(ギリシア悲劇の音楽) | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

今回は演奏会の感想ではなく、別の話題を。

以前の記事(こちら)や、先日の記事のコメント欄(こちら)で、古代ギリシアの時代に演じられたギリシア悲劇の音楽は、今となっては全く分からず、想像するしかないし、今後も永久に解明しえないという旨のことを書いた。

 

しかし、である。

以前買っていた本を読み返してみたところ、なんと当時の音楽の断片が40ほど残されている、との記載があった。

これは驚き!

買ったときは読み飛ばしていたのかもしれない。

それらの音楽の断片は、エウリピデスの「アウリスのイピゲネイア」と「オレステス」につけられたものが主であるとのこと。

この本には、「オレステス」につけられた音楽の断片が掲載されている。

 

 

(M.カッロッツォ、C.チマガッリ 著、川西麻理 訳 「西洋音楽の歴史」 第1巻 29ページより引用)

 

エジプトでパピルスに記録され、現代まで残されたとのこと。

何とも不思議なメロディである。

この旋法は、何だろうか。

私が考えたところによると、

 

「ニ調のエンハルモニオン(四分音階的ゲノス)の古代ギリシア・ヒポドリア旋法」

 

あたりではないかと思うのだが、それにしては「G」(ソ)の音が入っているし、よく分からない。

これは臨時の音だろうか。

いずれにしても、エンハルモニオン(四分音階的ゲノス)が使われていることは確かである(四分音の記号があるため)。

もしかしたら、この部分は悲劇的な運命を暗示する歌詞であるため、ディアトノン(全音階的ゲノス)やクローマティコン(半音階的ゲノス)でなく、エンハルモニオン(四分音階的ゲノス)を使用し、緊張感を高めているのかもしれない。

 

残されているのは断片に過ぎないが、それでも興味深いことこの上ない。

当時のギリシア悲劇では、こんなメロディが歌われていたのだ。

これらの断片をもとに、誰か古代ギリシアの旋法を会得して、「イピゲネイア」でも「オレステス」でも、補筆完成させてくれないものだろうか(補筆というよりはもうほとんど作曲と言っても過言ではないだろうけれど)。

きっと、クック版のマーラー交響曲第10番や、ツェルハ版のベルク「ルル」に勝るとも劣らない、素晴らしい仕事になることだろう。

そして、それを現在分かっている限り忠実な形態で、舞台で再現してほしいものである。

四分音があるため、歌うのは本当に難しいだろう。

もしかしたら、十二音技法で書かれた曲よりも難しい可能性だってある。

それでも、どうにか実現してほしい。

聴き手にとっても、現代の私たちには耳慣れないメロディ満載になりそうだが、それこそ現代音楽のように新鮮な響きが楽しめるかもしれない。

 

それにしても、2500年も前の音楽が、ほんの一端といえども、現代において分かるなんて!

全く知らなかった今までに比べて、上記の譜面を見た今では、当時の音楽が格段にはっきりとイメージできるようになった。

文字というものは、本当に素晴らしい、人類最高の発明品である。

パピルス万歳!

 

 


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