神尾真由子 ヴァイオリン・リサイタル
【日時】
2016年11月3日(木・祝) 開演 14:00 (開場 13:15)
【会場】
兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
【出演】
ヴァイオリン:神尾真由子
ピアノ:ミロスラフ・クルティシェフ
【プログラム】
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第1番
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ 第3番
ショスタコーヴィチ:24の前奏曲 op.34より 「No.10,15,16,24」
チャイコフスキー:レンスキーのアリア「青春は遠く過ぎ去り」(歌劇「エフゲニー・オネーギン」より)
チャイコフスキー:メロディ op.42-3 (なつかしい土地の思い出、第3曲)
プロコフィエフ:行進曲 op.33bis-3 (歌劇「3つのオレンジへの恋」より)
ショスタコーヴィチ:ロマンス op.97a-8(映画音楽「馬あぶ」より)
ハチャトゥリアン:剣の舞(バレエ「ガイーヌ」より)
ラフマニノフ:ヴォカリーズ op.34-14
バッジーニ:妖精の踊り op.25
●アンコール曲
フォーレ:夢のあとに(A.バッハマン編)
リムスキー=コルサコフ:熊蜂は飛ぶ
グルック:メロディ(クライスラー編)
神尾真由子の演奏は、今年の6月にもメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を聴いた。
そのときと同様、今回もやや細身の音で、ふくよかというよりはしゅっとした感じの美しい音色だった。
用事のため前半のベートーヴェン、ブラームスが聴けなかったのは残念だったが、後半の小品プログラムも十分に楽しめた。
むしろ、かっちりとしたソナタよりも、こういった小品のほうが彼女の本領に合っているかもしれないと感じた。
彼女の演奏には、何というか、「勢い」があるからだ。
バッツィーニの「妖精の踊り」や、リムスキー=コルサコフの「熊蜂は飛ぶ」など、華やかでさすがである。
ただ、その分、シンプルなメロディを奏する箇所などでは、その歌い口が不自然とまではいかないまでも、少しぎこちないような気がして、心からしっくり感動はできなかった。
チャイコフスキーの「メロディ」や、グルックの「精霊の踊り」など、心が震えるほど美しい旋律のはずなのだが…五嶋みどりの小品集のCDを聴きすぎているためだろうか。
音程も、五嶋みどりまでのレベルは望まないまでも、やや不安定な箇所がいくつか気になってしまった。
欠点をあげつらう形になってしまったが、日本人ヴァイオリニストとしてトップレベルであることは疑いなく(そして、ヴァイオリンを弾く姿がすらっとしてとても美しくさまになっている)、これからもぜひがんばってほしいと思う。
なお、伴奏は、神尾真由子がヴァイオリン部門で優勝したのと同じ、2007年の第13回チャイコフスキー音楽コンクールのピアノ部門で最高位(優勝なしの第2位)となった、ミロスラフ・クルティシェフである。
彼は、神尾真由子の伴侶でもある。
今回のコンサートでは小品の伴奏しか聴けなかったということもあり、彼の実力はあまりよく分からなかった。
少なくとも、例えば一聴しただけでソノリティへの強いこだわりが伝わってくるルカ・ドゥバルグのような、すぐに分かるほどの強烈な個性は感じなかった。
今後また彼の演奏を聴く機会を持てることを願う。