第22回KOBE国際音楽コンクール 本選会 弦楽器部門 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

第22回KOBE国際音楽コンクール 本選会 弦楽器部門

 

【日時】

2017年1月7日(土)

 

【会場】

ハーバーホール(神戸市産業振興センター3階)

 

【審査員】

小栗 まち絵(相愛大学教授・ヴァイオリン)
玉井 菜採(東京藝術大学准教授・ヴァイオリン)
林 裕(神戸女学院大学講師・チェロ)
マウロ・イウラート(HARMONIA KOBE 代表・ヴァイオリン)

 

 

 

 

 

神戸国際音楽コンクールを聴きに行った。

入場無料で聴けるのが嬉しい。

今日は金管楽器部門と弦楽器部門が開催されたが、弦楽器部門のC部門(大学・一般)のみを聴いた。

以下は、その感想である。

なお、全参加者の一覧が掲載されたプログラムが配布されたが、当コンクールの公式サイトには入賞者のみしか掲載されていないため、念のため当ブログでも名前の記載は入賞者のみとしておく。

 

C部門

 

●19番(F, 大学1年, Vc) ハイドン:チェロ協奏曲第2番 第1楽章

音程にやや難があり、今後のがんばりに期待したい。

 

●20番(F, 大学1年, Vn) ヴィエニャフスキ:「ファウスト」による華麗なる幻想曲 Op.20

冒頭はきれいな音だったが、途中の和音の部分は音程の不安定さが目立ってしまった。

 

●21番(F, 大学1年, Vn) イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番 ニ短調 「バラード」

音程が安定しており、さすがな演奏。ただ、欲を言うと、極めて繊細なピアニシモだとか、もう少しこだわりの表現があればなお良かったとも思った。

 

●22番(F, 大学1年, Vn) モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第5番 イ長調 第1楽章

ヴィブラートのしっかりかかった、華やかな音色がなかなか良い。ただ、モーツァルトらしいふわっと軽やかでエレガントな表情がもう少しほしかった。

 

●23番(F, 大学2年, Vn) ショーソン:詩曲 Op.25

低音はややミシミシした音色で、深々とした広がりはあまり感じられなかったが、高音部は大変美しい音色で良かった。

 

●24番(F, 大学2年, Vn) バルトーク:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第1楽章

本格的な、求心的な表現で、音程も安定しており、かなり良かった。

 

●25番(F, 大学3年, Vn) プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番 ニ長調 第1楽章

繊細な弱音が美しかった。テクニックも万全で、音程も安定している。ただ、この曲のあまりにも神秘的というか、個性的な性格を鑑みると、最後のほうではやや単調さを感じてしまうきらいがなくはなかったけれども。

 

●26番(F, 大学3年, Vn) イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第4番 ホ短調 第1, 3楽章

テクニックは安定しているが、全体的に元気なフォルテ(強音)が主体で、単調な印象であり、もう少し繊細なピアニシモなど突き詰めた表現がほしかった。

 

●27番(F, 大学4年, Vn) チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 第1楽章

音程は悪くはないが全体に表現が練れきっていない印象で、今後のがんばりに期待したい。

 

●28番(F, 大学生, Vn) ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲 イ短調 第1楽章

テンポがゆっくりめで、安全運転な印象。もう少し躍動感がほしい。しかし、音色はけっこうきれいで、音程も安定している。そういう意味では安心して聴ける。個人的に好きな曲の一つだが実演される機会は少なく、生で聴けるのはありがたかった。

 

●29番(M, 大学4年, Vn) ブロッホ:ニーグン

おそらく初めて聴く曲。音の出し方がしばしば荒削りだが、男性らしい勢いがあり、ときにはっとするような印象深い表現をするのが面白い。

 

●30番(F, 大学院1年, Vn) ミルシテイン:無伴奏ヴァイオリン「パガニーニアーナ」

難曲をしっかりとこなしていた。ただ、例えば2016年10月に聴いた大阪国際音楽コンクールのガラではKarolina Nowotczynskaが同曲を演奏しており、大変表情豊かで迫力があったが、それと比べるとおとなしい。音程も概ね安定はしているがときに少し怪しくなることも。

 

●31番(F, 大学院1年, Vn) イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第4番 ホ短調 第1楽章

ドレスでなくズボンであり、上下ともに黒一色のシックな衣装で、驚いた。これは普通の演奏ではないかも、と期待したが、実際にかなり成熟した演奏で、グリッサンドなども教科書的でない、堂に入った表現だった。ときどき音程が不安定になるが(全体的には概ね安定している)、そんなことはほとんど気にしていないような飄々たる雰囲気があった。

 

●32番(M, 大学卒後, Vn) シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 第1楽章

まれにはっとさせるような表現もあるが、全体的には完成度がやや甘く、今後のがんばりに期待したい。

 

●33番(M, 大学卒後, Va) シューマン:おとぎの絵本

表情に変化があまりなく、やや単調な印象で、今後のがんばりに期待したい。

 

●34番(F, 大学院修士課程修了, Vn) イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第6番 ホ長調 Op.27-6

辞退とのことであった。

 

●35番(F, 音楽院卒後, Vn) イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番 イ短調 第1楽章

