(三浦謙司のブラームス&ショパン バラード集) | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

今回は演奏会の感想ではなく、別の話題を。

先日、第1回Shigeru Kawai国際ピアノコンクールで、三浦謙司が優勝したらしい。

聴きに行かれたブロガーさん方の記事によると、やはり素晴らしい演奏だったとのこと。

三浦謙司というと、2015年浜コン(浜松国際ピアノコンクール)での演奏が忘れがたいし、昨年5月に聴きに行ったコンサートも良かった(そのときの記事はこちら)。

彼が優勝するのも、むべなるかな、といったところである。

 

というわけで、彼のデビューCDである、ブラームス&ショパンのバラード集を聴いてみた(Apple Music)。

おそらくカワイのピアノが使われており、スタインウェイやヤマハのような芳醇な音色というよりは、やや乾いた感じの、こざっぱりした音である。

「陶酔」というよりは、「覚醒」といったような印象。

そのような音色は、彼の音楽性によく合っている気がする。

彼は、音楽に溺れすぎることなく、明晰に、かつ豊かな音楽的センスで弾き進めていく。

ブラームスのバラードも良いし、もう多数のピアニストによって弾きつくされている感のあるショパンのバラードも、とても良い。

例えば、ショパンのバラード集にはチョ・ソンジンの録音もあり(NMLApple Music)、そちらは本当に細かな感情表現やニュアンス付けが施されていて大変素晴らしいのだけれども、その反面、やや凝りすぎているきらいもあって、そのためか音楽がところどころ停滞してしまうような印象を受ける(以前のチョ・ソンジンは、もっとスムーズに弾いていたように思うのだが…)。

それに比べると、三浦謙司のほうは、チョ・ソンジンほどの繊細な表現は聴かれないにしても、より自然な呼吸で音楽が流れていき、かつ決して単調ではなく、十分にセンスの感じられる演奏となっている。

 

そんなわけで、ショパンのバラード全集の録音としては、この三浦謙司盤が現時点では一番好きかもしれない。

個々の曲で見ると、物足りない点もないではない。

例えば、第1番ではポリーニのライヴ盤(CD)やフアンチのショパンコンクール時の演奏(動画はこちら)のように、あるいは第4番では中川真耶加のショパンコンクール時の演奏(動画はこちら)のように、コーダでの畳みかけるような切迫感がもう少し欲しいところである。

しかし、そこまではしないのが三浦謙司らしさなのだろう。

少なくとも、バラード4曲全てを収録した盤で、彼の演奏よりも良いと感じたものは、今のところ思い浮かばない。

広く聴かれてほしい一枚である。

 

 


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