(ショパン国際ピアノコンクール in ASIA 受賞者記念アルバム) | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

今回は演奏会の感想ではなく、別の話題を。

KOBE国際音楽コンクール(記事はこちら)や相愛大学卒業演奏会(記事はこちら)で、ブラームスのピアノ・ソナタ第3番 第1楽章の素晴らしい演奏を聴かせてくれた高御堂なみ佳さんのCDが販売されていることを知ったので、購入してみた。

第16回ショパン国際ピアノコンクール in ASIAの、受賞者記念アルバムのCDである。

彼女は、このコンクールの大学生部門でなんと金賞を受賞したようである。

曲目は、ショパンのエチュード変イ長調 Op.10-10と、同じくショパンのピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 Op.58 第1楽章。

期待通り、素晴らしい演奏である。

ブラームスの演奏でも感じたことだが、彼女の演奏はソナタ形式のような、がっしりとした構造の曲によく合っていると思う。

このCDのショパンのソナタ第3番 第1楽章もソナタ形式で書かれており、その良さがよく伝わってくる演奏になっている。

まず、しっかりと底まで打鍵しているような、充実した音が聴かれる。

打鍵が浮ついておらず、まさに「ソナタ」にふさわしい音がする。

力強く、かといってごり押しの荒っぽい音でもなく、一音一音丁寧に奏された充実感のある音である。

また、テンポがよく安定している。

ほとんどのピアニストは、展開部に入ったところでテンポを速めたり、また展開部の真ん中あたり、第1主題のスタッカートによる和音上行動機を繰り返すクライマックス部分で、せき込むように前のめりのテンポを採ったりする。

しかし彼女は、これらの箇所でもしっかりとイン・テンポ(一定の安定した速度)を保っているのである。

この点もまた、いかにも「ソナタ」らしい。

イン・テンポといっても、グレン・グールドのような味も素っ気もない本当のイン・テンポではない(もちろん、グールドはグールドで、一種独特の面白い味わいがあるのだが)。

ほどよいテンポ・ルバート(テンポの揺らし)も入れながら、それを必要最小限にとどめて不要な「甘さ」を絶っているのである。

第2主題など、クレア・フアンチほどの華というか、歌のセンス(こちらの動画の01:30あたりから)はないにしても、しっとりと控えめに、かつ味わい深く奏され、れっきとした「ショパン」になっている(グールドのほうは、面白いけれども「ショパン」になっているとは言い難い気がする…)。

「ソナタ」らしさと「ショパン」らしさが、きちんと共存できている。

テクニック的にも、冒頭からしばらくしての和音による(右手は4度の音程)急速な音階下降音型ではやや弾きにくそうに聴こえるが、それ以外のところでは問題ない。

ソナタのほうについてばかり書いてしまったが、もう一方のエチュード op.10-10のほうも、確かな足取りが魅力の名演となっている。

最初のほうの、繰り返し部分でのスタッカートも、きれいに決まっている。

 

ところで、第12回の、同じくショパン国際ピアノコンクール in ASIAの受賞者記念アルバムのCDも、ついでに購入してみた。

小林愛実による、ショパンのピアノ協奏曲第2番の演奏が収録されているからである(ただしバックはオーケストラではなく弦楽四重奏)。

彼女も、やはりうまい。

このとき15~16歳くらいだと思うのだが、彼女特有の耽美的な表現はこの頃からすでに完成されていて、堂に入った演奏となっている。

ショパンのピアノ協奏曲第2番は、ショパンコンクールでもあまり演奏されず、名演がそれほど多くないということもあり(私はポリーニ/井上道義/シュトゥットガルト放送響による1973年頃のライヴ録音を偏愛しているけれども)、貴重な録音である。

 

 


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