京都市交響楽団 オーケストラ・ディスカバリー2016 第2回 ティンパニ編 下野竜也 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

京都市交響楽団

オーケストラ・ディスカバリー2016 「オーケストラ・ミステリー」

第2回「楽器の秘密」~第2の指揮者ティンパニ編~
 
【日時】

2016年8月28日(日) 2:00pm 開演

 

【会場】

京都コンサートホール 大ホール

 
【出演】

下野 竜也(常任客演指揮者)
清水 和音(ピアノ)
中山 航介(首席打楽器奏者)
ロザン(ナビゲーター)

京都市交響楽団(管弦楽)

 
【曲目】

グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲
ヘンデル:「王宮の花火の音楽」序曲から
ハイドン:交響曲第103番変ホ長調「太鼓連打」第1楽章から
ベートーヴェン:交響曲第9番ニ短調「合唱付」第2楽章から
ロッシーニ:歌劇「ウィリアム・テル」序曲
グリーグ:ピアノ協奏曲イ短調から第1楽章
ホルスト:組曲「惑星」から「火星」「木星」
 

●アンコール曲

J. シュトラウス2世:ポルカ「雷鳴と電光」

 

 

 

 

 

京都市交響楽団による、子供向けのコンサートである。

ロザンおよび下野竜也の司会のもと、オーケストラ曲におけるティンパニの役割がクローズアップされる(首席打楽器奏者の中山氏による演奏が主)。

子供たちやお父さん・お母さんたち混じって、私が出かけていったのは、下野竜也の指揮が聴けるからだ(初めての機会)。


演奏は、子供向けの演奏会と思えない完成度だった。

冒頭の「ルスランとリュドミラ」序曲からして、下野竜也の指揮のもと、京響は普段以上にひきしまった、活気のある演奏を繰り広げる。

それでいて、何ともつややかな音色なのである。

「王宮の花火の音楽」や「太鼓連打」では、バロック・ティンパニの硬い音が何とも心地良い。

第九は、ごく短い抜粋だった。

「ウィリアム・テル」序曲も期待通りの活気で、例えば先日のルスティオーニ&PACによるロッシーニの序曲に聴かれたような、地中海風のからっとした活気ともまた異なり、もう少し重量感のある印象なのだが、これはこれで「ロッシーニの活気」がちゃんと感じられた。

グリーグのピアノ協奏曲より第1楽章は、清水和音をソリストに迎えての演奏だが、彼のピアノは、まぁまずまずといった印象だった。

もう少し、深々とした音色だとか、細部のこだわりの表現だとか、何らかの個性が強く出ればより面白かったかもしれない。

そして、ホルスト「惑星」より「火星」「木星」。

これら超弩級の曲を、実演で聴くのは初めてである。

レヴァイン&シカゴ響による有名な録音ほどの完成度は、なかったかもしれない。

しかし、かなり高いレベルでの演奏を聴くことができた。

やっぱり、このような大編成の曲は生演奏で聴くと迫力が全然違う、ということを感じた。

全オーケストラによる強奏、特に金管群の咆哮がホール中に鳴り響くさまは、ものすごいものがある。

そして下野竜也は、迫力を出しながらも全体のバランスをしっかりとまとめてくる。

やはり活気に溢れつつも、全体的に比較的端正な表現だが、ときに濃い表現もみられ、「火星」の終わりや「木星」の途中の部分など、要所でテンポを大きく落とし、「タメ」を作るということもやっている。

そして、「木星」のあの有名なメロディ。

これを奏する弦楽器群の音色はとても美しく表情豊かで、「あれ京響の弦はこんなにきれいだったかな」と思わせるほど。

さすがは、下野竜也の手腕である。

アンコールの「雷鳴と電光」でも、ティンパニによるスリリングな連打をはじめ、これまた活気に満ちた演奏が聴かれ、かつ騒々しくはならず、すっきりと引き締まった響きにまとめられ充実した印象であった。

 

子供向けの演奏会とは思えない出来で、子供の頃からこういったハイレベルの演奏を聴くのはとても良いことだと感じた。