「目がさめたみたいね。動ける?すぐに解毒したから、命に別状はないでしょう。」
「貴様なぜ助けた。私がルピナスのジャイロと知っての事か。」
「ジャイロ?あなたが何ものかなんてどちらでもよいこと。私にとって大切なのは、あなたが倒れていたこと、あのままでは命が危険にさらされていて、それを救うすべを知っていたから実行したまで。それが動機よ。他にどんな理由が必要かしら。」
テレサは言葉を続けた。
「しいて言えば、私と同じにおいがしたの。あなたは人を求めていながらそれを素直に出せなくて、いつも孤独。そんな物悲しい眼をしていた。まあ私の勝手な思い込みだろうけど。もう半日もすれば、自由に動けるわ。」
丸二日寝込んでしまったが、彼はかつてないほどの穏やかに時間が過ぎていくのを感じていた。家の外では、子供達の笑い声が聞こえてくる。その中心にはテレサがいるようだ。突然ドアが開いた。
「ジャイロ、あなた少しはよくなったでしょ。水を汲んできて。ここではみんな何かしら仕事をしている。ほらあの小さな子だって、一生懸命ブドウの皮をむいているでしょ。今日のデザートになるの。」
ジャイロはうながされて家の外に出た。
「わーい、わーい、新しいお兄ちゃんだ。僕案内するよ。」
無邪気な笑顔に囲まれて、井戸にむかった。つかの間の休息。アミューズタウンを出てからルピナスで軍の最高指導者となるまで、彼は猛烈に走りつづけていた。立ち止まることなく、ただ力を追い求めていた。武力以外のものに興味を持った事はなかった。井戸があるのはとても見晴しのよい場所だった。遠くに見える山々、海の水面が乱反射してきらきらと光っていた。今日はそよ風が心地よい。エアーロは今ごろ春を迎えている。父上は風が穏やかな日にはカイトを作ってくれて、いっしょに遊んでくれた。彼はそばにあった竹を使って、竹とんぼを作った。子供達は空高く舞うそのとんぼを夢中で追いかけていた。まだ傷が痛むが生きている。彼はそのことに心から感謝していた。竹やぶがささやいた。