兵庫芸術文化センター管弦楽団 第98回定期 ロフェ ムソルグスキー/ラヴェル「展覧会の絵」 ほか | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

兵庫芸術文化センター管弦楽団

第98回定期演奏会

ラヴェル 色彩のオーケストラ

 

【日時】

2017年8月12日(土) 開演 15:00

 

【会場】

兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール

 

【演奏】

指揮:パスカル・ロフェ
ピアノ:萩原麻未
管弦楽:兵庫芸術文化センター管弦楽団

(コンサートマスター:四方恭子)

 

【プログラム】

ラヴェル:クープランの墓
ラヴェル:ピアノ協奏曲 ト長調
ムソルグスキー(ラヴェル編):組曲「展覧会の絵」

 

※アンコール(ソリスト)

ドビュッシー:「ベルガマスク組曲」 より 「月の光」

 

※アンコール(オーケストラ)

ムソルグスキー(ラヴェル編) : 組曲「展覧会の絵」 より 「卵の殻をつけた雛の踊り」

 

 

 

 

 

PACオケの定期演奏会を聴きに行った。

まず、萩原麻未のピアノによる、ラヴェルのピアノ協奏曲について。

彼女の演奏は、私はちょうど2年前、2015年9月にも聴いていて(京響の定期)、そのときも同じラヴェルのピアノ協奏曲だった。

ジュネーブ国際音楽コンクールで優勝を勝ち取った、彼女の得意曲である。

 

ラヴェルのピアノ協奏曲というと、私は、

 

●アルゲリッチ/アバド/マーラー・ユーゲント管 2002年8月25日 ザルツブルク祝祭大劇場でのライヴ

 

の衛星生中継(ラジオ放送)に魅せられて以来、これをしのぐ演奏に未だ出会っていない(あれからもう15年も経ってしまった!)。

放送当時、私はこれをエアチェックしていたので、今回久しぶりに聴いてみたのだが、もうすごいの一言。

冒頭ピッコロによる主題の後に出てくる、ピアノの幅の広い上行・下行グリッサンド、ここからしてもう本当に生き生きしていて、まるで取れたてぴちぴちの活きのいい魚のようである。

その後も全曲にわたって実にスリリングで、なおかつ第2楽章など本当に豊かな情感、音楽的センスにあふれている。

暴れ馬のようなアルゲリッチとまだ若いオーケストラ団員たち(緊張したのかミスもある)とをうまくまとめ上げ、洗練されたラヴェルの世界を実現するアバドの手腕も見事。

今思うとこの頃は、アルゲリッチもアバドも脂の乗り切った、全盛期だったのだろう。

これを聴いた後では、ツィマーマンもロルティもトリスターノも皆うまいながらも少し真面目すぎて「色気」や「遊び心」に欠ける気がするし、アルゲリッチ自身の他の録音でさえおとなしくて物足りなくなってしまう。

 

つい前置きが長くなったが、今回の萩原麻未の演奏について。

2年前も同じことを感じたのだったが、今回はよりはっきりと、良い演奏だと思った。

アルゲリッチのような覇気や勢いは、やはり聴かれない。

けれど、美しい情感の表現という点においては、決してアルゲリッチにもひけを取っていなかった。

特に、第1楽章再現部のコデッタ主題(と言ったらいいのか、右手でオブリガート・トリルを弾きながら、左手でメロディと伴奏とを同時に弾く箇所)や、第2楽章冒頭といった箇所では、実にたおやかで美しい音楽表現が聴かれた。

繊細な弱音に、絶妙なルバート(テンポの揺らし)。

アルゲリッチの自由奔放なセンスとはまた違った、より丁寧で慎ましやかな情感があった。

萩原麻未の出す音は大きいほうではなく、オケに埋もれてしまうこともあったが、それでも要所要所で音がよく通っており、不足は感じなかった。

例えば、終楽章再現部直前、第2主題が展開される部分で、左手が右手を飛び越えて繰り返し奏する、高音部の三度の和音。

こういうところのさりげない際立たせ方が、印象的だった(力むことなく、ふわっとしているのに、音がよく通る)。

全体に、私がアルゲリッチの演奏から思い描いていたこの曲のイメージとはまた違った、「大和撫子」を思わせると言ったらいいのか、萩原麻未ならではの演奏スタイルがしっかりと確立されている感があった。

 

アンコールのドビュッシー「月の光」も、最弱音による繊細な幻想の世界であり、きわめて美しかった。

自由で幻想曲風なルバートのかけ方は、やや気ままな感じで私の好みとは少し違っていたが、弱音への鋭敏な感性と繊細な扱いはさすがで、先日のパスカル・ロジェのおおらかな(悪く言うとやや大味な)演奏よりも良いと感じた(そのときの記事はこちら)。

 

 

さて、今回の演奏会のプログラムは、上記ピアノ協奏曲以外の曲も、全てラヴェルが作曲または編曲した曲が選ばれていた。

「クープランの墓」と「展覧会の絵」である。

パスカル・ロフェの指揮は、両曲ともに、すっきりと響きのよく整理されたものとなっており、好感が持てた。

「展覧会の絵」の終曲「キエフの大門」に出てくる金管や木管によるアンサンブルの部分も、ハーモニーがよくコントロールされていて美しかった。

カンブルラン/読響盤(CD)ほどに洗練された響きの調和はさすがに聴かれなかったけれども、どんちゃんと大音量で騒ぎ立てるだけの演奏では決してなく、アプローチとして好ましく思った。

 

 


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