(行ってみたい演奏会 その12 フルトヴェングラーのヴァーグナー「ニーベルングの指環」) | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

今回は演奏会の感想ではなく、別の話題を。

ここ数日同様、「もしもタイムマシンがあったなら行ってみたい演奏会」シリーズの続きである。

今回は、フルトヴェングラーの指揮によるヴァーグナーの「ニーベルングの指環」を取り上げたい。

 

 

フルトヴェングラーがその生涯で行った「ニーベルングの指環」の公演は、以下の通りである(なお、Rは「ラインの黄金」、Wは「ヴァルキューレ」、Sは「ジークフリート」、Gは「神々の黄昏」、Zは4部作ツィクルス上演を指す)。

 

①1915~1922年 マンハイム歌劇場での一連の公演(R、W、S、G)

②1916年3月11、12、15、19日 マンハイム歌劇場での公演(Z)

③1917年9月13、15、18、21日 バーデン=バーデン歌劇場での公演(Z)

④1917年9月28、30日、10月4、7日 マンハイム歌劇場での公演(Z)

⑤1928年9月30日 マンハイム歌劇場での公演(W)

⑥1928年10月17、19、23日、11月15日 ウィーン国立歌劇場での公演(R)

⑦1933年6月13、15日、1935年6月4日、1937年9月8、11日 パリ・オペラ座での公演(W)

⑧1933年11月29日、12月5、14日、1934年5月10日 ベルリン国立歌劇場での公演(R)

⑨1933年11月30日、12月6、15日、1934年1月11日、5月11日、1935年11月8日 ベルリン国立歌劇場での公演(W)

⑩1934年10月6日 ベルリン国立歌劇場での公演(S)

⑪1934年10月16日 ベルリン国立歌劇場での公演(G)

⑫1934年10月20、21、24、26日、11月14、15、18、21日 ベルリン国立歌劇場での公演(Z)

⑬1936年2月13、17日、1939年11月29日、1940年1月1日 ウィーン国立歌劇場での公演(W)

⑭1936年7月23、24、25、27日 バイロイト音楽祭での公演(Z)

⑮1937年4月10、11、13、15日 ベルリン国立歌劇場での公演(Z)

⑯1937年5月13、17、19、21、24、26、28日、6月1日 コヴェントガーデン・ロイヤルオペラハウスでの公演(Z)

⑰1937年7月26~29日、8月13~16日 バイロイト音楽祭での公演(Z)

⑱1938年5月18、20、24、27、30日、1、3、7日 コヴェントガーデン・ロイヤルオペラハウスでの公演(Z)

⑲1938年12月27、29日 パリ・オペラ座での公演(S)

⑳1939年6月9、13日 チューリヒ歌劇場での公演(W)

㉑1940年10月30日、11月26日 ウィーン国立歌劇場での公演(G)

㉒1942年6月11、14日 チューリヒ歌劇場での公演(G)

㉓1942年11月20、22日 スウェーデン王立歌劇場での公演(W)

㉔1944年6月14、18日 チューリヒ歌劇場での公演(S)

㉕1944年10月29日 ベルリン国立歌劇場での公演(G)

㉖1950年3月2、4、9、11、13、16、22、24、26日、4月2、4、6日 ミラノ・スカラ座での公演(Z)

㉗1952年1月23日 ウィーン国立歌劇場での公演(W)

㉘1952年6月29日 チューリヒ歌劇場での公演(W)

㉙1953年10月26、29日、11月3、6、10、13、17、20、24、27日 ローマ RAIスタジオでの演奏会形式上演(Z)

 

このうち、歌手の配役が最も豪華だと私が思うのは、⑯の2回目のツィクルスの

 

1937年5月24、26、28日、6月1日、コヴェントガーデン・ロイヤルオペラハウス

指揮:ヴィルヘルム・フルトヴェングラー

管弦楽:ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

プログラム

Wagner: der Ring des Niebelungen
(Kirsten Flagstad, Maria Müller, Kerstin Thorborg, Franz Völker, Lauritz Melchior, Rudolf Bockelmann)

 

