松浦愛美 ピアノリサイタル
~風が運んでくれたドイツの旋律~
【日時】
2017年8月6日(日) 開演 17:30 (開場 17:00)
【会場】
アマービレ楽器 新サロン (大阪府茨木市)
【演奏】
ピアノ:松浦愛美
【プログラム】
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第17番 ニ短調 op.31-2 「テンペスト」
リスト:ハンガリー狂詩曲第8番 嬰へ短調
シューマン:交響的練習曲 op.13
※アンコール
ショパン:マズルカ第1番 嬰へ短調 op.6-1
ブログで読者登録をさせていただいているピアニスト松浦愛美さんのコンサートに行った。
もう4年もドイツに留学されているそう。
そして、本場のさまざまなコンクールで優勝されているとのこと。
外国での生活自体大変だろうに、すごいものである。
ドイツの空気を届けたいということで、今回はドイツの作曲家か、あるいはドイツにゆかりのある作曲家の曲が選ばれていた。
そんなことも関係してか、演奏もどことなくドイツ風の感触がした。
アンコールのショパンだけは、あまりドイツに関連の深い作曲家ではないけれど(ショパンがパリで最初に出版した記念すべきマズルカということで、今回特に選んだとのこと)、それでさえドイツらしい感じがあって面白かった。
一つには、ピアノがスタインウェイやヤマハでなく、W. ホフマンというベヒシュタインの子会社により製造されているブランドのものだったことも、その原因かもしれない。
しかし、そればかりではなさそうである。
今回特に良いと思ったのが、シューマンの交響的練習曲(なお、遺作の5つの変奏は、今回演奏されなかった)。
私は、この曲の録音では、
●クレア・フアンチの2013年クライバーンコンクールライヴ盤(NML)
●今田篤の2017年モントリオールコンクールライヴ動画(こちらの2:18:00あたりから)
などが好きである。
今回の松浦さんの演奏は、上記の二人とはまた違って、あまり幻想的な雰囲気を前面に押し出さず、歌いすぎることなくかっちりとした感じに仕上がっていて、「あぁこれがドイツ流なのか」と感じた。
テンポもそれほど揺らさないし、禁欲的な演奏と言ってもいいかもしれない。
歯切れの良い和音がカノンを繰り広げる第4曲では、曲想が盛り上がるにつれて、一つ一つの和音の長さを長めに取るようにする演奏が多いと思うのだが(ポリーニなどは最後のほう、ペダルで完全につなげている)、松浦さんの場合は最後まで変えることなく、盛り上がっても同等の歯切れ良さを保っていた。
また、連続した4つの音が上行したり下行したりする第8曲では、この4つの音を弾く際にペダルをしっかり踏んでいる演奏が多いと思うのだが(ポリーニなどそう)、松浦さんはペダルを踏まないか、あるいはかなり浅めにしており、この連続4音が明瞭に分離して聴こえた。
全体に、雰囲気重視の演奏というよりは、くっきりと明瞭度の高い造形的な音楽づくりといった印象だった。
では、シューマン特有の幻想は聴かれないのかというと、そんなことはなかった。
禁欲的な中にも、シューマンならではの「歌」や情熱はよく伝わってきた。
それに、単調にならないようにするための工夫もそこここに見受けられた。
例えば、上記の第4曲では、和音によるカノンをリピートする際、1回目はフォルテ(強音)で、2回目はピアノ(弱音)で、というように弾き分けられていた。
また、上記の第8曲では、第4曲とは対照的に、曲想が盛り上がるにつれてペダルがやや深めになり(それでも連続4音の明瞭性は保たれていたが)、控えめながらもドラマティックな味わいがあった。
演奏前のトークによると、シューマンの妻クララは、お父さんが大変厳しくて、シューマンとの結婚を認めてくれないばかりか、会うことも、シューマンの曲を弾くことすら禁じられていたらしい。
それでもクララは、シューマンの地元でのリサイタルのときばかりは、プログラムをこっそり差し替えて、この「交響的練習曲」を弾いたとのこと。
「力強く、知的に、正確に」弾く素晴らしいピアニスト、とリストから評されたクララ。
もしかしたら、今日のような感じの演奏をしたのかもしれない。
最後に。
この記事を、松浦さんご本人が読まれるようなことがあるかもしれないので、「ナマイキ書いてごめんなさい!」と謝らせて下さいm(_ _)m
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