アトラスは頭を抱えていた。この頃は夜寝付けない。なんどもうなされるのだ。こんな時セネカならなんと助言してくれるだろう。アトラスは、自問自答した。
「私は本当におろかだ。親ばかだ。セネカ、私はヨシュアのことが心配でたまらない。目の見えないヨシュアの将来を思うと胸が張り裂けそうだ。ヨシュアにはお前のような立派な後見人がいない。私もそなたもヨシュアが成人になるのを見届けることはできないだろう。ヨシュア、私はたとえ暴君と言われようとしても、この国を固めて、お前の目が見えるようにしてやる。この世のはてには、難病に効く媚薬があるという。この世を制圧してなんとしても探し出してみせる。セネカ、どうか許して欲しい。そなたの知恵、勇気にあこがれ邁進してきたが、私にはその器がないのだ。」
アトラスはその夜、一睡もできないまま夜明けを迎えていた。
「お休みのところ、大変失礼致します。ジャイロ様がご帰還されました。いよいよ開戦です。」アトラスはその知らせを聞いて、寝室から重い腰をあげた。ふいにパルトがアトラスの手を握りしめた。
「アトラス、本当によいのですか。あなたの本心がこの世の全てを欲しているのですか。まだ退き帰せます。私はこれ以上あなたが苦しむ姿を見たくないのです。ヨシュアは、たとえ障害があろうともそれは彼の個性です。障害を含めてヨシュアがヨシュアであることに代わりありません、そのままの彼を愛しています。目が見えない彼は誰よりも他人を思いやるよい子に成長したではありませんか。」
「パルト……。」
アトラスはパルトの手を握り返した。
「そなたもヨシュアを愛しておろう。それなら私の思いとて分かるであろう。そのためだ、そのためには進むより手立てはない。手立てはないのだ。」
アトラスは自分に言い聞かせるように、その言葉を何度も繰り返した。アトラスは出口の見えない暗闇を突き進んでいるかのようだ。重苦しい先の見えない道を孤独に押しつぶされそうになりながらも、ただただその先にあるはずの光を信じて突き進むのだった。