である。

フルトヴェングラーの指揮、キルステン・フラグスタートのブリュンヒルデ、ラウリッツ・メルヒオールのジークフリート、という比類ない3人が揃うのは、後にも先にもこの公演のみ。

選ぶなら、もう、これしかない。

ただし、贅沢を言うならば、ヴォータンはできればルドルフ・ボッケルマンでなく、伝説のヴォータン歌いであるフリードリヒ・ショルで聴きたかった(特に、魔の炎の音楽)。

また、メルヒオールについてはジークフリートだけでなく、ジークムントを歌うところも聴きたい。

そのため、「ヴァルキューレ」だけは、⑦の公演の

 

1933年6月13、15日、1935年6月4日、パリ・オペラ座

指揮:ヴィルヘルム・フルトヴェングラー

管弦楽:パリ・オペラ座管弦楽団

プログラム

Wagner: die Walküre

(Lotte Lehmann, Frida Leider, Lauritz Melchior, Friedrich Schorr, Alexander Kipnis)

 

もできれば聴きたいところである(ロッテ・レーマンのジークリンデも聴ける)。

 

 

上記の2つの公演のうち、上のものについては、なんと断片のみながら録音が残されている!

 

●ヴァーグナー 「ヴァルキューレ」「神々の黄昏」(断片) フルトヴェングラー指揮ロンドン・フィル 1937年5月26日、6月1日ロンドンライヴ盤(NMLApple Music

(キルステン・フラグスタート、マリア・ミュラー、ケルスティン・トルボルク、ラウリッツ・メルヒオール、ヘルベルト・ヤンセン、ルートヴィヒ・ヴェーバー、ルドルフ・ボッケルマン、コヴェントガーデン王立歌劇場合唱団)

 

この音源はもう、人類の歴史的遺産と言わねばなるまい。

フルトヴェングラー、フラグスタート、メルヒオール、3人とも全盛期で、その素晴らしいことといったら並ぶ者がない。

あともう2つ、ローマでの「指環」全曲放送録音である㉙の公演の

 

●ヴァーグナー 「ニーベルングの指環」 フルトヴェングラー指揮ローマRAI響 1953年ローマライヴ盤(CD

(マルタ・メードル、フェルディナント・フランツ、ルートヴィヒ・ズートハウス、ローマRAI合唱団)

 

と、フルトヴェングラーの死の直前のセッション録音で、彼の「白鳥の歌」となった

 

●ヴァーグナー 「ヴァルキューレ」 フルトヴェングラー指揮ウィーン・フィル 1954年セッション盤(CD

(マルタ・メードル、ルートヴィヒ・ズートハウス、フェルディナント・フランツ、レオニー・リザネク)

 

も、絶対に聴かなければならない。

上記3種の録音は、後世の私たちに遺された至宝と言っても過言ではないと思う。

 

 

ちなみに、フルトヴェングラー指揮ではないが、上記のショルのヴォータン、メルヒオールのジークムント、レーマンのジークリンデが聴ける録音もある。

 

●ヴァーグナー 「ヴァルキューレ」第2幕 フリッツ・ライナー指揮サンフランシスコ歌劇場管 1936年11月13日サンフランシスコライヴ盤(NMLApple Music

(キルステン・フラグスタート、キャスリン・メイズル、フリードリヒ・ショル、ロッテ・レーマン、ラウリッツ・メルヒオール、エマヌエル・リスト)

 

歌手は最高の布陣。

ここでは全盛期のフラグスタートの「ホーヨートーホー」も聴ける!

指揮があのフリッツ・ライナーなのも嬉しい。

大変貴重な録音なので、ここでついでに紹介させていただいた。

 

 

「ニーベルングの指環」は、「トリスタンとイゾルデ」と並んで、ヴァーグナーの楽劇の中でもとりわけフルトヴェングラーによく合った曲ではないだろうか。

「ニーベルングの指環」、全4部作。

この、音楽史上まれにみる、途方もなく壮大で悲劇的、宿命的な大叙事詩を、余すところなく表現することにかけて、彼以上の人はいない。

 

 


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