「おじ上、これからはそのような悠長なことは言っておられません。わが国の豊富な資源を各国が狙っております。今こそ、それらに対抗し得る力が必要なのです。」
「ジャイロ、全ての国と平和条約が結ばれた今、この世のどこにそのような国があるのか。そなたが言うのは具体的な根拠があってのことか。妄想に迷い、自らが心に巣くう幻に怖れ、己自身が侵略者となるつもりか。そなたは何を求める。その力を手に入れたその先には何があるのだ。」
ジャイロは押し黙ったままで、セネカは諭すように話し続けた。
「ジャイロ、この世はこの花々のように美しいものにあふれているのだ。この国もこの庭のように互いの個性を輝かせ一つの形となり見るものに感動を与えている。ジャイロ、そなたの父上も私も志は同じ。自然と人々が共存し助け合っている、我がふるさとを守りたい。ルピナス全国民がひとりひとりがかけがえのない命、その幸福な生活を守りたい。それは力では手に入れることの出来ない尊いものだ。そなたにもいずれ分かる日が来る。ともに精進しよう。」
そう言い残し、セネカは立ち去った。ジャイロは、頑なに話しに耳を傾ける事、その言葉を受け入れる事を拒んだ。ジャイロは自分の道が正しいと思っている。むしろ力を信じる以外の生き方を知らないといったほうがよいのもしれない。これ以上セネカと話しをしても、いつものように堂々めぐりになるだけ。ならば…。
「力の先には更なるパワーがあるのみ。私は私のやり方を貫く。」
ジャイロは、セネカと決別する決心をした。
「これから一切の情や甘えは捨て去る。私の世界が始まる、見ていろセネカ。」
ジャイロはゆっくりと瞳をあけた。今日は隠密行動の為、数人の部下を連れているだけで、黒装束のものたちも極秘任務を遂行中でここにはいない。彼はこれから起こるであろう新しい日々に高揚していた。もうずく彼の念願が叶う。父がなし得なかった世界統一も夢ではない。その足がかりがいまこの地で着々と積み上げられているのだ。その高揚感が彼を油断させてしまっていた。その時、周りを囲まれていることも、全く気配すら感じていなかった。気がついたときには、地面にたたきつけられた後だった。彼は、港からずっと盗賊につけられていたこと、脚に毒矢が刺さるまでまったく気づいていなかった。ジャイロは気をしばし失っていた。その間に、金目のものはすべて奪われてしまった。次に目覚めたとき、彼はなぜか懐かしさで胸がいっぱいになった。母親サリーのぬくもりを感じる。朦朧とする意識の中で、献身的に氷枕を替えたり、汗をふいてくれる人影を見ていた。ここはとても温かい。丸1日彼は、床にふせっていた。