主体に演奏していくタイプのピアニストらしい。

デュナーミク(強弱)の差をあまり大きく取らず、クライマックスの箇所でも中程度の音量にとどめていた。

また、テンポを揺らすこともあまりせず、全体的に淡々とした、落ち着いた感じの演奏であった。

しかし、彼の弱音はきわめて繊細にコントロールされ、ごく控えめながら情感も込められており、決してつっけんどんな感じはしなかった。

音色も、やや地味ではあったが、美しかった(ちなみに、ピアノはスタインウェイ)。

少し神経質な印象もあったけれども、これはこれで好感の持てる良い演奏だと感じた。

アンコールでも、彼の繊細かつ軽快な指さばきが堪能できた。

 

 

メイン・プロは、ラフマニノフの交響曲第2番。

この曲の録音では、私は

 

●プレトニョフ指揮ロシア・ナショナル管 1993年11月セッション盤(NMLApple Music

 

が好きである。

近代的なスマートさと、ロシア的な情緒連綿たる面とがうまく融合した、名盤だと思う。

私が初めてこの曲を知ったのはこの盤によってだが、第1楽章や第3楽章の主題のとろけるような美しさ、また第1楽章展開部~再現部や終楽章での圧倒的な迫力が、当盤以上に効果的に表現された演奏を、私は他に知らない。

今回の広上淳一の演奏は、弦の音色などプレトニョフ盤ほどの美しさには達していなかったけれども、彼特有の雄弁な動き(腕でというよりも、身体全体で指揮している感じ)でもって、ラフマニノフ特有の濃厚な情緒を引き出していたのは、なかなかの手腕だと感じた。

全体に、やや重めのテンポでじっくりと進めていく演奏だった。

重いといっても、スヴェトラーノフのような分厚さ、ごつさがあるわけではないけれど、第1楽章の第1主題における大きなリタルダンド(減速)はスヴェトラーノフばりだったし、第2主題での思いのたけを込めるかのような盛り上げ方も、「ロシア的」と言っていいほどだった。

そして、第1楽章の展開部から再現部にかけてのクライマックスにおける大きな迫力や、第2楽章のトリオ(中間部)から主部へとなだれ込む箇所でのスリリングなアッチェレランド(加速)は、上記プレトニョフ盤にも匹敵するものだった。

終楽章では、プレトニョフ盤ほどの躍動感は聴かれず、ややぼてっとした印象となってしまったけれども、それでも十分な迫力があった。

 

 

それにしても、ラフマニノフの交響曲第2番、生で聴くのは初めてだったが、傑作であることを再認識させてくれる演奏だった。

どことなくチャイコフスキーの交響曲に似ている気がする。

第1楽章のメランコリックな主題や熱狂的な長調のフィナーレといった点では第4番と、美しい緩徐楽章やモチーフの循環形式的扱いといった点では第5番と共通している。

とはいえ、やっぱりチャイコフスキーの曲とはどこか違っていて、「ラフマニノフらしさ」が随所に感じられるのが良い。

なんだかんだ言っても華やかなチャイコフスキーに対し、ラフマニノフからは「暗いロマン」が感じられる。

ラフマニノフは、ピアノ曲だけではなく、交響曲の分野でも、チャイコフスキーからショスタコーヴィチへと橋渡しをする重要な作曲家だと改めて感じた。

 

 


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