大阪フィルハーモニー交響楽団 第498回定期演奏会 ウルバンスキ ルトスワフスキ 協奏曲 ほか | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

大阪フィルハーモニー交響楽団 第498回定期演奏会


2016年5月21日(土)15:00開演

会場:フェスティバルホール


指揮:クシシュトフ・ウルバンスキ
独奏:アンナ・ヴィニツカヤ(ピアノ)


曲目:
チャイコフスキー/幻想序曲「ロメオとジュリエット」
ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品18
ルトスワフスキ/管弦楽のための協奏曲


アンコール:チャイコフスキー 「四季」 より 4月 松雪草

※オーケストラのアンコールはなし






大フィルの定期。

ウルバンスキは、1982年生まれらしいから、だいたい34歳くらい。若い!

スラッとしていて、指揮台に上るととてもかっこいい(ただ、終演後に間近で見ると、けっこういい体つきで、これはこれでかっこよかった)。

指揮姿も、先日のデュメイとは違い(失礼!)、とてもスマートである。

最初のチャイコフスキーからして完成度が高く、突飛なテンポの変化もなく、スムーズでよくまとまっていた。

メインプロのルトスワフスキも、あまり慣れない曲だがよくまとまっているように思えたし、面白く聴けた。

おそらく、才能ある人なのだと思う。

しかし、「よくまとまった」音楽を作る指揮者は、おそらく現在それなりに少なくないだろう。

これは!というような個性は、今回のコンサートでは分からなかった。


そして、ヴィニツカヤ。

2007年のエリザベート王妃国際音楽コンクールのピアノ部門で優勝した実力者である。

彼女のプロコフィエフのピアノ協奏曲第2番、あとショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1, 2番、これらのCDは同曲異演の中でも最高の名演と思う。

彼女の、べとつかないあっさりしたスタイルで、かつ情感にも欠けない演奏は、これらの曲にとてもよく合う。

そして、今回のコンサートでは、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番。

ここでも彼女のスタイルは健在で、第1楽章冒頭のサクサクしたテンポはまさにラフマニノフ自身の演奏と同様。

そのため、序奏から第1主題へも特にテンポを変えることなく流れ込むことが可能となっており、好感が持てる。

ここの部分で、序奏がいやにもったいつけたような遅いテンポなのに、第1主題ではかなりの快速テンポになったりすると、いかにも俗っぽくて私として幻滅してしまう。

その後も全楽章を通じてサクサク進むが、決して無味乾燥ではなく音楽的であり、音色も美しい。

ただ、もし欲を言うならば、この曲ではロシアの広大で厳しい大地を思わせるような、スケールの大きな演奏、深々とした透徹した音色が本来は好きである。

ラフマニノフの自作自演、リヒテルやルガンスキーのCDでは、それが感じられるのである。

そうはいっても、今回の演奏からも十分な感銘を受けたことには間違いない。

これまで聴いた同曲の生演奏(金子三勇士、イリーナ・メジューエワ、エピファニオ・コミスというイタリア人ピアニスト)の中では一番よかった。


ところで、大フィル。

なんだかんだいっても、関西のオーケストラではトップクラスにうまいのではないか。

特に、弦の美しさ。

ラフマニノフの第2楽章、この甘美な主要主題は、再現するとき弱音器つきのヴァイオリンで歌われるのだが、ここのとろけるような美しさといったら!

あまりにも有名な、それこそ何度も何度も聴いたメロディーだが、こういった楽団の生演奏で聴くとこんなにも美しいのか、と思い知らされた。

なお、ハープに客演で平野花子が入っていたのはうれしい驚きであった。

チャイコフスキーでのハープ、ちょっとうまいなと思ったら、こういうことだったのか(ハープは2人いるので、もちろんもう一人の方もうまいということなのだろうが)。


ただ、フェスティバルホール。

このホールに来るのは初めてか、あるいはとても久しぶりなのだが、これほどの大人数の楽団による演奏であっても、やはり少し広すぎる印象を持った。

今回、1階20列52番と、右の端っこだったこともあるかもしれないが、何となく音が遠いような感じがした。

私は、オーケストラであれば、ザ・シンフォニーホールくらいの広さが好きである。