新国立劇場 東京交響楽団 飯守泰次郎 ヴァーグナー 「ジークフリート」 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

新国立劇場

リヒャルト・ワーグナー

楽劇「ニーベルングの指環」第2日

<新制作>

ジークフリート

 

【日時】

2017年6月4日(日) 開演 14:00

 

【会場】

新国立劇場 オペラパレス (東京)

 

【スタッフ&キャスト】

指揮:飯守泰次郎

演出:ゲッツ・フリードリヒ

美術・衣裳:ゴットフリート・ピルツ
照明:キンモ・ルスケラ
演出監修:アンナ・ケロ
演出補:キム・アンベルラ
舞台監督:村田健輔


ジークフリート:ステファン・グールド

ミーメ:アンドレアス・コンラッド

さすらい人:グリア・グリムスレイ

アルベリヒ:トーマス・ガゼリ

ファフナー:クリスティアン・ヒュープナー

エルダ:クリスタ・マイヤー

ブリュンヒルデ:リカルダ・メルベート

森の小鳥:鵜木絵里、九嶋香奈枝、安井陽子、吉原圭子

森の小鳥(ダンサー):奥田花純(新国立劇場バレエ団)

 

管弦楽:東京交響楽団

協力:日本ワーグナー協会

芸術監督:飯守泰次郎

 

【プログラム】

ワーグナー:舞台祝祭劇 『ニーベルングの指環』 第2日 《ジークフリート》

 

 

 

 

 

新国立劇場のヴァーグナー「ジークフリート」を観に行った。

新国立劇場に行くのは初めて。

わが国の誇る新国立劇場、それも新制作、歌手は粒ぞろい、さらに指揮はヴァーグナーを得意とする飯守泰次郎、というわけで悪かろうはずはない。

ただ、どこかおとなしいような印象が拭えなかった。

以前の記事にも書いたが(そのときの記事はこちら)、飯守泰次郎のアプローチは往年の巨匠たちの伝統を受け継いだ悠然たるものだけれども、あまりドラマティックにはせず比較的静的であることが多い気がする。

以前に聴いた「トリスタン」第三幕やブルックナー交響曲第7番などではそういったアプローチがよく合っていたが、「ジークフリート」ではもっと推進力、ドラマティックな迫力が欲しいと思ってしまう。

例えば、ヤング/ハンブルク州立歌劇場盤、ティーレマン/ウィーン国立歌劇場盤、ヤノフスキ/ベルリン放送響盤などでは、そのような覇気が感じられる。

あるいは、もっと古いところでは、フルトヴェングラー/RAIローマ響盤など、推進力があるというよりはかなり重いテンポだが、それでも要所要所での迫力や凄みは圧倒的である(フォルテの部分はもちろん、ピアノの部分でもかなりの緊張感がある。第二幕への前奏曲の不気味な恐ろしさ!)。

まぁ、飯守泰次郎の場合はそれをしないのが持ち味かもしれないし、特に第三幕の愛の場面でのおおらかで自然な表現は大変美しかった。

ただ、全体的にはやや緩い印象で、あまり引き締まらないような感じがしてしまったのも否めないところである。

贅沢というのは自分でも分かってはいるのだが。

昨年の東京・春・音楽祭でのヤノフスキの「ジークフリート」は、一体どのような演奏だったのだろうか、とつい考えてしまう…。

 

歌手では、何といってもタイトルロールのステファン・グールド。

録音で聴く限り、彼は現代最高のヘルデン・テノールといっても過言ではないと思われる。

そんな彼の歌唱を初めて聴けるということで、期待は高まった。

いざ聴いてみると、確かに輝かしい声であり、他の歌手からは決して聴けない類のものだったが、第一幕での登場シーンや「鍛冶の歌」など、上記のティーレマン盤やヤノフスキ盤におけるグールド自身の歌唱と比べると、輝かしさが減じてしまっていた。

ただ、第二・三幕では十分に素晴らしかったし、出ずっぱりの大変な役柄だし、仕方ないか。

生演奏が聴けただけでも良かった。

 

その他の歌手も、ミーメ役のアンドレアス・コンラッド、アルベリヒ役のトーマス・ガゼリ、ファフナー役のクリスティアン・ヒュープナー、エルダ役のクリスタ・マイヤー、そしてブリュンヒルデ役のリカルダ・メルベートなど、皆ハイレベルの歌唱を聴かせてくれた。

森の小鳥役は4人いて、ややムラはあるものの悪くなかった。

さすらい人役のグリア・グリムスレイは少し迫力に乏しい気がしたが、若く元気だった「ラインの黄金」や「ヴァルキューレ」でのヴォータンと違って、「ジークフリート」でのさすらい人は高齢のはずであり、これくらいがちょうどいいのかもしれない。

と言いつつ本当は、それこそ伝説のヴォータン歌いであるフリードリヒ・ショルのような威厳に満ちた歌唱が大好きなのだが(NML)。

まぁ、そんなことを言いだすと、ジークフリートだってラウリッツ・メルヒオール(上記ショルと同盤)やルネ・コロ(Apple Music)といった往年の名ヘルデン・テノールの「向かうところ敵なし」な輝かしい歌唱が大好きで…などと延々続いてきりがなくなってしまうので、やめておく。

 

演出は、ヴァーグナーの意図を「再解釈」したようなものではなく、比較的ノーマルなもので、音楽を邪魔することなく好感が持てた。

第三幕の岩山のシーンでは、それまでの写実的な演出から、やや抽象的な演出に変わっており、なかなか美しかったように思う。

 

いろいろ文句のようなことも書いてしまったが、良い体験ができたと思う。

これで、アダム・フィッシャー/ウィーン国立歌劇場の「ヴァルキューレ」、ティーレマン/シュターツカペレ・ドレスデンおよび沼尻竜典/京響の「ラインの黄金」、ヤノフスキ/N響の「神々の黄昏」に続いて、今回の「ジークフリート」で指環四部作全ての実演に接することができた。

後は、「トリスタン」「マイスタージンガー」「パルジファル」もぜひ観に行ってみたい。

そしていつか、バイロイト音楽祭にも行ってみたいものである。

叶わぬ夢かもしれないけれど。

 

 


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