大阪フィルハーモニー交響楽団 ソワレ 角田鋼亮 小林愛実 ショパン ピアノ協奏曲第1番 ほか | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

大阪フィル×ザ・シンフォニーホール ソワレ・シンフォニー Vol.8

 

【日時】

2016年10月21日(金) 19:30 開演

 

【会場】
ザ・シンフォニーホール(大阪)

 

【演奏】

[指揮]角田鋼亮
[ピアノ]小林愛実
[管弦楽]大阪フィルハーモニー交響楽団

 

【プログラム】

ショパン:ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 op.11
ベートーヴェン:交響曲第5番 ハ短調 「運命」 op.67


※アンコール

ショパン:ノクターン第20番 嬰ハ短調 (遺作)

シューベルト:「ロザムンデ」より間奏曲第3番

 

 

 

 

 

小林愛実は、今年の4月にコンサートでモーツァルトの変奏曲とショパンのソナタ第2番を聴いて以来、注目しているピアニスト。

あのときは、本当に美しい音だった。

今回は、かのショパン・コンクール本選で弾いたショパンの協奏曲ということで、期待して聴いた。

演奏は、期待通りのものだった。

この曲は、アルゲリッチのように力感に溢れたドラマティックな演奏をするのが王道かと思う。

今年の1月にチョ・ソンジンの実演でこの曲を聴いたが、アルゲリッチのような情熱的な解釈ではないものの、余裕のある、力強く存在感のある音であった。

小林愛実は、そのような力感にはやや欠ける。

ピアノ・パートはたたきつけるような和音で始まるのだが、彼女が弾くともっと奥ゆかしい、控えめな和音となる。

しかし、その表現は突き詰められており、隙がない。

上記2015年のショパン・コンクールで5位や6位だった人(彼らの演奏も今年の1月に聴いた)が、やや無為に弾いている感があったのに比べると、かなりの集中力であり、むしろ表現としての成熟度は上だと思う。

その分、テンポの揺らし方などにやや癖があり、気になる人は気になるかもしれない(確か、ピアノ評論家の焦元溥が、「様式感が皆無」と酷評していたように記憶している)。

しかし、この表現力はお嬢様芸などではなく、本物だと思う。

そして、例えば第1楽章第2主題や、第2楽章のような、ショパンならではの美しいメロディーを奏するときの、あまりにも美しい音!

爽やかというよりは耽美的な表現であり、ショパンの不健康な、ネガティブなロマン性がよく表れた演奏である。

私は、本来はロマンの中にも古典性を残した、爽やかなショパン演奏を好むことが多いのだが(彼はバッハやモーツァルトを敬愛していた)、このような美しい表現をされてしまうと、まるで麻薬のように魅了されてしまう。

まだ20歳を超えてそれほどは経っていないだろうに、すごいものである。

それに加えて、第3楽章のような、テクニック的に困難な曲においても、申し分ない出来である。

今後も、彼女のコンサートにはできるだけ行くようにしたい。

 

なお、指揮者の角田鋼亮は、これが大フィルの公式演奏会デビューとのことである。

メイン・プロの「運命」は、若々しい直線的な演奏で、力感は十分であるものの、どこか「凝った表現」に欠けるような印象を持った。