堂に入った表現で、世界観が確立されている感じ。音程はあまり安定していないのだが、下手というよりはあまり気にしていないように聴こえる。少し日本人離れしたような印象もあり、表現に香りがある。

 

●36番(M, 大学3年, Vc) ショスタコーヴィチ:チェロ協奏曲第1番 変ホ長調 第1楽章

安定感のあるしっかりとした音色が良い。表現も分厚さやふくらみがあって、ショスタコーヴィチの暗いロマンをよく実現していたように思う。強音で音色がややガサガサするのが玉に瑕ではあるが。

 

●37番(M, 大学4年, Vc) エルガー:チェロ協奏曲 ホ短調 第4楽章

悪くはないのだが、さきほどのショスタコーヴィチを弾いた人のような安定感や表現力はない。

 

●38番(M, 音楽院卒後, Vc) ポッパー:ハンガリー狂詩曲 Op.68

安定した演奏で、なかなか良い。安心して聴ける。

 

●39番(F, 大学院修士課程2年, マンドリン) カラーチェ:マンドリン協奏曲第1番 アンダンテとポロネーズ

連続するトレモロが印象的だが、マンドリン演奏の良し悪しはよくわからない。まずまずといった印象か。

 

●40番(M, 大学院修了, 馬頭琴) モンティ:チャルダッシュ

この曲を馬頭琴というアジア系の楽器で奏するという、斬新な試み。馬頭琴の音色は落ち着いていて味わい深く、もしかしたらヴァイオリンによる原曲よりも良いかも? ただ、演奏のほうは音程がずっと不安定で、試みが良いだけにやや残念だった。

 

以上より、もし私が審査員だとすると、下記のように順位を決めるだろう、と考えてみた。

 

最優秀賞

31番(F, 大学院1年, Vn) イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第4番 ホ短調 第1楽章

 

優秀賞

35番(F, 音楽院卒後, Vn) イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番 イ短調 第1楽章

36番(M, 大学3年, Vc) ショスタコーヴィチ:チェロ協奏曲第1番 変ホ長調 第1楽章

 

奨励賞

21番(F, 大学1年, Vn) イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番 ニ短調 「バラード」

23番(F, 大学2年, Vn) ショーソン:詩曲 Op.25

24番(F, 大学2年, Vn) バルトーク:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第1楽章

25番(F, 大学3年, Vn) プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番 ニ長調 第1楽章

30番(F, 大学院1年, Vn) ミルシテイン:無伴奏ヴァイオリン「パガニーニアーナ」

38番(M, 音楽院卒後, Vc) ポッパー:ハンガリー狂詩曲 Op.68

 

奨励賞惜しいで賞(実際にはそんなものはないが)

22番(F, 大学1年, Vn) モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第5番 イ長調 第1楽章

26番(F, 大学3年, Vn) イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第4番 ホ短調 第1, 3楽章

28番(F, 大学生, Vn) ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲 イ短調 第1楽章

29番(M, 大学4年, Vn) ブロッホ:ニーグン

37番(M, 大学4年, Vc) エルガー:チェロ協奏曲 ホ短調 第4楽章

39番(F, 大学院修士課程2年, マンドリン) カラーチェ:マンドリン協奏曲第1番 アンダンテとポロネーズ

 

がんばりに期待で賞(もちろんこれもないが)

19番(M, 大学1年, Vc) ハイドン:チェロ協奏曲第2番 第1楽章

20番(F, 大学1年, Vn) ヴィエニャフスキ:「ファウスト」による華麗なる幻想曲 Op.20

27番(F, 大学4年, Vn) チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 第1楽章

32番(M, 大学卒後, Vn) シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 第1楽章

33番(M, 大学卒後, Va) シューマン:おとぎの絵本

40番(M, 大学院修了, 馬頭琴) モンティ:チャルダッシュ

 

以上、かなり勝手ではあるが、決めてみた。

そして実際には、下記のような結果であった。

 

【最優秀賞】

24番 池田 聖香(東京藝術大学2年, 沖縄県, Vn) バルトーク:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第1楽章

 

【優秀賞】

31番 江川 菜緒(京都市立芸術大学大学院1年, 和歌山県, Vn) イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第4番 ホ短調 第1楽章

21番 栗林 衣李(東京藝術大学1年, 長野県, Vn) イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番 ニ短調 「バラード」

 

【奨励賞】

25番 高麗 みなみ(京都市立芸術大学3年, 大阪府, Vn) プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番 ニ長調 第1楽章

20番 木村 瑠菜(東京藝術大学1年, 広島県, Vn) ヴィエニャフスキ:「ファウスト」による華麗なる幻想曲 Op.20

30番 苅谷 なつみ(愛知県立芸術大学大学院1年, 愛知県, Vn) ミルシテイン:無伴奏ヴァイオリン「パガニーニアーナ」

 

まぁ、概ね納得できる結果だった。

A部門(小学生)やB部門(中・高校生)を含めた結果は、下記を参照されたい。

http://musicsatoh.com/blog2/wp-content/uploads/2017/01/第22回弦楽器入賞者-1.pdf

 

今回は、ずば抜けて感心する人はいなかったものの、かなりハイレベルな人も何人かいて、また曲目もバラエティに富んでいて、聴いていてとても楽しむことができた。

 

 


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